ESRI通信 第114号

平成30年2月20日
内閣府経済社会総合研究所 発行
Cabinet Office, Government of Japan
Economic and Social Research Institute

【精緻化とともに難解化する国民経済計算】

「FISIMの導入以降、国民経済計算(SNA)は難しくなりすぎてついていけなくなった」という話を聞くことがある。そもそも、GDPという言葉は聞いたことがあっても、FISIMについてはその言葉自体が一般には馴染みがないのではないだろうか。

私がSNA統計に携わるようになった当初は、日本のSNA統計は1968SNA(1968年に国連において採択された国際基準)に準拠したものだった。1968SNAは、(一部の例外を除けば)各種基礎データに記録されている明示的な経済取引を勘定体系の形に組み上げるという、比較的分かりやすいものだったように思う。

その後、国際基準は1993SNA、2008SNAへと2度の改定を経て、より抽象的な概念が導入されてきた。冒頭で言及したFISIM(間接的に計測される金融仲介サービス)は、1993SNAから導入された概念である。「間接的に」という言葉が端的に表すように、手数料が徴収される振込サービスなどとは異なり、直接的には料金が発生しない金融仲介サービスの産出額を、抽象的な概念を経由して計測しようというものであり、目に見えないだけに理解が難しいだろう。また、2008SNAでは、固定資産として計上される知的財産の範囲がR&Dなどにまで拡大されたが、R&D関連支出を機械設備の購入と同じ固定資産への投資として計上するということは、イメージしにくいかもしれない。

こうした国際基準の改定は、経済・社会の構造変化と無関係ではない。世界的に経済のサービス化が進展し、金融サービス業中心の産業構造に転換する国も現れる中、金融サービスの的確な把握に対するニーズが高まったことが、FISIM概念の導入の背景にあっただろう。また、経済のグローバル化、情報技術革新等の進展に伴ってグローバルなイノベーション競争が活発になる中、機械設備等の有形資産に対して知的財産の価値が相対的に高まってきており、R&D等を資産として計上するのは必然的な流れであったと考えられる。

このように、経済・社会の変化を反映してSNAは発展し、精緻化されてきたわけだが、いかに統計として精緻化したとしても、それが理解され、活用されなければ意味がない。SNA統計を作成する立場としては、「SNAは難しすぎて分からない」と言われることのないよう、分かりやすく丁寧な説明を心掛けていきたい。

平成30年2月

  • 内閣府 経済社会総合研究所
    国民経済計算部長 二村 秀彦

【研究紹介】

SUT体系への移行に向けた研究

  • 内閣府 経済社会総合研究所
    総務部総務課 課長補佐
    (併任)研究官 梶村 麻衣子

昨年5月19日に策定された「統計改革推進会議最終取りまとめ」において、「産業連関表のSUT体系への移行」が統計改革の主要課題の1つとして明記された。

現在、我が国では、基礎統計から産業連関表を作成し、同表を変換してからSNAを推計している。SUT体系への移行後は、従来の産業連関表経由の間接的な推計ではなく、直接的にGDPを推計することが可能になり、経済構造の実態がより正確に反映されることになる。また、使用するデータが企業側の報告しやすい事業所ベース等の情報となるため、原材料等の投入構造等についてより少ない仮定の下で推計が可能となり、推計精度の向上が期待される。G7では導入済みであり、同体系への移行は国際的潮流に合致する。

SUT体系への移行は、2030年度までの中長期プロジェクトであるが、当面の課題としては、統計委員会の下に設置されている国民経済計算体系的整備部会SUTタスクフォース会合において、2018年度末までにSUTの基本構成の大枠を固めることである。

上記検討に資するよう、当ユニットでは、SUTの基本構成として、部門構成・部門数に関する定量的な検証を行っている。

SUTは行(生産物(商品))×列(産業)で構成されるが、行・列それぞれの部門数はどの程度の規模が望ましいか、部門構成として、どの程度の粒度で生産物(商品)・産業分類を詳細に取る必要があるか、という観点から、データ検証を実施している。

例えば、行(生産物(商品))については、各生産物(商品)の中間消費や最終需要の推計精度を確保するため、機能・用途の類似性に着目した生産物(商品)分類の整備が必要である。また、列(産業)については、生産活動を産業ごとに捉えるSUTにおいては、同一産業に属する生産活動に用いられる技術の同質性が損なわれれば、当該産業の投入係数の不安定性が増すことになりかねないため、生産技術の類似性に配慮した産業分類の整備が欠かせない。

こうした観点を踏まえ、産業連関表やその元となる基礎統計、及びSNAのコモディティ・フロー法の時系列データを活用し、分類ごとの投入や産出構造の違いに関する分析や部門の統廃合・詳細化による影響についてデータ検証を実施し、推計の頑健性の観点から部門数や部門構成に係る検討を行っているところである。

実際には、上記のような統計的・計量的な検討に加え、基礎統計等の実測可能性を踏まえた枠組みを考える必要がある。国民経済計算体系的整備部会SUTタスクフォース会合において、基礎統計の設計・改善等も含めて議論が行われる予定であるが、同会合での検討に資するよう、検証作業を進めてまいりたい。


【経済社会総合研究所からのお知らせ】

  • 消費者マインドアンケート(試行)の3月分の実施

    内閣府経済社会総合研究所景気統計部では、消費者の皆さまの「暮らし向き」や「物価の見通し」について、「だれでも」「自由に」回答できるアンケート調査(試行)を行っております。当面毎月20日を締切として調査を行っています。初めてご回答される方も、2回目以上のご回答の方も大歓迎です。質問の数も少なく、ごく簡単なものですので、ぜひ毎月(1回)ご協力ください。

    (URL:http://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/shouhi/open_chosa/open_chosa.html


【最新の研究発表】

<報告書の掲載>


【最新の統計】

<SNA統計>

<景気動向指数>平成29年12月速報(平成30年2月7日)

12月のCI(速報値・平成22(2010)年=100)は、先行指数:107.9、一致指数:120.7、遅行指数:119.0となった。

  • 先行指数は、前月と比較して0.3ポイント下降し、2か月ぶりの下降となった。3か月後方移動平均は0.47ポイント上昇し、6か月連続の上昇となった。7か月後方移動平均は0.48ポイント上昇し、17か月連続の上昇となった。
  • 一致指数は、前月と比較して2.8ポイント上昇し、3か月連続の上昇となった。3か月後方移動平均は1.50ポイント上昇し、3か月連続の上昇となった。7か月後方移動平均は0.71ポイント上昇し、17か月連続の上昇となった。
  • 遅行指数は、前月と比較して0.2ポイント上昇し、5か月連続の上昇となった。3か月後方移動平均は0.60ポイント上昇し、5か月連続の上昇となった。7か月後方移動平均は0.42ポイント上昇し、13か月連続の上昇となった。

一致指数の基調判断

  • 景気動向指数(CI一致指数)は、改善を示している。

<機械受注統計調査報告>平成29年12月実績および平成30年1~3月見通し(平成30年2月15日)

  • 機械受注総額の動向をみると、2017(平成29)年11月前月比11.8%増の後、12月は同14.9%減の2兆3,323億円となった。
  • 民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の動向をみると、2017(平成29)年11月前月比5.7%増の後、12月は同11.9%減の7,926億円となった。このうち、製造業は同13.3%減の3,648億円、非製造業(除く船舶・電力)は同7.3%減の4,457億円となった。
  • 10~12月をみると、受注総額は前期比3.3%増の7兆5,242億円となった。また、「船舶・電力を除く民需」は同0.1%減の2兆5,427億円、製造業は同4.0%増の1兆2,066億円、非製造業(除く船舶・電力)は同2.0%減の1兆3,642億円となった。
  • 2018(平成30)年1~3月見通しをみると、受注総額は前期比6.0%減の7兆720億円の見通しになっている。また、「船舶・電力を除く民需」は同0.6%増の2兆5,571億円、製造業は同5.7%減の1兆1,374億円、非製造業(除く船舶・電力)は同7.4%増の1兆4,656億円の見通しになっている。
  • 2017(平成29)年実績をみると、受注総額は前年比3.4%増の28兆1,159億円になっている。また、「船舶・電力を除く民需」は同1.1%減の10兆1,431億円、製造業は同4.2%増の4兆4,828億円、非製造業(除く船舶・電力)は同5.1%減の5兆6,817億円になっている。

<消費動向調査>平成30年1月調査(平成30年1月31日)

  • 平成30年1月の消費者態度指数(二人以上の世帯、季節調整値)は、平成29年12月と変わらず44.7となった。消費者態度指数を構成する4項目のうち、「雇用環境」が前月から上昇、それ以外の3項目「暮らし向き」「収入の増え方」及び「耐久消費財の買い時判断」が前月から低下した。
  • 「日頃よく購入する品物」の1年後の価格の予想(二人以上の世帯)は、「低下する」が3.2%(前月差-0.8%)、「変わらない」が11.5%(同-1.0%)、「上昇する」が82.4%(同+2.4%)となった。

【参考】<月例経済報告>平成30年1月(平成30年1月19日)

景気は、緩やかに回復している。

    • 個人消費は、持ち直している。
    • 設備投資は、緩やかに増加している。
    • 輸出は、持ち直している。
    • 生産は、緩やかに増加している。
    • 企業収益は、改善している。企業の業況判断は、改善している。
    • 雇用情勢は、着実に改善している。
    • 消費者物価は、横ばいとなっている。

先行きについては、雇用・所得環境の改善が続くなかで、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、海外経済の不確実性や金融資本市場の変動の影響に留意する必要がある。

<統計調査公表予定一覧>

<統計調査公表予定一覧>
景気動向指数
速報
景気動向指数
改訂状況
機械受注統計
調査
消費動向調査
(全国・月次)
法人企業景気
予測調査(四半期)
平成30年 3月 7日
(1月分)
平成30年 2月26日
(12月分)
平成30年 3月14日
(1月分)
平成30年 3月 1日
(2月分)
平成30年 3月12日
(1–3月期)
4月 6日
(2月分)
3月20日
(1月分)
4月11日
(2月分)
4月 9日
(3月分)
6月12日
(4–6月期)
5月 9日
(3月分)
4月下旬
(2月分)
5月17日
(3月分)
5月 2日
(4月分)
9月12日
(7–9月期)
6月 7日
(4月分)
5月下旬
(3月分)
6月11日
(4月分)
5月30日
(5月分)

「企業行動に関するアンケート調査」は例年2月下旬~3月上旬に公表

 (平成28年度調査の公表日: 平成29年2月28日)

国民経済計算(GDP統計)公表予定はこちらから


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