ESRI通信 第113号

平成30年1月22日
内閣府経済社会総合研究所 発行
Cabinet Office, Government of Japan
Economic and Social Research Institute

【皆様と研究所との橋渡し】

昨年10月、研究所に着任しました。研究所の取り組みを皆様方にお伝えし、利用していただき、あるいは、私共の活動に参加していただくための業務を担当しています。

ここでは、研究所の新たな目標である‘統計作成と研究のシナジー’に関して、皆様方との連繋を深めるための活動についてご紹介させていただきます。

昨年、研究所は、関係省庁との連携のもと、統計改革の一環としてGDP統計の改善に着手しました。

長期の計画の下で取り組むべき多くの課題がありますが、特に重要なものとしてGDP統計の基盤となる産業連関表の「供給・使用表(SUT)」体系への移行が挙げられます。これが実現すれば、事業所ベース等の情報を用いて、商品ごとの推計を経由せず産業別GDPをより正確に推計することが可能となります。

一方、研究活動でも、GDP統計の改革に資するテーマに重点を置くこととし、シェアリング・エコノミーの進展や、サービス(医療、教育)の質の変化を捉えるための手法の開発に取り組んでいます。

こうした新しい取り組みについて、その進捗状況をご報告し議論するために、本年1月22日にESRI-経済政策フォーラム※を開催いたしました。皆様方とのコミュニケーションの発展に繋がることを期待しています。

※「GDP統計改革のフロンティア~GDP統計における新たな推計アプローチの開発と新分野の経済活動の計測に向けて~」

ホームページの改良も必要になっています。現在、GDP統計や景気統計は内閣府HPでご覧いただいていますが、研究活動やフォーラム開催については研究所HPでご紹介しています。今後、両HPは統合されることになっており、このもとで、統計の作成者・利用者・研究開発者の共通の足場がつくられる必要があります。そして、現在、現行システムの枠内ではありますが、研究所HPにも統計関係の新着情報も掲載するなど、両HPの統合に向けた工夫を行う予定です。

研究成果の発信については査読誌「経済分析」が大きな役割を担っています。多数の方々のご尽力により、2017年度には3つの特集号を編集することができました。上述のGDP統計関連の研究成果につきましても、何らかの形で「経済分析」を通じて皆様方にお届けすることができればと思っています。

「経済分析」は創刊59年目となりました。統計関連の研究については最近掲載されていませんが、統計作成と研究のシナジーに向けて、GDP統計や景気動向指数、景気循環に関連した分析・研究の投稿を歓迎いたします。現在、関係学会のご協力を賜り、投稿の呼びかけを行っています。

ところで、今回の統計改革では、経済統計は、より正確な景気動向判断だけでなく、「証拠に基づく政策立案(EBPM)」を支える基礎として位置づけられています。研究所には研修機能があり、昨年12月、内閣府職員を対象にEBPMについての研修を初めて実施いたしました。実際の業務の中で「役立った」と言っていただけるよう、また、他省庁の職員の方々にもお役に立てるよう、専門家の方々のご協力をいただきながら今後改良を加えていきたいと考えています。

以上、最近の取り組みについていくつかご紹介させていただきました。研究所では、このほか、マクロ経済政策の分析、生産性向上・成長力強化へ向けた研究など様々な活動がなされています。こうしたことも含め、皆様方に、研究所をより身近に感じていただけるよう努めて参ります。ご指導、ご鞭撻のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。

平成30年1月

  • 内閣府 経済社会総合研究所
    総括政策研究官 服部 高明

【研究紹介】

医療の質の変化を反映した実質アウトプット・価格の把握手法に関する研究

  • 内閣府 経済社会総合研究所
    行政実務研修員 野口 良平

一昨年12月の経済財政諮問会議において、「統計改革の基本方針」が決定され、既存統計で捕捉できない価格の把握として、医療・介護の質の変化を反映した価格の把握手法について研究することが明記された。

現在、我が国の国民経済計算(JSNA)は、医療・介護について消費者物価指数(CPI)をデフレーターとして用いている。この算出手法をより質の変化を反映させた価格が把握できるように改善出来ないか、その手法の調査・研究が当研究所に課された。すでに欧米を中心とした海外では、この分野で様々な手法が採用・検討されており、これを踏まえ、現在、欧米等各国や、先行研究の手法等を調査し、国内の諸統計との比較、小規模データによる試算および検証を行っている。

今回は医療についての研究をご紹介したい。

国民経済計算では指数を作成する際、比較する財・サービスの価格や数量は同質であることが原則である。そして財・サービスの価格や数量を「同質」にする手法としてstratify(層化する、分類を細分化する)することが考えられる。例えば、ある疾病に対する医療サービスに関して、高度化した医療サービスは従前のものとは異なる分類として扱うことが望ましい。

JSNAでは、1.医療の実質産出額は名目産出額をデフレーターで除して算出している。2.デフレーターはCPI5品目(マッサージ料金、出産入院料、診療代、人間ドック受診料および予防接種料)をもとに算出しているが、このうち大きなウェイトを占めるCPI「診療代」は年齢区分(4区分)、診療種類区分(3区分)、施設区分(2区分)を組み合わせた合計24区分(年齢4区分×診療種類3区分×施設2区分=24区分)ごとに代表的な診療行為を選定し、それぞれの区分で価格指数を算出しており、それぞれの区分ごとに質が一定となるように質調整が行われていると解釈できる。

しかし現在、厚生労働省の社会保険表章用疾病分類表では疾病の分類は119あり、国際疾病分類では疾病の分類は約14,000ある。これらに比して、モデル的ケースの24区分では質調整は限定的と考えられる。

こういった問題意識をもとに、今年度より本研究を開始している。

さて、研究を行う中で、海外で採用または検討されている医療の質を一定(同質)に調整する手法は「調整のためのアプローチ」と「調整の対象」の観点から整理される。調整のためのアプローチは(ア)疾病や疾病・治療に着目した分類を可能な限り細分化し、分類内の医療サービスを可能な限り均質にし、質の変化を分類間の移行で捉えるもの(イ)アの細分化に加えて患者の生存率や満足度などをもとに、医療の質を明示的に統計的に捉えるものの二つに整理されることが分かってきた。

また、質調整の対象はa.産出指標(実質アウトプット)、b.価格指標(デフレーター)の二つが考えられる。aは実質アウトプットに直接質調整を行い、bはデフレーターについて質調整を行う。

これらア、イとa、bを組み合わせた四つの「医療の質の変化を反映した価格の把握手法」について、それぞれ検証を行っていくこととなる。

本研究プロジェクトにおいては今後、この四つの「医療の質の変化を反映した価格の把握手法」について、国民経済計算との親和性や利用可能な統計データを踏まえてそれぞれの長所、短所を把握し、妥当な手法や推計値の検証へ研究を進めていくこととしている。


【経済社会総合研究所からのお知らせ】


【最新の研究発表】

  • マイクロシミュレーションによる所得連動返済型奨学金の財政コストの推計(河越 正明、伊藤 由樹子、高良 真人)を掲載しました。(平成30年1月)

    本稿では、2017年4月に新たに導入された所得連動返還型奨学金制度について、マイクロシミュレーションにより財政コストを試算した。同制度の財政コストは、割引率、女性の就業状況、個人の時系列でみた所得変動の大きさという、3つの要因によって影響されることがわかった。割引現在価値でみた財政コストは、最も大きい場合は卒業時点の平均貸付残高の約4割に達し、総じて定額で返済される奨学金の場合より20%ポイント程度大きくなる。ただし、以下のような場合には、財政コストが抑制される可能性がある。すなわち、(1)割引率として2%より低い率を用いた場合、(2)既婚女性が就業をより継続するようになったり、より高い賃金で働くようになる場合、(3)時系列でみた個人の所得変動が大きくなり、所得分布におけるパーセンタイルが変化する場合、などである。

<報告書の掲載>


【最新のシンポジウム・フォーラム】

<開催案内>

  • 第53回ESRI経済政策フォーラム「GDP統計改革のフロンティア~GDP統計における新たな推計アプローチの開発と新分野の経済活動の計測に向けて~」(平成30年1月22日開催)を掲載しました。(平成29年12月)

【最新の統計】

<SNA統計>

<景気動向指数>平成29年11月速報(平成30年1月11日)

11月のCI(速報値・平成22(2010)年=100)は、先行指数:108.6、一致指数:118.1、遅行指数:118.7となった。

  • 先行指数は、前月と比較して2.1ポイント上昇し、3か月ぶりの上昇となった。3か月後方移動平均は0.47ポイント上昇し、6か月連続の上昇となった。7か月後方移動平均は0.61ポイント上昇し、16か月連続の上昇となった。
  • 一致指数は、前月と比較して1.7ポイント上昇し、2か月連続の上昇となった。3か月後方移動平均は0.17ポイント上昇し、2か月連続の上昇となった。7か月後方移動平均は0.20ポイント上昇し、16か月連続の上昇となった。
  • 遅行指数は、前月と比較して0.2ポイント上昇し、4か月連続の上昇となった。3か月後方移動平均は0.76ポイント上昇し、4か月連続の上昇となった。7か月後方移動平均は0.27ポイント上昇し、12か月連続の上昇となった。

一致指数の基調判断

  • 景気動向指数(CI一致指数)は、改善を示している。

<機械受注統計調査報告>平成29年11月実績(平成30年1月17日)

  • 機械受注総額の動向をみると、2017(平成29)年10月前月比5.6%増の後、11月は同11.8%増の2兆7,411億円となった。
  • 民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の動向をみると、2017(平成29)年10月前月比5.0%増の後、11月は同5.7%増の8,992億円となった。このうち、製造業は同0.2%減の4,206億円、非製造業(除く船舶・電力)は同9.8%増の4,808億円となった。

<消費動向調査>平成29年12月調査(平成30年1月9日)

  • 平成29年12月の消費者態度指数(二人以上の世帯、季節調整値)は、11月の44.9から0.2ポイント低下して44.7となり、4か月ぶりに前月を下回った。消費者態度指数を構成する4項目のうち、「暮らし向き」「雇用環境」及び「耐久消費財の買い時判断」が前月から低下した。
  • 「日頃よく購入する品物」の1年後の価格の予想(二人以上の世帯)は、「低下する」が4.0%(前月差+0.3%)、「変わらない」が12.5%(同-2.0%)、「上昇する」が80.0%(同+1.4%)となった。

【参考】<月例経済報告>平成30年1月(平成30年1月19日)

景気は、緩やかに回復している。

    • 個人消費は、持ち直している。
    • 設備投資は、緩やかに増加している。
    • 輸出は、持ち直している。
    • 生産は、緩やかに増加している。
    • 企業収益は、改善している。企業の業況判断は、改善している。
    • 雇用情勢は、着実に改善している。
    • 消費者物価は、横ばいとなっている。

先行きについては、雇用・所得環境の改善が続くなかで、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、海外経済の不確実性や金融資本市場の変動の影響に留意する必要がある。

<統計調査公表予定一覧>

<統計調査公表予定一覧>
景気動向指数
速報
景気動向指数
改訂状況
機械受注統計
調査
消費動向調査
(全国・月次)
法人企業景気
予測調査(四半期)
平成30年 2月7日
(12月分)
平成30年 1月24日
(11月分)
平成30年 2月15日
(12月分)
平成30年 1月31日
(1月分)
平成30年 3月12日
(1–3月期)
3月7日
(1月分)
2月26日
(12月分)
3月14日
(1月分)
3月1日
(2月分)
6月12日
(4–6月期)
4月6日
(2月分)
3月下旬
(1月分)
4月11日
(2月分)
4月9日
(3月分)
9月12日
(7–9月期)

「企業行動に関するアンケート調査」は例年2月下旬~3月上旬に公表

 (平成28年度調査の公表日: 平成29年2月28日)

国民経済計算(GDP統計)公表予定はこちらから


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