ESRI通信 第105号

平成29年5月22日
内閣府経済社会総合研究所 発行
Cabinet Office, Government of Japan
Economic and Social Research Institute

【経済分析・政策策定の基盤となる統計改革の推進】

本年1月に設置された統計改革推進会議の最終取りまとめが、5月19日に決定された。

2001年の中央省庁再編以降すなわち内閣府設置以降の大きな統計改革の度に、どういう因果のめぐり合わせか、私は統計担当の部署にいることが多い。

最初は、2004年末から翌年半ばの経済財政諮問会議の下で行われた経済社会統計整備委員会の担当室参事官である。その時は、経済財政運営政策統括官部局で、企画・経済対策担当参事官との併任で行った。この委員会報告が元になって、統計法の60年ぶりの改正が行われ、司令塔として統計委員会が内閣府に設置され、公的統計基本計画が閣議決定されるようになった。その次は、2012年初めから2014年半ばまで、官房総括審議官と研究所次長の時に統計委員会担当審議官を兼務し、委員長・委員人事や担当室長人事等に携わった。

そして今回である。今回の統計改革は、3つの特徴がある。第1にGDP統計を軸にした経済統計の改善である。各基礎統計から加工・推計されるGDP統計の精度向上を図る観点から、経済統計を体系的に整備しようということである。加えて、第1期公的統計基本計画以来の課題であった生産側GDPの推計において、全面的にSUT体系に移行することになった。GDP統計(SNA)を所管する国民経済計算部を持つ経済社会総合研究所の役割は重大である。

第2にEBPM推進体制の構築と併せて行う。経済財政諮問会議では、証拠に基づく政策立案(EBPM)方式により、歳出改革を中心に制度・政策効果分析を行っているが、これを全省庁の政策に広げる。そのためにも、分析の基礎となる行政記録情報も含めた統計等データの整備等が必要となる。

第3に統計改革の基盤としてのリソースの確保である。民間も含めて統計に対するニーズの高度化・多様化が進む一方で、国・地方の統計部門では、新たな課題に取り組む余裕がない状況になっていることが、今回の統計改革推進会議でも大きな議論になった。統計業務における効率化の徹底や報告者負担の軽減に努めることは当然であるが、民間の専門人材の活用や、大学等における統計人材の育成も含め、人的リソースのメリハリのある計画的確保に努めなければならない。

今回決定された統計改革は、今後3回のSNA基準改定を経て完結する、これから14年間、2030年を最終目標年次とする長期的な取り組みである。経済分析・政策策定の精度の飛躍的向上のため、関係者とともに一歩一歩進んでいきたい。

平成29年5月

  • 内閣府 経済社会総合研究所
    所長 前川 守

【研究紹介】

SUT体系への移行に向けた研究

  • 内閣府 経済社会総合研究所
    特別研究員 二村 秀彦

5月19日、統計改革推進会議において「最終取りまとめ」が決定された。今般の統計改革における目玉の1つは「産業連関表のSUT体系への移行」であるが、それはGDP推計にとってどのような意味があるのだろうか。

GDPとは生産面からみれば各産業の付加価値(生産額-原材料等の投入額)の総和であり、SUT(Supply Table 及びUse Tableの総称)がその推計基盤となる。現在は、“商品ごと”(複数商品を生産する事業所を各商品の生産ラインごとに捉えるようなイメージ)の生産額や投入額等から産業連関表を作成した後に、“産業ごと”にまとめたSUTを間接的に作成し、GDPを推計している。産業連関表のSUT体系への移行とは、商品ごとの推計を経由せずに産業ごとの生産額や投入額からSUTを直接的に推計するということである。

従来、生産活動を商品ごとに捉える方法がとられてきた背景には、製造業を中心に商品ごとの投入額等に関する各種統計が比較的整備されていたという事情があると考えられ、製造業のシェアが高かった時代には、こうした方法で精緻な推計が可能であった。しかし、現在ではサービス業のシェアが圧倒的に高くなっている。サービス業において、異なるサービスを組み合わせて提供する場合などは、サービスごとに投入する原材料を特定することは容易ではない。また、統計の調査環境は全般的に厳しさを増しており、商品ごとといった詳細なデータの提供を受けることが難しくなっている。このような環境変化の下で、企業側が報告しやすい事業所ベース等の情報を用いてSUTを直接的に推計することは、経済実態をより的確に把握する上で合理的な方法であり、国際的にも標準的となっている。

ただし、SUT体系への移行のメリットを十分に発現させるには、いくつか留意すべき点がある。1つには、産業や商品(生産物)に関する分類の問題がある。生産活動を産業ごとに捉えるSUTにおいては、同一産業に属する生産活動に用いられる技術の同質性が損なわれれば、当該産業の投入係数の不安定性が増すことになりかねない。これは、産業連関分析にとっても、GDP推計にとっても好ましいことではない。このため、生産技術の類似性に配慮した産業分類の整備が欠かせない。

また、商品(生産物)に関する分類については、近年経済に占める比重を増し、またダイナミックに変化するサービス業をはじめとして、その経済実態を的確に把握する観点から分類整備を進めなければならない。その際には、各生産物の中間消費や最終需要の推計精度を確保するため、機能・用途の類似性に着目した生産物分類の整備が必要である。

留意すべきもう1つの点は、バランシングの問題である。SUTとは、各種基礎統計から推計される各生産物の供給側情報と使用側情報のバランシングを通じて推計精度の向上を図る有効な手段であるが、自動的に最適なバランスが得られるわけではない。各基礎統計の確度や各産業・生産物の特性等を勘案しながら、生産物ごとにバランシング手法を検討・開発しなければ、推計精度の向上を図ることはできない。

本研究プロジェクトにおいては、こうした産業・生産物分類の整備やバランシング手法の開発をはじめとした、産業連関表のSUT体系への移行に伴うGDP推計に係る諸課題について、GDP推計の精度向上の観点から研究を進めていくこととしている。


【経済社会総合研究所からのお知らせ】

  • 消費者マインドアンケート(試行)の5月分の実施(平成29年4月)

    内閣府経済社会総合研究所景気統計部では、消費者の皆さまの「暮らし向き」や「物価の見通し」について、「だれでも」「自由に」回答できるアンケート調査(試行)を行っております。当面毎月20日を締切として調査を行っています。初めてご回答される方も、2回目以上のご回答の方も大歓迎です。質問の数も少なく、ごく簡単なものですので、ぜひ毎月(一回)ご協力ください。

    (URL:http://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/shouhi/open_chosa/open_chosa.html

  • 「GDP統計改善工程表」を掲載しました。(平成29年5月)


【最新の研究発表】

  • 世界経済のなかのインド:成長回帰分析からのアプローチ(佐藤隆広)を掲載しました。(平成29年4月)

    本研究は、過去半世紀にわたる約100カ国の経済成長の歴史的経験を踏まえたうえで、インドの経済成長を分析することを目的とする。インド経済の成長を他国と比較するために、本研究は成長回帰分析を利用している。本研究からは、以下の諸点が明らかになった。

    第1に、成長回帰分析の結果から絶対的収束仮説ではなく条件付き収束仮説が正しいことが判明した。これに対して、インドでは成長率と所得水準が同時に上昇しており、条件付き収束仮説を破る動きを見せている。

    第2に、出生時平均余命・投資率・経済開放度が経済成長を高めることが判明した。インドにおいても、これらは歴史的に上昇傾向にある。

    第3に、人的資本は経済成長に対して非線形の影響を与える。しかしながら、中学以降の教育年数が3年を超えるとそこから教育年数は成長にプラスの貢献をすることが明らかになった。インドでは、教育年数も成長も同時に上昇傾向にある。

    第4に、合計特殊出生率の上昇は成長に悪影響を与えることが分かった。インドでも、合計特殊出生率が減少するにつれて成長率も高まっている。

    第5に、政府消費比率の拡大は成長にマイナスの貢献をすることが判明した。これに対して、インドでは政府消費比率と成長が同時に上昇しており、成長回帰分析の結果と異なる動きが観察される。

    第6に、インフレと成長にはマイナスの関係が存在している。しかしながら、インドではインフレと成長の間に明確な関係が必ずしも観察されない。

    第7に、交易条件の改善は成長を高めることがわかった。インドでも同様の関係が観察される

    最後に、成長回帰分析から、民主主義と成長の間には複雑な非線形の関係があることが判明した。また、両者の関係は成長率の高低で異なる。インドの民主主義の度合いは過去半世紀の間でわずかに変動するだけであり、インドでは民主主義と成長の間に明確な関係は観察されない。

  • 日本の子どもの貧困分析(明坂弥香、伊藤由樹子、大竹文雄)を掲載しました。(平成29年4月)

    本研究は、日本の子どもの貧困について、世帯属性の特徴とその変化を明らかにするため、『就業構造基本調査』を用いた分析を行った。本研究では、貧困指標として「相対的貧困」と「絶対的貧困」の2種類を用いた。この2種類の貧困状態をもとに、どのような特性を持つ世帯が貧困状態にあるのか、また、どのような要因によって貧困率が変化しているのかを明らかにした。さらに、貧困リスクと子どもの高校就学の関係についても分析した。

    本研究の結果から、次の三点が明らかになった。第一に、子どもが貧困になっている確率が高い世帯の特徴は、1歳以下の小さな子どもがいる、世帯主が女性、世帯主の年齢が低い、世帯主の学歴が低い、子どもの数が多い、大人が一人の場合であった。第二に、1997年と2012年の間で貧困率の変化を要因分解すると、世帯属性の分布の変化は貧困率を引き下げる影響を与えた。一方、同一世帯属性での貧困確率の変化は貧困率を引き上げる影響を与えた。第三に、貧困リスクが高い子どもほど、高校就学率が低く、就業率が高い傾向にあった。ただし、高校生の年齢層における非就学・就業の割合は、1997年以降低下傾向にある。

<報告書の掲載>


【最新の統計】

<SNA統計>

<景気動向指数>平成29年3月速報(平成29年5月10日)

3月のCI(速報値・平成22(2010)年=100)は、先行指数:105.5、一致指数:114.6、遅行指数:117.7となった。

  • 先行指数は、前月と比較して0.8ポイント上昇し、2か月連続の上昇となった。3か月後方移動平均は0.20ポイント上昇し、6か月連続の上昇となった。7か月後方移動平均は0.71ポイント上昇し、8か月連続の上昇となった。
  • 一致指数は、前月と比較して0.6ポイント下降し、2か月ぶりの下降となった。3か月後方移動平均は横ばいとなった。7か月後方移動平均は0.42ポイント上昇し、8か月連続の上昇となった。
  • 遅行指数は、前月と比較して1.8ポイント上昇し、5か月連続の上昇となった。3か月後方移動平均は0.94ポイント上昇し、8か月連続の上昇となった。7か月後方移動平均は0.61ポイント上昇し、4か月連続の上昇となった。

一致指数の基調判断

  • 景気動向指数(CI一致指数)は、改善を示している。

<機械受注統計調査報告>平成29年3月実績および平成29年4~6月見通し(平成29年5月17日)

  • 機械受注総額の動向をみると、2017(平成29)年2月前月比1.3%減の後、3月は同1.3%増の2兆2,355億円となった。
  • 民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の動向をみると、2017(平成29)年2月前月比1.5%増の後、3月は同1.4%増の8,623億円となった。このうち、製造業は同0.6%増の3,529億円、非製造業(除く船舶・電力)は同3.9%減の4,964億円となった。
  • 1~3月をみると、受注総額は前期比7.9%減の6兆6,798億円となった。また、「船舶・電力を除く民需」は同1.4%減の2兆5,507億円、製造業は同4.2%減の1兆346億円、非製造業(除く船舶・電力)は同0.0%増の1兆5,206億円となった。
  • 2017(平成29)年4~6月見通しをみると、受注総額は前期比0.9%減の6兆6,168億円の見通しになっている。また、「船舶・電力を除く民需」は同5.9%減の2兆4,007億円、製造業は同1.1%減の1兆227億円、非製造業(除く船舶・電力)は同9.6%減の1兆3,743億円の見通しになっている。
  • 2016(平成28)年度実績をみると、受注総額は前年度比5.6%減の26兆7,957億円になっている。また、「船舶・電力を除く民需」は同0.5%増の10兆2,314億円、製造業は同4.6%減の4兆2,167億円、非製造業(除く船舶・電力)は同4.3%増の6兆373億円になっている。

<消費動向調査>平成29年4月調査(平成29年5月8日)

  • 平成29年4月の消費者態度指数(二人以上の世帯、季節調整値)は、3月の43.9から0.7ポイント低下して43.2となり、5か月ぶりに前月を下回った。消費者態度指数を構成する項目のうち、「雇用環境」以外の3項目「暮らし向き」「収入の増え方」及び「耐久消費財の買い時判断」が前月から低下した。
  • 「日頃よく購入する品物」の1年後の価格の予想(二人以上の世帯)は、「低下する」が3.3%(前月差 -0.9%)、「変わらない」が15.2%(同 -5.6%)、「上昇する」が78.9%(同 +7.4%)となった。

【参考】<月例経済報告>平成29年4月(平成29年4月20日)

景気は、一部に改善の遅れもみられるが、緩やかな回復基調が続いている。

    • 個人消費は、総じてみれば持ち直しの動きが続いている。
    • 設備投資は、持ち直しの動きがみられる。
    • 輸出は、持ち直している。
    • 生産は、持ち直している。
    • 企業収益は、改善している。企業の業況判断は、改善している。
    • 雇用情勢は、改善している。
    • 消費者物価は、横ばいとなっている。

先行きについては、雇用・所得環境の改善が続くなかで、各種政策の効果もあって、緩やかに回復していくことが期待される。ただし、海外経済の不確実性や金融資本市場の変動の影響に留意する必要がある。

<統計調査公表予定一覧>

<統計調査公表予定一覧>
景気動向指数
速報
景気動向指数
改訂状況
機械受注統計
調査
消費動向調査
(全国・月次)
法人企業景気
予測調査(四半期)
平成29年 6月7日
(4月分)
平成29年 5月24日
(3月分)
平成29年 6月12日
(4月分)
平成29年 6月2日
(5月分)
平成29年 6月13日
(4-6月期)
7月7日
(5月分)
6月26日
(4月分)
7月10日
(5月分)
7月3日
(6月分)
9月13日
(7-9月期)
8月7日
(6月分)
7月24日
(5月分)
8月10日
(6月分)
8月2日
(7月分)
12月11日
(10-12月期)
9月7日
(7月分)
8月24日
(6月分)
9月11日
(7月分)
9月1日
(8月分)
10月6日
(8月分)
9月25日
(7月分)
10月11日
(8月分)
10月3日
(9月分)
11月8日
(9月分)
10月23日
(8月分)
11月9日
(9月分)
11月2日
(10月分)

※ 消費動向調査の上に掲載した調査以降の公表予定については、こちらのページに掲載しています。

「企業行動に関するアンケート調査」は例年2月下旬~3月上旬に公表

 (平成28年度調査の公表日: 平成29年2月28日)

国民経済計算(GDP統計)公表予定はこちらから


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