ESRI通信 第106号

平成29年6月19日
内閣府経済社会総合研究所 発行
Cabinet Office, Government of Japan
Economic and Social Research Institute

【内閣府における経済・財政関係のOFF—JTについて】

内閣府経済社会総合研究所には経済研修所が設置されており、府内の経済学や経済分析に関する研修、統計学に関する研修、プログラミングを含む分析ツールの研修、国民経済計算に関する研修、その他の本府の所掌事務に関する研修を行っています。内閣府は、これまでも計量経済モデルや世論調査などを積極的に活用してきましたが、先月まとまった統計改革推進会議最終とりまとめにあるように、我が国の経済社会構造が急速に変化する中、限られた資源を有効に活用し、国民により信頼される行政を展開するためには、証拠に基づく政策立案、Evidence—Based Policy Makingを推進する必要性があり、これまで以上に、職員のデータを用いた分析能力を高めていくことが求められています。

私が入府した約30年前は、職場で求められる統計学の知識は、一般に公表されている経済データを対象に重回帰分析ができればよい程度でした。現在では、個票を用いた複雑な分析ぐらいでないと証拠として弱いと思われてしまいます。統計作成当局に個票の利用申請を行い、手続きを踏んだうえで分析結果までたどり着くという、研究計画力と計画の遂行力、統計学的知識が必要となっています。

現在の研修プログラムは、最終的には府内の幹部を交えた場所で議論しています。原案は、長年、内閣府の経済財政分析業務を支えてきた職員が作成しています。そういう意味で、経済財政分析ツールの実践現場の経験から作られたプログラムと考えています。また、研究所は国際コンファレンス、国際共同研究や学会でのプレゼンテーション、さらには民間研究者の採用を通じ、内閣府と最先端の研究者等との交流の拡大に貢献しています。府内でもより高度な分析が求められるようになった背景の一つには、内閣府の職員が優れた分析に触れる機会が増えたこともあると考えています。

また、経済研修所が提供するプログラムは、原則、内閣府職員以外の参加も可能なようになっています。これまで内閣府外の職員に特に人気だったのがエクセルを用いた基礎的な分析の研修と、VBAによるプログラミングの入門でした。このあたりのノウハウについては、どこの省庁でも共通で必要とされるもののようです。しかしEBPMの推進が公務員全体で要請されるわけですから、今後は、これまでは経済財政部局しか参加者がいなかったような高度な統計研修プログラムへの各省庁からの参加を促進する必要があると考えています。

より確かな実証分析が行えるようにすること、幅広い参加を得ることを目標に、研究交流プログラムや研修プログラムの開発・拡充に取り組みたいと考えています。

平成29年6月

  • 内閣府 経済社会総合研究所
    総務部長 桑原 進

【研究紹介】

India in the World Economy:Inferences from Empirics of Economic Growth

  • 内閣府 経済社会総合研究所
    研究官 齋藤 善政

日本の成長戦略を考える上で、日本経済がアジア新興国のダイナミズムを享受し、ともに成長を目指すという視点が重要であることから、内閣府経済社会総合研究所ではアジア新興国経済の発展ポテンシャルに関する研究を行っている。2000年代初頭から、労働力人口や国土資源が豊富で、成長ポテンシャルの高い新興国経済が注目されてきた。平成27年度からは、新興国の中でも、世界第2位の13億人超の人口のうち30歳未満の人口比率が約6割を占めるなど人口ボーナス期を迎えており、サービス業を中心とした独自の発展パターンを実現してきたインドを対象として研究を行ってきた。

本研究の成果として、当研究所の客員主任研究官を務めていただいている神戸大学の佐藤隆広教授が本年4月に発表した論文「India in the World Economy:Inferences from Empirics of Economic Growth」の内容を紹介する。

本論文は、過去半世紀にわたる約100ヵ国の経済成長の歴史的経験を踏まえて、インドの経済成長を分析することを目的としており、新古典派成長モデルの「絶対的収束仮説」と「条件付収束仮説」の概念を理論的ベンチマークとして、成長回帰による分析を行っている。

新古典派成長モデルにおける絶対的収束仮説とは、各国が初期値の如何に関わりなく同じ定常状態に収束するという仮説であり、一方、条件付収束仮説とは、貯蓄率・生産性・労働人口成長率で違いを持つ国々が、初期値の資本労働比率の如何に関わりなく、それぞれの定常状態に収束するという仮説である。

本稿ではこれらの仮説に基づく推定式を用いて、世界の中でのインドの成長率や成長要因の特徴を分析し、この結果、以下の諸点が明らかになった。

  • 約100ヵ国のパネルデータを成長回帰分析した結果、絶対的収束仮説ではなく、条件付収束仮説が支持される結果となったが、インドでは成長率と所得水準が同時に上昇しており、条件付収束仮説を破る動きが観察された。
  • 出生時平均余命・投資率・経済開放度が経済成長を高めることが判明した。インドにおいても、これらは歴史的に上昇傾向にある。
  • 人的資本は経済成長に対して非線形の影響を与えるが、中学以降の教育年数が3年を超えるとそこから教育年数はプラスの貢献をすることが明らかになった。インドでは、教育年数も経済成長も同時に上昇傾向にある。
  • 合計特殊出生率の上昇は成長にマイナスの影響を与えることが分かった。発展途上国も含むサンプルではこうした関係がみられ、インドでも合計特殊出生率が減少するにつれて成長率も高まっている。
  • 政府消費比率の拡大は経済成長にマイナスの貢献をすることが判明した。これに対し、インドでは政府消費比率と経済成長率が同時に上昇しており、異なる動きが観察された。
  • インフレと経済成長にはマイナスの関係が存在するが、インドではインフレと経済成長の間に明確な関係が必ずしも観察されない。
  • 交易条件の改善は経済成長を高めることが分かった。インドでも同様の関係が観察された。
  • 民主主義と経済成長の間には複雑な非線形の関係があることが判明した。また、両者の関係は成長率の高低で異なる。インドの民主主義の度合いは過去半世紀の間でわずかに変動するだけであり、インドでは民主主義と経済成長の間に明確な関係は観察されない。

以上のように、平均余命や就学年数などの個人の幸福度が経済成長にプラスの貢献を示しており、個人の幸福と成長の好循環が、国の繁栄にとって最も重要と考えられる。


図表:Partial relation between the growth rate of per-capita GDP and log of initial per capita GDP.

(出典)ESRI Discussion Paper No.338「India in the World Economy:Inferences from Empirics of Economic Growth」P.24 Figure 5

注:縦軸は経済成長率(一人当たり実質GDP成長率の5年平均)から所得水準以外の要因の影響を除いた数値、横軸は所得水準(一人当たり実質GDPの対数値、各期間の期初の値)を表す。

http://www.esri.go.jp/jp/archive/e_dis/e_dis338/e_dis338.pdf別ウィンドウで開きます。(PDF形式 1.08 MB)


【経済社会総合研究所からのお知らせ】

  • 消費者マインドアンケート(試行)の6月分の実施(平成29年5月)

    内閣府経済社会総合研究所景気統計部では、消費者の皆さまの「暮らし向き」や「物価の見通し」について、「だれでも」「自由に」回答できるアンケート調査(試行)を行っております。当面毎月20日を締切として調査を行っています。初めてご回答される方も、2回目以上のご回答の方も大歓迎です。質問の数も少なく、ごく簡単なものですので、ぜひ毎月(一回)ご協力ください。

    (URL:http://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/shouhi/open_chosa/open_chosa.html


【最新の研究発表】

  • 経済分析第194号(特別編集号)を掲載しました。(平成29年5月)

    (エディトリアル)

    サービス産業における成長の計測と分析(深尾京司)

    (論文)

    サービス産業におけるデフレーターと実質付加価値の計測(深尾京司、亀田泰佑、中村光太、難波了一、佐藤正弘)

    小売業における新業態参入と大型店舗の規制緩和の厚生評価(本田圭市郎、松浦寿幸、水田岳志)

    日本の小売業の成長におけるサービスの質と製品多様性の貢献(佐藤正弘、亀田泰佑、杉原茂、Colin Hottman)

    学術研究における集積とネットワーク(井上寛規、齋藤裕美、杉原茂、広田茂、亀田泰佑)

<報告書の掲載>


【最新の統計】

<SNA統計>

  • 四半期別GDP速報(2017(平成29)年1–3月期・2次速報)(平成29年6月8日)
    1. 平成29年6月8日に公表した29年1–3月期四半期別GDP速報(2次速報)では実質GDP成長率が0.3%(年率1.0%)と、1次速報値の0.5%(年率2.2%)から下方改定となった。
    2. 実質GDP成長率が下方改定となったのは、需要項目別の前期比寄与度でみて、民間在庫変動などが改定されたためである。
  • 平成26年度県民経済計算(平成29年5月26日)

<景気動向指数>平成29年4月速報(平成29年6月7日)

4月のCI(速報値・平成22(2010)年=100)は、先行指数:104.5、一致指数:117.7、遅行指数:116.2となった。

  • 先行指数は、前月と比較して1.2ポイント下降し、3か月ぶりの下降となった。3か月後方移動平均は0.07ポイント下降し、12か月ぶりの下降となった。7か月後方移動平均は0.62ポイント上昇し、9か月連続の上昇となった。
  • 一致指数は、前月と比較して3.3ポイント上昇し、2か月ぶりの上昇となった。3か月後方移動平均は1.47ポイント上昇し、2か月ぶりの上昇となった。7か月後方移動平均は0.83ポイント上昇し、9か月連続の上昇となった。
  • 遅行指数は、前月と比較して0.5ポイント下降し、6か月ぶりの下降となった。3か月後方移動平均は0.30ポイント上昇し、9か月連続の上昇となった。7か月後方移動平均は0.30ポイント上昇し、5か月連続の上昇となった。

一致指数の基調判断

  • 景気動向指数(CI一致指数)は、改善を示している。

<景気動向指数研究会>6月15日開催(平成29年6月15日)

  • 第17回景気動向指数研究会を開催しました。

<機械受注統計調査報告>平成29年4月実績(平成29年6月12日)

  • 機械受注総額の動向をみると、2017(平成29)年3月前月比1.3%増の後、4月は同2.7%増の2兆2,966億円となった。
  • 民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の動向をみると、2017(平成29)年3月前月比1.4%増の後、4月は同3.1%減の8,359億円となった。このうち、製造業は同2.5%増の3,618億円、非製造業(除く船舶・電力)は同5.0%減の4,715億円となった。

<消費動向調査>平成29年5月調査(平成29年6月2日)

  • 平成29年5月の消費者態度指数(二人以上の世帯、季節調整値)は、4月の43.2から0.4ポイント上昇して43.6となり、2か月ぶりに前月を上回った。消費者態度指数を構成する項目のうち、「耐久消費財の買い時判断」以外の3項目「暮らし向き」「収入の増え方」及び「雇用環境」が前月から上昇した。
  • 「日頃よく購入する品物」の1年後の価格の予想(二人以上の世帯)は、「低下する」が4.0%(前月差 +0.7%)、「変わらない」が15.1%(同 -0.1%)、「上昇する」が78.0%(同 -0.9%)となった。

<法人企業景気予測調査>平成29年4–6月期調査(平成29年6月13日)

「貴社の景況判断」BSIの平成29年4-6月期(現状判断)をみると、大企業(全産業)は▲2.0%ポイントで4期ぶりの「下降」超、中堅企業(全産業)は▲3.1%ポイントで2期連続の「下降」超、中小企業(全産業)は▲9.9%ポイントで13期連続の「下降」超。なお、前回(1-3月期の現状判断:大企業1.3%ポイント、中堅企業▲0.1%ポイント、中小企業▲11.3%ポイント)と比較して、大企業は「下降」超に転化、中堅企業は「下降」超幅が拡大、中小企業は「下降」超幅が縮小。先行きについてみると、大企業、中堅企業は7-9月期「上昇」超に転化の後、10-12月期も「上昇」超で推移する見通し。中小企業は7-9月期「下降」超で推移の後、10-12月期は「上昇」超に転化する見通し。

「国内の景況判断」BSIの平成29年4-6月期(現状判断)をみると、大企業(全産業)は4.8%ポイントで、3期連続の「上昇」超、前回(1-3月期の現状判断:5.2%ポイント)と比較して、「上昇」超幅が縮小。

「従業員数判断」BSIの平成29年6月末(現状判断)をみると、大企業(全産業)は15.4%ポイントで24期連続の「不足気味」超で、前回(3月末の現状判断:16.9%ポイント)と比較して、「不足気味」超幅が縮小。

平成29年度の売上高(全規模・全産業)は前年度比2.1%の増収見通し、経常利益(全規模・全産業)は同▲0.4%の減益見通し、設備投資(ソフトウェア含む、土地除く:全規模・全産業)は同3.8%の増加見通し。

【参考】<月例経済報告>平成29年5月(平成29年5月24日)

景気は、一部に改善の遅れもみられるが、緩やかな回復基調が続いている。

    • 個人消費は、総じてみれば持ち直しの動きが続いている。
    • 設備投資は、持ち直しの動きがみられる。
    • 輸出は、持ち直している。
    • 生産は、持ち直している。
    • 企業収益は、改善している。企業の業況判断は、改善している。
    • 雇用情勢は、改善している。
    • 消費者物価は、横ばいとなっている。

先行きについては、雇用・所得環境の改善が続くなかで、各種政策の効果もあって、緩やかに回復していくことが期待される。ただし、海外経済の不確実性や金融資本市場の変動の影響に留意する必要がある。

<統計調査公表予定一覧>

<統計調査公表予定一覧>
景気動向指数
速報
景気動向指数
改訂状況
機械受注統計
調査
消費動向調査
(全国・月次)
法人企業景気
予測調査(四半期)
平成29年 7月7日
(5月分)
平成29年 6月26日
(4月分)
平成29年 7月10日
(5月分)
平成29年 7月3日
(6月分)
平成29年 9月13日
(7-9月期)
8月7日
(6月分)
7月24日
(5月分)
8月10日
(6月分)
8月2日
(7月分)
12月11日
(10-12月期)
9月7日
(7月分)
8月24日
(6月分)
9月11日
(7月分)
9月1日
(8月分)
平成30年 3月12日
(1-3月期)
10月6日
(8月分)
9月25日
(7月分)
10月11日
(8月分)
10月3日
(9月分)
11月8日
(9月分)
10月23日
(8月分)
11月9日
(9月分)
11月2日
(10月分)
12月7日
(10月分)
11月24日
(9月分)
12月13日
(10月分)
12月4日
(11月分)

※ 消費動向調査の上に掲載した調査以降の公表予定については、こちらのページに掲載しています。

「企業行動に関するアンケート調査」は例年2月下旬~3月上旬に公表

 (平成28年度調査の公表日: 平成29年2月28日)

国民経済計算(GDP統計)公表予定はこちらから


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