ESRI通信 第98号

平成28年10月20日
内閣府経済社会総合研究所 発行
Cabinet Office, Government of Japan
Economic and Social Research Institute

【グローバル化と日本の将来】

21世紀に入り、グローバル化の流れは一層加速している。世界各国で二国間のFTAやEPAといった協定の締結は飛躍的に増加し、日本国内においても、日常的に外国人と接する機会が爆発的に増えている。日本は2013年になってTPP交渉に参加、本年2月には参加国による署名式が行われた。今後、批准手続きが円滑に進み実施段階に移行すれば、参加国それぞれのマーケットへのアクセスが格段に容易になり、更なるグローバル化に拍車がかかる。

また、こうしたグローバル化の影響もあって、中国をはじめとする新興国などの存在感が一層の高まりを見せていることに加え、アジア地域やアフリカ地域の途上国の発展には目覚ましいものがある。先般、ケニアで、TICAD6(第6回アフリカ開発会議)が開催された。1993年以来5年毎に日本で開催されてきたTICADが初めてアフリカで開催された。その中で、一昔前は「暗黒大陸」と言われていたアフリカが、世界で最も成長の速い国々の大部分を擁する「ダイナミックな大陸」とまで言われるようになった。また、1950年代以降、日本が積極的に支援してきたマレーシアやタイなどの東南アジアの国々も着実に発展、とりわけマレーシアは足元では若干の停滞があるもののODA卒業移行国となり、2020年を目標に先進国入りを目指している。どちらも世界経済が大きく変化している象徴的な出来事と言って良い。

一方で、日本は、少子高齢化が進展する中、2007年からの総人口の減少も加わり、地域における疲弊が進み、非正規雇用の増大など、経済社会の様々な分野で問題を抱えるようになっている。また、「失われた20年」の間、一貫して、低い生産性などを反映して、主要先進国の中でも相対的に低い成長率を甘受せざるを得ない状況に追いやられている。

こうした中、今後とも人口が減少しそれに伴いマーケットが縮小していることが予想される中で、日本国内だけを見ていては限界がある。人的交流など様々な分野での交流を国際的に展開することを通じて、人的資源を蓄積し、イノベーションを加速させることで潜在的な成長力を高めていくことが求められる。と同時に、ダイナミックに変化する海外の需要を積極的に取り込んでいくことも重要だ。

日本の将来を考えるとき、グローバル化のメリットを最大限に活用して、世界経済のパワーを日本の経済成長に積極的に繋げていくという視点は、強調してもし過ぎることはない。

平成28年10月

  • 内閣府 経済社会総合研究所
    総括政策研究官 豊田欣吾

【研究紹介】

CGEモデルのデータと地球温暖化問題

  • 内閣府 経済社会総合研究所
    上席主任研究官 川崎 泰史

地球温暖化問題の分析ツールとして幅広く利用されている経済モデルに応用一般均衡モデル(CGEモデル)がある。ミクロ経済学の一般均衡理論では、各経済主体の最適化行動の結果として財・サービスや生産要素の需要と供給が導き出され、それぞれの市場で需給が一致するように価格が決定される。CGEモデルはこのような世界を現実のデータを用いて描写するもので、基準とする時点のデータが均衡状態にあると想定してモデルを構築する。政策変更前の初期の均衡状態と変更後の均衡状態を比較して、その差によって影響を明らかにする比較静学のアプローチをとるので、マクロ計量経済モデルのように時間と共に変化する新たな均衡状態までの移行過程を描写することは難しい。他方、十数期以上の時系列データを必要とする計量経済モデルと異なり、1時点のデータがあればいいので、データ整備が大変な多部門や多地域を扱う分析に向いている。

一般均衡ということは、産業連関表の行和と列和が一致しているように、基準とするデータは全ての部門について需給が均衡し、所得収支がバランスしている必要がある。グローバルなCGEモデルとして有名なGTAP(Global Trade Analysis Project)1は、各国の産業連関表と貿易マトリクスを整合的に結び付けたデータを基準データとしている。温室効果ガスの主要排出源は化石燃料の燃焼、すなわち、火力発電用の石炭・天然ガスや輸送機械用のガソリン等から、排出係数は燃料種により異なるが、産業連関データがあるとこのような点を明示的に扱える。こうしたニーズに応えて、2002年からGTAPの産業連関部分に対応したエネルギー起源CO2排出量データが提供されている。2008年からは森林吸収源等を扱えるよう土地利用サテライト勘定が、昨年リリースされたGTAP9では従来一つに統合されていた電力部門を、発電方式等により細分化した電力サテライト勘定が新たに作成されており、地球温暖化問題の重要性を反映してGTAPデータは日々進化している。

7月に公表したリサーチノートNo.26では、電力サテライト勘定を中心にGTAP9データベースの特徴を解説している。電力部門の細分化は、送電・配電部門と7つのベースロード電源、4つのピークロード電源、あわせて12部門に分割している。火力・水力は両電源に分かれる一方で、原子力・風力はベースロードに、太陽光はピークロードにだけ属している。日本に関するデータを検証してみると、IEA統計や総合資源エネルギー調査会のデータと概ね整合的な値になっている。このほか、リサーチノートでは、日本のCO2排出量についてGTAPデータが公式データよりも1割強過少なこと、その原因としてGTAPでは石油製品と石炭製品が1部門にまとめられていることが影響しているとみられることを指摘している。

当然のことながら、モデルの定式化やデータはシミュレーション結果に影響する。今後とも、シミュレーションにこだわらず、モデルのプロパティやデータについても研究成果としてとりまとめていきたい。


1名称が示すようにGTAPはもともと貿易分析のために開発されており、TPPの効果分析では我が国をはじめ各国で使用されている。(内閣官房TPP政府対策本部「TPP協定の経済効果分析」2015年12月、米国国際貿易委員会「TPP協定:米国経済及び産業への影響」2016年5月)


【経済社会総合研究所からのお知らせ】

  • 消費者マインドアンケート(試行)の10月分の実施(平成28年10月)

    内閣府経済社会総合研究所景気統計部では、消費者の皆さまの「暮らし向き」や「物価の見通し」について、「だれでも」「自由に」回答できるアンケート調査(試行)を行っております。質問の数も少なく、ごく簡単なものですので、ぜひ毎月ご協力ください。

    (URL:http://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/shouhi/open_chosa/open_chosa.html


【最新の研究発表】

<報告書の掲載>


【最新の統計】

<SNA統計>

<景気動向指数>平成28年8月速報(平成28年10月7日)

8月のCI(速報値・平成22(2010)年=100)は、先行指数:101.2、一致指数:112.0、遅行指数:113.4となった。

  • 先行指数は、前月と比較して1.2ポイント上昇し、2か月ぶりの上昇となった。3か月後方移動平均は0.50ポイント上昇し、2か月ぶりの上昇となった。7か月後方移動平均は0.13ポイント上昇し、13か月ぶりの上昇となった。
  • 一致指数は、前月と比較して0.1ポイント下降し、3か月ぶりの下降となった。3か月後方移動平均は0.56ポイント上昇し、2か月ぶりの上昇となった。7か月後方移動平均は0.04ポイント下降し、2か月ぶりの下降となった。
  • 遅行指数は、前月と比較して0.3ポイント上昇し、2か月ぶりの上昇となった。3か月後方移動平均は0.23ポイント上昇し、4か月ぶりの上昇となった。7か月後方移動平均は0.11ポイント下降し、4か月連続の下降となった。

一致指数の基調判断

  • 景気動向指数(CI一致指数)は、足踏みを示している。

<機械受注統計調査報告>平成28年8月実績(平成28年10月12日)

  • 機械受注総額の動向をみると、2016(平成28)年7月前月比2.8%減の後、8月は同4.0%減の2兆619億円となった。
  • 民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の動向をみると、2016(平成28)年7月前月比4.9%増の後、8月は同2.2%減の8,725億円となった。このうち、製造業は同4.0%減の3,531億円、非製造業(除く船舶・電力)は同1.9%減の5,149億円となった。

<消費動向調査>平成28年9月調査(平成28年10月4日)

  • 平成28年9月の消費者態度指数(二人以上の世帯、季節調整値)は、8月の42.0から1.0ポイント上昇して43.0となり、2か月連続で前月を上回った。消費者態度指数を構成する4項目全てが前月から上昇した。
  • 「日頃よく購入する品物」の1年後の価格の予想(二人以上の世帯)は、「低下する」が5.7%(前月差 -0.3%)、「変わらない」が16.9%(同 -3.7%)、「上昇する」が74.8%(同 +4.3%)となった。

【参考】<月例経済報告>平成28年9月(平成28年9月16日)

景気は、このところ弱さもみられるが、緩やかな回復基調が続いている。

    • 個人消費は、総じてみれば底堅い動きとなっている。
    • 設備投資は、持ち直しの動きに足踏みがみられる。
    • 輸出は、おおむね横ばいとなっている。
    • 生産は、横ばいとなっている。
    • 企業収益は、高い水準にあるものの、改善に足踏みがみられる。企業の業況判断は、慎重さがみられる。
    • 雇用情勢は、改善している。
    • 消費者物価は、横ばいとなっている。

先行きについては、雇用・所得環境の改善が続くなかで、各種政策の効果もあって、緩やかな回復に向かうことが期待される。ただし、海外経済で弱さがみられており、中国を始めとするアジア新興国や資源国等の景気が下振れし、我が国の景気が下押しされるリスクがある。また、英国のEU離脱問題など、海外経済の不確実性の高まりや金融資本市場の変動の影響に留意する必要がある。

<統計調査公表予定一覧>

<統計調査公表予定一覧>
景気動向指数
速報
景気動向指数
改訂状況
機械受注統計
調査
消費動向調査
(全国・月次)
法人企業景気
予測調査(四半期)
平成28年 11月8日
(9月分)
平成28年 10月24日
(8月分)
平成28年 11月10日
(9月分)
平成28年 11月2日
(10月分)
平成28年 12月9日
(10-12月期)
12月7日
(10月分)
11月24日
(9月分)
12月12日
(10月分)
12月5日
(11月分)
平成29年 3月10日
(1-3月期)
平成29年 1月11日
(11月分)
12月26日
(10月分)
平成29年 1月16日
(11月分)
平成29年 1月10日
(12月分)
6月13日
(4-6月期)

※ 消費動向調査の上に掲載した調査以降の公表予定については、こちらのページに掲載しています。

「企業行動に関するアンケート調査」は例年2月下旬~3月上旬に公表

国民経済計算(GDP統計)公表予定はこちらから


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