ESRI通信 第107号

平成29年7月27日
内閣府経済社会総合研究所 発行
Cabinet Office, Government of Japan
Economic and Social Research Institute

【所長挨拶】

今月11日付けで経済社会総合研究所の所長に就任いたしました。前職は共生社会政策の担当でしたが、もともとは経済財政分析など経済分野を長く担当しておりました。こうした経験を活かすとともに、研究所のこれまでの実績を踏まえつつ、統計や研究成果のユーザーから求められるニーズに的確に対応できるよう努めてまいりたいと考えております。具体的には、次のような課題に重点的に取り組んでまいります。

第一は、GDP統計を軸とした統計改革の実行です。なかでも大きな改革は、GDP推計の基盤となる産業連関表について、商品×産業のマトリックス(SUT)方式に移行し、事業所ベースのデータから直接推計することにより、精度の向上を図るというものです。関係省庁と共同での長期にわたる作業になりますが、今年はその初年度であり、着実なスタートを切りたいと考えております。QEについても、家計消費や設備投資など需要項目ごとに、ユーザー視点を踏まえて改善を進めてまいります。

第二は、景気や生産性・成長力に関する分野を中心とした研究の充実です。当研究所の大きな特色はGDP統計や景気動向指数の作成にあり、これがコアコンピタンスであるともいえます。研究活動においても、これらと密接に関係した分野に重点を置き、統計作成と研究のシナジー効果発揮を目指していきたいと考えます。GDP統計の改革を進めるための基礎的研究はもちろん、景気循環のより的確な把握やマクロ経済政策の分析、生産性向上・成長力強化へ向けた経済社会の諸分野にわたる改革の提案につながるような研究の充実に努めてまいります。

第三は、内閣府、ひいては政府におけるEBPM推進への貢献です。エビデンスに基づく政策形成の重要性は今次統計改革でも改めて強調されていますが、とくに新規の分野や各省横断的な課題に向き合うことの多い内閣府は率先してこれを実践する必要があります。そのため、政策の波及過程に関する論理的な考察、先行研究の体系的な把握と整理、データの収集と分析評価などの面で、政策担当部局の参考となるような研究成果を示していくとともに、当研究所の持つ研修機能を通じて人材育成に貢献していきたいと考えております。

微力ではありますが、清家名誉所長のもと、関係の皆様のご指導を賜りつつ、研究所の活動の発展に努めてまいりますのでよろしくお願いいたします。

平成29年7月

  • 内閣府 経済社会総合研究所
    所長 西崎 文平

【SNA統計の基準改定を終えて】

6月29日の資本サービスに係るデータ(投入量、価格等)の公表をもって、昨年12月から順次進めてきた「平成23年度基準改定」によるSNA統計(1994年~)の公表は終了した。まだ関連する作業として1980年までのGDP支出系列の簡易遡及があるが(今年度内公表予定)、担当者としては、「ここまで長かった」というのが正直な思いである。

今回の基準改定では、通常の約5年ごとに実施している、「産業連関表」や「国勢調査」などの詳細かつ大規模な基礎統計の取り込み、推計手法の改善に加え、最新の国際基準である、2009年に国連で採択された「2008SNA」に対応して、過去の計数全体を再推計・改定した。対応すべき新たな課題は、研究・開発(R&D)支出の投資への計上、雇用者ストックオプションの金融資産への計上、一般政府と公的企業との間の支払の変更等の広範にわたり、各課題とも、統計作成上、基礎データの利用可能性の検討、推計方法の開発、試算等の周到な作業を要するものであった。実際、今回の基準改定の推計作業自体の開始は2015年であるが、移行プロセスは長期に及んだ。2011年に行われた「平成17年基準改定」の段階で、FISIMの導入や政府関係諸機関の分類基準の見直し等は2008SNAを踏まえて推計が行われた。2012年からはESRI内で有識者を交えて具体的な推計方法や表章等の方針を検討し、統計委員会において各課題の方針をご審議いただいた。また、冒頭の資本サービスに係るデータに至っては、10年以上にわたる資本ストック統計の開発プロジェクトの成果である。2006年より「民間投資・除却調査」を開始し、詳細な資産別データの蓄積を踏まえて、推計手法の抜本的な見直し(ベンチマークイヤー法から恒久棚卸法へ)を行い、段階的に資本ストック統計の精度を上げていった(資本サービスのデータを公表している国は少数でもあり、今回さっそくOECD内でも共有されていると聞いている)。長きにわたり今回の基準改定にご貢献、ご支援下さった有識者、関係省庁の方々、そして政府の統計にご協力頂いた国民の皆様に心より感謝申し上げたい。

また、今回の基準改定は、概念・定義や推計手法の変更が多く、GDP等各計数への影響も大きいことから、できるだけ円滑に統計ユーザーに理解、受容されるべく、情報発信とコミュニケーションに努めた。具体的には、新たな体系に関する解説や推計手法に関する解説をタイムリーかつ詳細に公表するなど、統計ユーザーの利便性に資する取組を行った。さらに公表までの約半年間において、メディア、エコノミスト、学会、大学、シンクタンク等関係方面にご協力いただき説明会やセミナーを約30回にわたって実施した。各回で、統計ユーザー等からSNA統計に関して様々な意見、ニーズを伺い、情報提供やコミュニケーションの重要性を改めて痛感したところであり、統計の有用性を高める上でも今後とも積極的に取り組んでまいりたい。

SNA統計に関しては、今回の基準改定を含め精度向上に向けて不断の検討、見直しに努めているが、一方で、SNA統計をはじめとする経済統計については、急速に変化する経済の動向を必ずしも的確に反映できていない等の批判が寄せられていることも事実である。こうした観点から、政府では、経済財政諮問会議や統計改革推進会議、統計委員会といった場において統計改革の議論が精力的に行われた。5月に「GDP統計改善工程表」として、四半期別GDP速報の推計精度の改善及び生産面・分配面の推計、娯楽作品の原本等の新分野の取り込み、JSNA推計のベンチマークとなる産業連関表のSUT体系化など多岐にわたる改善策を時間軸とともにとりまとめたところであり、引き続きSNA統計に関して計画的に改善・整備してまいりたい。

平成29年7月

  • 内閣府 経済社会総合研究所
    総括政策研究官(前国民経済計算部長)
    長谷川 秀司

(参考)「GDP統計改善工程表」(平成29年5月19日公表)
http://www.esri.go.jp/jp/esri/statistical_reform/gdp_kaizenkoutei.pdf別ウィンドウで開きます。(PDF形式 866 KB)


【研究紹介】

欠測を伴う標本調査に基づく統計的仮説検定について

  • 内閣府 経済社会総合研究所
    研究専門職 間 真実

政府統計の横断的課題のひとつに欠測値への対応が挙げられる。標本調査では、調査客体の無回答によりデータに欠測の生じることが通常である。欠測値は、統計的推論に偏りと精度の低下をもたらす。欠測値による統計的推論の偏りは、回答標本(回答者に限った標本)が目標母集団の縮図としての性格を失うことによって生じ、「欠測バイアス」と呼ばれる。欠測による統計的推論の精度の低下は、標本サイズが縮小することで標準誤差(推定の振れ幅の尺度)が増大することにより生じる。

内閣府経済社会総合研究所景気統計部では、平成28年度業務「欠測値補完に関する調査研究」において、有識者による研究会の開催及び委託調査を実施し、欠測値の問題に対する統計的処理に関する最新の知見のうち政府統計業務に関連のあるものを報告書(*1)にまとめた。筆者は、上記業務に携わる中で得られた知見が異なる問題にも応用できることに気づき、ワーキングペーパー(*2)にまとめた。概要をを以下に紹介する。

統計的推論は、大きく推定と検定に分けられる。例えば「全国の30代男性の平均身長は何cmか」は推定によって、「A県とB県で30代男性の平均身長は異なるか」は検定によって答えが求められる。欠測値の統計的処理に関する既存研究は、専ら推定における欠測値問題への対処を課題としている。これに対して当該研究では、検定における欠測値問題をテーマとしている。

検定における欠測値問題は、検定統計量(帰無仮説の下での分布が知られている統計量。t値やz値が代表例)に生じる欠測バイアスであるが、これに分析者の認知の限界が作用する点が、推定における欠測バイアスの問題とは異なる。そのことを下図に示す。図では、「ある地域の30代男性の平均身長は168cmと異なるか」といったタイプの検定(単一集団の両側検定)を考える。欠測を伴う標本調査では、当然ながら分析者には回答者のデータのみが利用可能なので、回答者の平均値(をその標準誤差で割った値)が検定統計量となる。このとき分析者は欠測バイアスを考慮に入れていない(考慮に入れることはできない)ので、分析者によって意図される検定と実行される検定の間に乖離が生じる。それは、意図される検定のpdf(確率密度関数)と実行される検定のpdfのずれである。このため、意図される検定の棄却域と実行される検定の棄却域もずれ、従って、検定統計量が前者に含まれ後者に含まれない場合は誤って棄却されず、逆に前者に含まれず後者に含まれる場合は誤って棄却されることとなる。誤って棄却されたりされなかったりする確率は図の灰色領域の面積で表され、当該研究ではこれを「誤検定確率」と呼び、その定性分析及び定量分析を行った。

定性分析の結果、誤検定確率は、検定の有意水準、標本サイズ、欠測率、及び回答者と無回答者の異質性の尺度の増加関数で漸近的に近似できることが示された。この結果からは、有意水準と標本サイズの適当な組み合わせにより誤検定確率をコントロールできる可能性が示唆されるものの、数値解析による定量分析の結果からは、そのような操作は実際的ではないことが分かった。欠測率や異質性がわずかに増加しただけで、その効果を相殺するための有意水準や標本サイズの調整が常識的な範囲を超えてしまうのである。

分析結果から、欠測を伴う標本調査に基づいて検定を行う場合、標本サイズの増大が手放しで望ましいことではないことが明瞭となる。欠測がない場合標本サイズの増大は検定の検出力(正しく棄却する確率)を高めるが、欠測がある場合は、棄却域が拡大する効果があだとなって誤検定確率が増大するからである。

欠測により検定を誤る確率


【経済社会総合研究所からのお知らせ】


【最新の研究発表】

<報告書の掲載>


【最新の統計】

<SNA統計>

<景気動向指数>平成29年5月速報(平成29年7月7日)

5月のCI(速報値・平成 22(2010)年=100)は、先行指数:104.7、一致指数:115.5、遅行指数:116.7となった。

  • 先行指数は、前月と比較して0.5ポイント上昇し、2か月ぶりの上昇となった。3か月後方移動平均は0.03ポイント下降し、2か月連続の下降となった。7か月後方移動平均は0.52ポイント上昇し、10か月連続の上昇となった。
  • 一致指数は、前月と比較して1.6ポイント下降し、2か月ぶりの下降となった。3か月後方移動平均は0.17ポイント上昇し、2か月連続の上昇となった。7か月後方移動平均は0.37ポイント上昇し、10か月連続の上昇となった。
  • 遅行指数は、前月と比較して0.4ポイント下降し、7か月ぶりの下降となった。3か月後方移動平均は0.23ポイント上昇し、10か月連続の上昇となった。7か月後方移動平均は0.42ポイント上昇し、6か月連続の上昇となった。

一致指数の基調判断

  • 景気動向指数(CI一致指数)は、改善を示している。

平成29年5月改訂(平成29年7月24日)

  • 5月のCI(改訂値・平成22年=100)は、先行指数:104.6、一致指数:115.8、遅行指数:116.4となった。

一致指数の基調判断

  • 景気動向指数(CI一致指数)は、改善を示している。

<機械受注統計調査報告>平成29年5月実績(平成29年7月10日)

  • 機械受注総額の動向をみると、2017(平成29)年4月前月比2.7%増の後、5月は同3.1%減の2兆2,246億円となった。
  • 民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の動向をみると、2017(平成29)年4月前月比3.1%減の後、5月は同3.6%減の8,055億円となった。このうち、製造業は同1.0%増の3,656億円、非製造業(除く船舶・電力)は同5.1%減の4,473億円となった。

<消費動向調査>平成29年6月調査(平成29年7月3日)

  • 平成29年6月の消費者態度指数(二人以上の世帯、季節調整値)は、5月の43.6から0.3ポイント低下して43.3となり、2か月ぶりに前月を下回った。消費者態度指数を構成する項目のうち、「暮らし向き」及び「収入の増え方」が前月から低下した。
  • 「日頃よく購入する品物」の1年後の価格の予想(二人以上の世帯)は、「低下する」が3.7%(前月差 -0.3%)、「変わらない」が14.1%(同 -1.0%)、「上昇する」が79.2%(同 +1.2%)となった。

【参考】<月例経済報告>平成29年7月(平成29年7月19日)

景気は、緩やかな回復基調が続いている。

    • 個人消費は、緩やかに持ち直している。
    • 設備投資は、持ち直している。
    • 輸出は、持ち直している。
    • 生産は、持ち直している。
    • 企業収益は、改善している。企業の業況判断は、改善している。
    • 雇用情勢は、改善している。
    • 消費者物価は、横ばいとなっている。

先行きについては、雇用・所得環境の改善が続くなかで、各種政策の効果もあって、緩やかに回復していくことが期待される。ただし、海外経済の不確実性や金融資本市場の変動の影響に留意する必要がある。

<統計調査公表予定一覧>

<統計調査公表予定一覧>
景気動向指数
速報
景気動向指数
改訂状況
機械受注統計
調査
消費動向調査
(全国・月次)
法人企業景気
予測調査(四半期)
平成29年 8月7日
(6月分)
平成29年 7月24日
(5月分)
平成29年 8月10日
(6月分)
平成29年 8月2日
(7月分)
平成29年 9月13日
(7-9月期)
9月7日
(7月分)
8月24日
(6月分)
9月11日
(7月分)
9月1日
(8月分)
12月11日
(10-12月期)
10月6日
(8月分)
9月25日
(7月分)
10月11日
(8月分)
10月3日
(9月分)
平成30年 3月12日
(1-3月期)
11月8日
(9月分)
10月23日
(8月分)
11月9日
(9月分)
11月2日
(10月分)
12月7日
(10月分)
11月24日
(9月分)
12月13日
(10月分)
12月4日
(11月分)
平成30年 1月11日
(11月分)
12月25日
(10月分)
平成30年 1月17日
(11月分)
平成30年 1月9日
(12月分)

※ 消費動向調査の上に掲載した調査以降の公表予定については、こちらのページに掲載しています。

「企業行動に関するアンケート調査」は例年2月下旬~3月上旬に公表

 (平成28年度調査の公表日: 平成29年2月28日)

国民経済計算(GDP統計)公表予定はこちらから


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