ESRI通信 第103号

平成29年3月17日
内閣府経済社会総合研究所 発行
Cabinet Office, Government of Japan
Economic and Social Research Institute

【実証的な証拠に基づいた政策策定を支える『経済分析』を目指して】

近年、政策の企画立案にあたってデータや分析に基づく客観的な評価を求める「エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング(EBPM)」の重要性が強調されるようになっている。

これまでも内閣府や旧経済企画庁においては経済政策の企画立案に資するデータや分析を提供してきたが、ここにきて改めてその重要性が強調されるようになったのは、景気や成長などマクロ経済の分野だけでなく、様々な制度を設計する場面においてもデータや分析が重視されるようになってきたためである。経済社会は複雑化しており、制度がもたらす影響も副作用を伴ったり個人によって異なったりするため、簡単には評価できなくなってきている。そこで、矛盾するインプリケーションを整理して提示する分析の重要性が改めて認識されるようになったのである。一方、それを受け止める経済分析の側でゲーム理論やパネル分析などによって分析ニーズに応える精緻な議論ができるようになったことも、データや分析に基づく評価が重視されるようになってきた背景にあると考えられる。

内閣府経済社会総合研究所(ESRI)で刊行している『経済分析』は、以前はESRIにおける研究成果を中心に掲載するものであったが、2005年から投稿論文を中心に掲載する形に改めた。ただ、最近では上記のような分析ニーズに応える学術誌になるよう、「国際共同研究」の成果を掲載した特別編集号を刊行したり、ねらいを明確化するため、投稿規程に「特に、現在あるいは将来の政策課題に対する提言や示唆を与え、または政策企画に資する分析・研究の投稿を歓迎する。」という文言を加えたりしたところである。また、キャリア形成のために英語で論文を発表するインセンティヴをもっている書き手の若手研究者と日本語でのインプットが中心になりがちな読み手の政策形成の実務家のニーズをマッチさせるため、和文学術誌の性格は残しつつ論文の英訳を支援する試みを開始した。

さらに、政策課題を研究者に伝えて政策の企画立案・評価に資する研究を喚起するため、特定のテーマを提示して論文を募集する試みを開始した。今回募集することにしたテーマは以下の9つである。

  • 消費が活性化しにくい要因に関する実証分析
  • 投資が活性化しにくい要因に関する実証分析
  • 賃金が伸び悩む要因に関する実証分析
  • 世界金融危機対応の評価
  • 産業立地や人口移動に関する実証分析
  • 成長産業の要因分析
  • スポーツ施策の経済効果
  • 人工知能と雇用に関する分析
  • 人的資本蓄積に関する分析

幅広い分野にわたっているが、どれも今後の経済政策運営に関わる重要なテーマである。多くの研究者の皆様の投稿をお待ちしている。

詳細については下記のURLをご覧いただきたい。

http://www.esri.go.jp/jp/archive/bun/bun.html

平成29年3月

  • 内閣府 経済社会総合研究所
    総括政策研究官 坪内 浩

【研究紹介】

南海トラフ巨大地震の被害想定地域における社会移動について

  • 内閣府 経済社会総合研究所
    研究官 田中陽三

内閣府経済社会総合研究所の防災ユニットでは、巨大災害が発生した場合の経済への影響等、防災・減災政策のあり方に関する様々な研究を行っている。ここでは南海トラフ巨大地震の被害想定地域における社会移動に関する研究の概要について紹介したい。これは、南海トラフ巨大地震の被害想定(特に津波高)の公表1が社会移動(転入や転出を含む)に及ぼす影響について、差分の差分(Difference-in-Differences,DID)法を用いて実証分析を行ったものである。

DID法とは、ある介入が成果変数に及ぼす因果効果を検証するために、介入の有無のみが異なると考えられる2グループ(処置群と統制群)に着目し、介入の前後での成果変数の変動を比較する統計手法である。ここでは2008年から2015年までの8年間の市区町村別パネルデータを作成し、被説明変数として、社会増減率、転入率、転出率を用い、説明変数として、2003年と2012年の2時点の被害想定における津波高の引き上げ幅と震度6強以上への引き上げダミー、地震動の超過確率、人口一人当たり課税対象所得額、人口密度、面積当たり空港・駅・道路総延長・製造業事業所数を用いて分析を行った。

結果として、公表された津波高は、社会増減に対して統計的に有意に負の影響を与え、転入の減少と転出の増加の双方を生じさせていることが明らかとなった。また津波高の引き上げ幅と被害想定公表後の各年ダミーの交差項を用いて上記の時間効果を見ると、転出に対する影響は公表直後に観測できるのみだが、転入に対しては公表後の各年で継続して負の影響が出ていることが明らかとなった。さらに津波高の引き上げ幅の水準ごとにダミー変数を導入して推計を行うと、転入、転出ともに引き上げ幅が大きくなるにつれて影響が大きくなる傾向がみられた。

以上のことから、被害想定の公表により、期待されている避難訓練や耐震補強といった防災行動を超え、津波高の引き上げ幅が高い地域への転入減やそうした地域からの転出増という形での人口減少を通じて、人々がリスク回避を図っている可能性が示唆された。

上記の分析に加えて人口集中地区(DID地区)への医療機関、教育機関、消防施設の集約度を考慮した推計を行った結果、集約度の高い地域ほど転入に対する津波高の負の影響が弱まることが明らかとなった。

ただし、上記の分析は市区町村内の社会移動や転居前後の災害リスク等を考慮しておらず、結果を解釈する上で数多くの課題が残されている。災害リスクと地域経済等の関係をより詳細に把握するためには、これらの課題も含めさらなる検討が必要であろう。


1「南海トラフの巨大地震による津波高・浸水域等(第二次報告)及び被害想定(第一次報告)について」(内閣府)
http://www.bousai.go.jp/jishin/nankai/nankaitrough_info.htmlより。


【経済社会総合研究所からのお知らせ】

  • 消費者マインドアンケート(試行)の3月分の実施(平成29年2月)

    内閣府経済社会総合研究所景気統計部では、消費者の皆さまの「暮らし向き」や「物価の見通し」について、「だれでも」「自由に」回答できるアンケート調査(試行)を行っております。当面毎月20日を締切として調査を行っています。初めてご回答される方も、2回目以上のご回答の方も大歓迎です。質問の数も少なく、ごく簡単なものですので、ぜひ毎月(一回)ご協力ください。

    (URL:http://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/shouhi/open_chosa/open_chosa.html


【最新の研究発表】

<報告書の掲載>


【最新の統計】

<SNA統計>

<景気動向指数>平成29年1月速報(平成29年3月8日)

1月のCI(速報値・平成 22(2010)年=100)は、先行指数:105.5、一致指数:114.9、遅行指数:115.7となった。

  • 先行指数は、前月と比較して0.6ポイント上昇し、4か月連続の上昇となった。3か月後方移動平均は1.47ポイント上昇し、4か月連続の上昇となった。7か月後方移動平均は0.70ポイント上昇し、6か月連続の上昇となった。
  • 一致指数は、前月と比較して0.7ポイント下降し、2か月連続の下降となった。3か月後方移動平均は0.30ポイント上昇し、6か月連続の上昇となった。7か月後方移動平均は0.43ポイント上昇し、5か月連続の上昇となった。
  • 遅行指数は、前月と比較して0.6ポイント上昇し、3か月連続の上昇となった。3か月後方移動平均は0.63ポイント上昇し、6か月連続の上昇となった。7か月後方移動平均は0.22ポイント上昇し、2か月連続の上昇となった。

一致指数の基調判断

  • 景気動向指数(CI一致指数)は、改善を示している。

<機械受注統計調査報告>平成29年1月実績(平成29年3月13日)

  • 機械受注総額の動向をみると、2016(平成28)年12月前月比4.4%減の後、2017(平成29)年1月は同10.0%減の2兆2,369億円となった。
  • 民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の動向をみると、2016(平成28)年12月前月比2.1%増の後、2017(平成29)年1月は同3.2%減の8,379億円となった。このうち、製造業は同10.8%減の3,309億円、非製造業(除く船舶・電力)は同0.7%増の5,076億円となった。

<消費動向調査>平成29年2月調査(平成29年3月3日)

  • 平成29年2月の消費者態度指数(二人以上の世帯、季節調整値)は、1月の43.2から0.1ポイント低下して43.1となり、3か月ぶりの低下となった。消費者態度指数を構成する4項目のうち、「雇用環境」以外の3項目「暮らし向き」「収入の増え方」及び「耐久消費財の買い時判断」が前月から低下した。
  • 「日頃よく購入する品物」の1年後の価格の予想(二人以上の世帯)は、「低下する」が5.2%(前月差 +0.2%)、「変わらない」が17.6%(同 +1.1%)、「上昇する」が73.7%(同 -1.2%)となった。

<法人企業景気予測調査>平成29年1–3月期調査(平成29年3月10日)

「貴社の景況判断」BSIの平成29年1-3月期(現状判断)をみると、大企業(全産業)は1.3%ポイントで3期連続の「上昇」超、中堅企業(全産業)は▲0.1%ポイントで3期ぶりの「下降」超、中小企業(全産業)は▲11.3%ポイントで12期連続の「下降」超。なお、前回(10-12月期の現状判断:大企業3.0%ポイント、中堅企業1.0%ポイント、中小企業▲7.1%ポイント)と比較して、大企業は「上昇」超幅が縮小、中堅企業は「下降」超に転化、中小企業は「下降」超幅が拡大。

先行きについてみると、大企業は平成29年4-6月期「下降」超の後、7-9月期は「上昇」超に転化する見通し。中堅企業は4-6月期「下降」超の後、7-9月期は「上昇」超に転化する見通し。中小企業は4-6月期以降も「下降」超で推移する見通し。

「国内の景況判断」BSIの平成29年1-3月期(現状判断)をみると、大企業(全産業)は5.2%ポイントで、2期連続の「上昇」超、前回(10-12月期の現状判断:3.2%ポイント)と比較して、「上昇」超幅が拡大。

「従業員数判断」BSIの平成29年3月末(現状判断)をみると、大企業(全産業)は16.9%ポイントで23期連続の「不足気味」超で、前回(12月末の現状判断:15.3%ポイント)と比較して、「不足気味」超幅が拡大。

平成28年度の売上高(全規模・全産業)は前年度比1.1%の減収見込み、経常利益(全規模・全産業)は同2.9%の減益見込み、設備投資(ソフトウェア含む、土地除く:全規模・全産業)は同2.0%の増加見込み。

平成29年度の年度計画では、売上高は前年度比1.3%の増収見通し、経常利益は同0.8%の減益見通し、設備投資は同4.6%の減少見通し。

<企業行動に関するアンケート調査>平成28年度(平成29年2月28日)

東京、名古屋の証券取引所第一部及び第二部に上場する企業(以下「上場企業」という。回答率:45.2%)及び資本金1億円以上10億円未満の企業(注)(以下「中堅・中小企業」という。回答率:42.3%)に対し、本年1月にアンケート調査を実施したところ、以下の結果になった。

(注)中堅・中小企業は平成28年度より調査開始。

  • 【経済成長率見通し】
  • <上場企業>
    • 我が国の実質経済成長率見通しは、「次年度」(平成29年度)では1.0%、「今後3年間」(平成29~31年度平均)、「今後5年間」(平成29~33年度平均)はそれぞれ1.1%、1.0%となった。
    • 名目経済成長率見通しは、「次年度」では1.6%、「今後3年間」では1.7%、「今後5年間」では1.6%となった。
    • 「次年度」、「今後3年間」及び「今後5年間」の名目経済成長率見通しは、いずれも実質経済成長率見通しを4年連続で上回り、企業が物価上昇を見込んでいることが示唆される。
  • <中堅・中小企業>
    • 我が国の実質経済成長率見通しは、「次年度」では1.0%、「今後3年間」、「今後5年間」はいずれも1.0%となった。
    • 名目経済成長率見通しは、「次年度」、「今後3年間」、「今後5年間」のいずれも1.7%となった。
    • 「次年度」、「今後3年間」及び「今後5年間」の名目経済成長率見通しは、いずれも実質経済成長率見通しを上回った。
  • 【採算円レート】(輸出を行っている企業のみ調査)
  • <上場企業>
    • 現在の時点で採算のとれる円レートは、100.5円/ドルと、前年度調査(103.2円/ドル)から2.7円の円高の水準で、5年ぶりの円高方向となった。
    • 採算円レートは、調査直前月(平成28年12月)の円レートの116.0円/ドルと比べて15.5円の円高となった。
  • <中堅・中小企業>
    • 現在の時点で採算のとれる円レートは、105.6円/ドルとなった。
  • 【海外現地生産】(製造業のみ調査)
  • <上場企業>
    • 海外現地生産比率は、「平成27度実績」では21.9%と、前年度調査(21.6%)に比べて上昇した。「平成28年度実績見込み」では21.4%、「平成33年度見通し」では23.5%となる見通しとなった。
    • 「平成33年度見通し」において「平成28年度実績見込み」よりも海外現地生産比率が上昇する見通しの企業の割合は、前年度調査49.4%から今年度調査49.6%と増加した。
    • 海外に生産拠点を置く理由(主な理由+その他該当理由)では、「現地・進出先近隣国の需要が旺盛又は今後の拡大が見込まれる」、「現地の顧客ニーズに応じた対応が可能」などを回答する企業の割合が高い。前年度調査と比べると、「現地の顧客ニーズに応じた対応が可能」などの構成比が上昇した。
  • <中堅・中小企業>
    • 海外現地生産比率は、「平成27度実績」では4.0%となった。「平成28年度実績見込み」は4.0%、「平成33年度見通し」は4.4%となる見通しとなった。
    • 「平成33年度見通し」において「平成28年度実績見込み」よりも海外現地生産比率が上昇する見通しの企業の割合は、9.3%となった。
    • 海外に生産拠点を置く理由(主な理由+その他該当理由)では、「労働力コストが低い」、「現地・進出先近隣国の需要が旺盛又は今後の拡大が見込まれる」などを回答する企業の割合が高い。

【参考】<月例経済報告>平成29年2月(平成29年2月23日)

景気は、一部に改善の遅れもみられるが、緩やかな回復基調が続いている。

    • 個人消費は、持ち直しの動きが続いているものの、このところ足踏みがみられる。
    • 設備投資は、持ち直しの動きがみられる。
    • 輸出は、持ち直している。
    • 生産は、持ち直している。
    • 企業収益は、改善の動きがみられる。企業の業況判断は、緩やかに改善している。
    • 雇用情勢は、改善している。
    • 消費者物価は、横ばいとなっている。

先行きについては、雇用・所得環境の改善が続くなかで、各種政策の効果もあって、緩やかに回復していくことが期待される。ただし、海外経済の不確実性や金融資本市場の変動の影響に留意する必要がある。

<統計調査公表予定一覧>

<統計調査公表予定一覧>
景気動向指数
速報
景気動向指数
改訂状況
機械受注統計
調査
消費動向調査
(全国・月次)
法人企業景気
予測調査(四半期)
平成29年 3月8日
(1月分)
平成29年 2月23日
(12月分)
平成29年 3月13日
(1月分)
平成29年 3月3日
(2月分)
平成29年 3月10日
(1-3月期)
4月7日
(2月分)
3月24日
(1月分)
4月12日
(2月分)
4月6日
(3月分)
6月13日
(4-6月期)
5月10日
(3月分)
4月24日
(2月分)
5月17日
(3月分)
5月8日
(4月分)
9月13日
(7-9月期)
6月7日
(4月分)
5月下旬
(3月分)
6月12日
(4月分)
6月2日
(5月分)
7月7日
(5月分)
6月下旬
(4月分)
7月10日
(5月分)
7月3日
(6月分)
8月7日
(6月分)
7月下旬
(5月分)
8月10日
(6月分)
8月2日
(7月分)

※ 消費動向調査の上に掲載した調査以降の公表予定については、こちらのページに掲載しています。

「平成28年度企業行動に関するアンケート調査」は平成29年2月28日14:00に公表

国民経済計算(GDP統計)公表予定はこちらから


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