ESRI通信 第112号

平成29年12月20日
内閣府経済社会総合研究所 発行
Cabinet Office, Government of Japan
Economic and Social Research Institute

【課題先進国として高まる政策効果分析への期待】

去る10月、韓国で少子高齢化・人口減少に関する国際コンファレンスに出席する機会があった。韓国は、近年、出生率の急速な低下に悩み、昨年には出生数が史上最低を記録するなど、状況は我が国と酷似、あるいはそれ以上の深刻さを呈している。韓国政府は幼児教育無償化などの面で我が国より先んじた取り組みをすでに進めている。しかし、進学に要する教育コストや、結婚当初からの持ち家志向の強さと相まってソウルへの一極集中問題による住宅コスト高などにより、若年層の将来の生活に対する閉塞感が払しょくされず、結果として晩婚化、非婚化、出生率低下に拍車がかかっている。同コンファレンスでは、程度の差こそあれ我が国の少子化の傾向もよく似ているという現状やそれへの対応策として希望出生率1.8の実現を掲げている一億総活躍プランなどについて紹介した。その反響としてフロアからは韓国政府に対しては厳しい質問が相次いだのに対し、我が国では合計特殊出生率が最近下げ止まりむしろ若干上向いていることの背景を知りたい、我が国の経験をもとに有効な策についてヒントを得たいという雰囲気が強く、同席していたタイなどの参加者からも同様な声が聞かれた。残念なことに、今後とるべきアクションの内容についてはともかく、これまで実施されてきた少子化対策の効果に関するエビデンスについて十分な蓄積を欠いていることが非常に悔やまれた。

我が国でも、少子高齢化を国難ととらえ、さらに先般、新しい経済政策パッケージの柱として、幼児教育無償化、待機児童解消が掲げられ、今後その制度の詳細がさらに詰められることとなった。共働きが当たり前のようになりつつある現在、家計と仕事の両立、労働力の確保という観点からも保育環境の充実は待ったなしの課題である。しかし、子育ては家庭と保育施設内だけに限られたものではなく、あらゆる場面を想定して社会全体がもっと子育てフレンドリーな環境に変わっていくことが同時に求められる。居住地域、移動・行動パターン、就業状況、年齢世代、世帯形態といった家計の特徴にも注意しながら結婚や子育てのための課題を幅広く把握しつつ、一つ一つの課題に対して対応策と期待される効果についてロジックを構築しその検証結果としてのエビデンスを丁寧に提示することは、我が国自身はもとより、先に述べた韓国や他のアジア諸国からも渇望されているのが実感だ。経済社会総合研究所においても、従来から行っている少子化要因の分析と政策課題の発掘にとどまらず、今後展開される少子化対策の効果分析も蓄積しそれらをタイムリーに発信することにより、このテーマからも課題先進国としての我が国の役割をしっかり果たしていくことができると考える。

平成29年12月

  • 内閣府 経済社会総合研究所
    総括政策研究官 嶋田 裕光

【研究紹介】

『首都圏の若年者の結婚と生活環境に関する研究』の概要

  • 内閣府 経済社会総合研究所
    行政実務研修員 渡辺 真成

【研究の経緯・問題提起】

多くの国民が結婚したい、子どもを産み育てたい、結婚した後も子どもを育てながら働きたいと希望しているにもかかわらず、結果として希望がかなえられず、未婚率や平均初婚年齢は上昇を続けている。この傾向を更に仔細に見ると、首都圏の動向が一つのカギになると思われる。例えば、東京の未婚率や平均初婚年齢は他の地域よりも高い。また、入学や就職で首都圏に流入した若年層が結婚・出産をしないことが、我が国の人口減少に少なからぬ影響を与えているとの見方もある。

地域別に見ていくと、「未婚男女の結婚と仕事に関する意識調査」1では「いずれ結婚するつもり」と回答する者の割合には大きな地域差はみられなかったにも拘わらず実際の未婚率の地域差は大きい。そのため、首都圏のどのような要因が未婚率に特に影響しているか、との視点で調査・分析を行うこととした。

【研究仮説】

仮説を設定するにあたり、準備として首都圏在住、及び高婚姻率地域在住の30歳前後の未既婚男女(正規雇用のみ)を対象にグループインタビューを行った。この結果を踏まえ、首都圏の高い未婚率を規定すると思われる要因を大きく4つのカテゴリーに分類した。(「機会費用」、「UIターン」、「都会人の特性」、「その他諸環境(首都圏)」。)(図表1)「機会費用」要因としては、首都圏では結婚をすることで失うもの(賃金、キャリア、時間等)が多すぎて結婚になかなか踏み切れないことなどを想定している。「UIターン」要因としては、何らかの事情により地元へ帰るまで結婚を先送りにすることなどを想定している。「都会人の特性」要因としては、首都圏では出会いの多さから目移りして結婚のタイミングを逸したり、交際相手に求める条件が高すぎたりするというケースを想定している。

(図表1)首都圏の高い未婚率を規定すると思われる要因の仮説案、機会費用、UIターン、都会人の特性、その他諸環境(首都圏)

【調査分析方法】

本研究では、有識者ヒアリングを踏まえつつ、調査票を設計した。調査対象年齢は、大学卒業後の就職年齢や平均初婚年齢等を考慮し、25~34歳としている。首都圏の人口が密集する地域に在住する既婚及び未婚の男女と、その比較対照グループとして、婚姻率が高い地域に在住する既婚及び未婚の男女に対してインターネット調査を行った。この調査データを利用し、調査対象者の人生における各時点(16歳時点、学卒時、初職入職時、結婚決定時(既婚者)、現在)毎の変化や在住する地域の差に着目して、首都圏グループと高婚姻率地域グループの比較分析を年度内に行う予定としている。

【政策インプリケーション】

本研究では、首都圏と高婚姻率地域の違いを決定づける要因について上記の仮説の検証を中心に分析を行う。調査票には、職場や生活環境の設問を多く取り入れているため、若年層が生活時間の多くを過ごす職場や地域の特性に応じた結婚支援の在り方についての政策提言につなげたいと考えている。


12015,内閣府経済社会総合研究所


【経済社会総合研究所からのお知らせ】

  • 消費者マインドアンケート(試行)の1月分の実施

    内閣府経済社会総合研究所景気統計部では、消費者の皆さまの「暮らし向き」や「物価の見通し」について、「だれでも」「自由に」回答できるアンケート調査(試行)を行っております。当面毎月20日を締切として調査を行っています。初めてご回答される方も、2回目以上のご回答の方も大歓迎です。質問の数も少なく、ごく簡単なものですので、ぜひ毎月(1回)ご協力ください。

    (URL:http://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/shouhi/open_chosa/open_chosa.html

  • 【再掲】『経済分析』特定テーマ論文募集のお知らせを掲載しました。(平成29年11月)


【最新の研究発表】

  • 経済分析第196号(特別編集号)を掲載しました。(平成29年12月)

    (はじめに)

    (福田慎一)

    (序論)

    人口減少がマクロ経済成長に与える影響–経済成長理論からの視点–(福田慎一)

    (論文)

    日本の高齢者世帯の貯蓄行動に関する実証分析(チャールズ・ユウジ・ホリオカ、新見陽子)

    リカレント教育を通じた人的資本の蓄積(田中茉莉子)

    景気指標における人口動態の影響(小巻泰之)

    高齢化とマクロ投資比率–国際パネルデータを用いた分析–(梅田政徳、川本琢磨、酒巻哲朗、堀雅博)

    企業内部の高齢化が設備投資に与える影響–日本企業の財務パネルデータを用いた分析–(梅田政徳、川本琢磨、酒巻哲朗、堀雅博)

    人口高齢化と経済成長への影響–韓国へのインプリケーション–(Hyun-Hoon LEE、Kwanho SHIN、Donghyun PARK)

    人口移動、人的資本、頭脳流出と頭脳流入–EUの経験を踏まえた展望–(Robert F. OWEN)

    住宅価格が銀行部門のパフォーマンスに与える影響–米国におけるMSAデータから得られる証拠–(Sung Wook JOH、Seongjun JEONG)

  • 政府系金融機関の政策融資はクレジットクランチ(信用収縮)を緩和するか?日本における融資レベルのデータからの証拠(関野 雅弘、渡部 和孝)を掲載しました。(平成29年11月)

    本稿では、契約レベルのデータを用い、中小企業金融公庫(中小公庫、現日本政策金融公庫中小企業事業本部)によるクレジットクランチ(信用収縮)期の融資がメインバンクからの企業の借入の減少を緩和したことを明らかにした。さらに、借入減少を緩和する貸出を捕捉する、資本充足度(capital adequacy)により説明できるメインバンクの貸出供給の成長率を操作変数とした中小公庫貸出が、企業の収益性、投資率に負の効果を持っていたこと、中小公庫貸出が企業の金融制約を捕捉するキャッシュフローの現預金感応度(cash sensitivity of cash)を緩和する弱い効果を持っていたことを明らかにした。


【最新の統計】

<SNA統計>

<景気動向指数>平成29年10月速報(平成29年12月7日)

10月のCI(速報値・平成22(2010)年=100)は、先行指数:106.1、一致指数:116.5、遅行指数:118.4となった。

  • 先行指数は、前月と比較して0.4ポイント下降し、2か月連続の下降となった。3か月後方移動平均は0.27ポイント上昇し、5か月連続の上昇となった。7か月後方移動平均は0.07ポイント上昇し、15か月連続の上昇となった。
  • 一致指数は、前月と比較して0.3ポイント上昇し、2か月ぶりの上昇となった。3か月後方移動平均は0.24ポイント上昇し、2か月ぶりの上昇となった。7か月後方移動平均は0.30ポイント上昇し、15か月連続の上昇となった。
  • 遅行指数は、前月と比較して1.1ポイント上昇し、3か月連続の上昇となった。3か月後方移動平均は0.76ポイント上昇し、3か月連続の上昇となった。7か月後方移動平均は0.26ポイント上昇し、11か月連続の上昇となった。

一致指数の基調判断

  • 景気動向指数(CI一致指数)は、改善を示している。

<機械受注統計調査報告>平成29年10月実績(平成29年12月13日)

  • 機械受注総額の動向をみると、2017(平成29)年9月前月比10.2%減の後、10月は同5.6%増の2兆4,509億円となった。
  • 民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の動向をみると、2017(平成29)年9月前月比8.1%減の後、10月は同5.0%増の8,509億円となった。このうち、製造業は同7.4%増の4,213億円、非製造業(除く船舶・電力)は同1.1%増の4,377億円となった。

<消費動向調査>平成29年11月調査(平成29年12月4日)

  • 平成29年11月の消費者態度指数(二人以上の世帯、季節調整値)は、10月の44.5から0.4ポイント上昇して44.9となり、3か月連続で前月を上回った。消費者態度指数を構成する4項目全てが前月から上昇した。
  • 「日頃よく購入する品物」の1年後の価格の予想(二人以上の世帯)は、「低下する」が3.7%(前月差±0.0%)、「変わらない」が14.5%(同-1.3%)、「上昇する」が78.6%(同+1.1%)となった。

<法人企業景気予測調査>平成29年10–12月期調査(平成29年12月11日)

「貴社の景況判断」BSIの平成29年10–12月期(現状判断)をみると、大企業(全産業)は6.2%ポイントで2期連続の「上昇」超、中堅企業(全産業)は5.3%ポイントで2期連続の「上昇」超、中小企業(全産業)は▲2.3%ポイントで15期連続の「下降」超。なお、前回(7–9月期の現状判断:大企業5.1%ポイント、中堅企業5.1%ポイント、中小企業▲6.5%ポイント)と比較して、大企業及び中堅企業では「上昇」超幅が拡大、中小企業では「下降」超幅が縮小。

先行きについてみると、大企業及び中堅企業は30年1–3月期、4–6月期とも「上昇」超で推移する見通し。中小企業は30年1–3月期、4–6月期とも「下降」超で推移する見通し。

「国内の景況判断」BSIの平成29年10–12月期(現状判断)をみると、大企業(全産業)は13.6%ポイントで、5期連続の「上昇」超、前回(7–9月期の現状判断:6.9%ポイント)と比較して、「上昇」超幅が拡大。

「従業員数判断」BSIの平成29年12月末(現状判断)をみると、大企業(全産業)は19.5%ポイントで26期連続の「不足気味」超、前回(9月末の現状判断:17.0%ポイント)と比較して、「不足気味」超幅が拡大。

平成29年度の売上高(全規模・全産業)は前年度比2.5%の増収見込み、経常利益(全規模・全産業)は同4.8%の増益見込み、設備投資(ソフトウェア含む、土地除く:全規模・全産業)は同3.4%の増加見込み。

【参考】<月例経済報告>平成29年11月(平成29年11月28日)

景気は、緩やかな回復基調が続いている。

    • 個人消費は、緩やかに持ち直している。
    • 設備投資は、持ち直している。
    • 輸出は、持ち直している。
    • 生産は、持ち直している。
    • 企業収益は、改善している。企業の業況判断は、改善している。
    • 雇用情勢は、改善している。
    • 消費者物価は、横ばいとなっている。

先行きについては、雇用・所得環境の改善が続くなかで、各種政策の効果もあって、緩やかに回復していくことが期待される。ただし、海外経済の不確実性や金融資本市場の変動の影響に留意する必要がある。

<統計調査公表予定一覧>

<統計調査公表予定一覧>
景気動向指数
速報
景気動向指数
改訂状況
機械受注統計
調査
消費動向調査
(全国・月次)
法人企業景気
予測調査(四半期)
平成30年 1月11日
(11月分)
平成29年 12月25日
(10月分)
平成30年 1月17日
(11月分)
平成30年 1月9日
(12月分)
平成30年 3月12日
(1–3月期)
2月7日
(12月分)
平成30年 1月24日
(11月分)
2月15日
(12月分)
1月31日
(1月分)
6月12日
(4–6月期)
3月7日
(1月分)
2月26日
(12月分)
3月14日
(1月分)
3月1日
(2月分)

「企業行動に関するアンケート調査」は例年2月下旬~3月上旬に公表

 (平成28年度調査の公表日: 平成29年2月28日)

国民経済計算(GDP統計)公表予定はこちらから


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