ESRI通信 第116号

平成30年4月23日
内閣府経済社会総合研究所 発行
Cabinet Office, Government of Japan
Economic and Social Research Institute

【景気統計の作成・公表を通じて、データに基づく景気把握に貢献】

本年1月に経済社会総合研究所景気統計部長に着任しました松多です。よろしくお願いいたします。当部は5つの景気統計の作成・公表を担当している部署ですので、以下では、担当統計の紹介と、業務を進めるにあたり自分が心がけたい点の紹介をしたいと思います。

当部で作成・公表している景気統計を、どういう視点から景気を捉えているかで分類すると、「景気」そのものを俯瞰的な視点から計測しようとする「景気動向指数」(月次統計)、企業の視点で景気をとらえる「機械受注統計調査」(月次統計)、「法人企業景気予測調査」(四半期統計、財務省と共管)、「企業行動アンケート調査」(年次統計)、消費者の視点で景気をとらえる「消費動向調査」(月次)があります。もちろんこれらだけで全体像は分かりませんが、日本の景気を包括的・多角的に把握するための材料を提供しています。

公表された統計情報は、経済関連情報として新聞紙・テレビ上やネット上で報道されたり、エコノミストによって分析がされて顧客や一般の方々に情報提供されたり、政府や企業の景気判断に利用されたりすることによって活用されています。統計情報公表後の情報の扱われ方をみると、日本経済の現状や見通しを知りたい方にとって有益な情報を提供していて、私たちが公表している統計へのニーズは高いと感じています。

ニーズの高い統計を公表し続けるために何をすれば良いか。これを常に考えつつ業務に当たりたいと考えています。統計利用のメリットを増やしつつ統計作成の効率性を向上するという取組を、中長期的な観点から、新しい技術を活用しながら、エビデンスに基づき不断に行うべきではないかと思います。関係する主体毎に考えると、利用者の得るメリット増加、作成協力者(報告者)の負担するコスト減少、作成者の効率性向上1の視点が重要だと思います。

紙幅の都合で個々について詳細に述べることはできませんが、利用者の得るメリット増加に関連しては、昨年秋の日本経済学会・内閣府共催の特別セッションにおいて、当研究所の特別研究員として、経済・財政一体改革について報告した際、経済学者が日本経済についてより一層研究するためにも、行政によるデータ提供の拡充を求める意見がありました。ニーズに応じて、研究に役立てていただけるようなデータ提供に努めていきたいと考えています。

景気統計の適切な作成・公表を通じて、データに基づく景気把握に貢献していきたいと考えています。

平成30年4月

  • 内閣府 経済社会総合研究所
    景気統計部長
    松多 秀一

1効率性重視といっても、作成・公表を間違いなく行うことが大前提です。このために、作成する統計に関する理解を深め、内容の正確性について十分な確認を行うという地道な努力を続けていきます。


【研究紹介】

「南海トラフ巨大地震による想定津波高と市区町村間人口移動の実証分析」について

  • (文責)内閣府 経済社会総合研究所
    総括政策研究官 服部 高明

2018年3月、ワーキング・ペーパー「南海トラフ巨大地震による想定津波高と市区町村間人口移動の実証分析」が公表されました。

【研究者】(敬称略)(平成30年3月時点)

  • 直井道生(慶應義塾大学経済学部)、佐藤慶一(専修大学ネットワーク情報学部)
  • 永松伸吾(関西大学社会安全学部)、松浦広明(松蔭大学)

【紹介】

2016年度、17年度の2年間にわたり、2012年に8月に公表された南海トラフ巨大地震による津波高の想定が、市区町村の人口移動に与えた影響について研究がなされた。

2016年度の研究では、公表された津波高は社会増減に対して負の影響があることが確認された。

そして、2017年度は、当該公表が市区町村間の人口移動に与えた影響(津波想定地域等で津波による被災リスクが小さい地域が転出先として選択されたのか等)について分析がなされた。分析に当たっては、転出元の市区町村と転出先の市区町村の組み合わせごとに移動人口を捕捉したパネルデータが用いられている。

その結果、想定津波高の水準や引き上げは、当該自治体からの転出を増加させると同時に、転入を抑制する効果を持つことが改めて明らかになった。この転出増や転入減は、少なくとも短期的には、人口規模の大きな社会減につながるものではない。ただし、主として若年層で観察されており、より長期的には人口の自然増減を通じて自治体の人口規模に影響を与える可能性がある。

市区町村間の人口移動については、今回の公表によって津波想定地域等において転出先自治体の選択が大きく変わっているとはいえない。転出先の平均津波高は2010年と比べて2015年では低下する傾向がみられたが、変化は非常に小さい。これに関しては、転出先の市区町村内で相対的に被災リスクの低い立地が選択されている可能性は排除できない。また、同一市区町村内においてより被災リスクが低い地点への移動が生じている可能性がある点にも留意する必要がある。一方、沿岸自治体への転出に関しては、より明確に減少する傾向がみられる。この傾向は、主として20~39歳および40~59歳の転出について観察される。

また、東海地震に係る地震防災対策強化地域への指定状況によって影響が異なるかを検討したところ、従来から対策地域に指定されていた自治体では、2012年の想定の公表が転出行動におよぼす影響は小さくなるという結果が得られた。このことは、自治体による防災対策事業の優先的な実施や、住民の地震防災意識の向上といった要因が、転出率に対する影響を小さくした可能性を示唆している。


【経済社会総合研究所からのお知らせ】


【最新の研究発表】

  • 経済分析第197号(ジャーナル)を掲載しました。(平成30年3月)

    (論文)

    中国輸出企業の特徴(伊藤恵子、乾友彦、権赫旭、戸堂康之)

    日本人の寿命が延びた経済価値はどれだけか?—経済成長の成果の一試算—(河越正明)

    ソーシャル・キャピタルが地方創生に与える影響—市区町村GISデータによる空間計量経済分析—(田中勝也、中野桂、道上浩也)

    夫の失業は出産を抑制するのか(佐藤一磨)

    結婚が家計の労働供給に与える影響(湯川志保)

    (資料)

    ESRI国際コンファレンス「世界的な低成長と政策対応」(概要)ESRI International Conference 2017 “The Global Decline in Growth Rate and Possible Policy Responses”(編集 経済社会総合研究所)

    「日本経済と経済政策に係る国民一般及び専門家の認識と背景に関する調査」について—調査の概要と簡易集計結果の紹介—(梅田政徳、川本琢磨、堀雅博)

  • 日本の高齢世帯の貯蓄取り崩し行動について:ミクロデータによる分析(村田啓子)を掲載しました。(平成30年3月)

    本稿では、日本の高齢者の貯蓄取り崩し行動についてミクロデータを用いた分析を行った。「家計調査」によると、高齢者世帯の平均貯蓄率は負であるが、年齢別にみるとその形状にはU字型が見られ世帯主が高齢になるにつれゼロに近づく。金融資産取り崩しのスピードは単純なライフサイクル仮説と比べ緩慢であり、実物資産を考慮しても同様である。高齢者世帯の資産取り崩しが緩慢な要因について考察するため、「JSTAR(くらしと健康の調査)」によりどのような高齢者世帯で貯蓄率が高いか(及び資産取り崩しが緩慢か)をみると、遺産動機の有無により差がみられる可能性がある一方で、予備的貯蓄動機については、遺産を残す予定のない高齢者世帯において差がみられる可能性が示唆された。

<報告書の掲載>


【最新の統計】

<SNA統計>

<景気動向指数>平成30年2月速報(平成30年4月6日)

2月のCI(速報値・平成22(2010)年=100)は、先行指数:105.8、一致指数:115.6、遅行指数:119.8となった。

  • 先行指数は、前月と比較して0.2ポイント上昇し、3か月ぶりの上昇となった。3か月後方移動平均は0.56ポイント下降し、2か月連続の下降となった。7か月後方移動平均は0.08ポイント上昇し、19か月連続の上昇となった。
  • 一致指数は、前月と比較して0.7ポイント上昇し、2か月ぶりの上昇となった。3か月後方移動平均は0.70ポイント下降し、2か月連続の下降となった。7か月後方移動平均は0.02ポイント上昇し、2か月ぶりの上昇となった。
  • 遅行指数は、前月と比較して0.4ポイント上昇し、7か月連続の上昇となった。3か月後方移動平均は0.37ポイント上昇し、6か月連続の上昇となった。7か月後方移動平均は0.56ポイント上昇し、15か月連続の上昇となった。

一致指数の基調判断

  • 景気動向指数(CI一致指数)は、改善を示している。

<機械受注統計調査報告>平成30年2月実績(平成30年4月11日)

  • 機械受注総額の動向をみると、2018(平成30)年1月前月比4.5%増の後、2月は同2.3%減の2兆4,188億円となった。
  • 民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の動向をみると、2018(平成30)年1月前月比8.2%増の後、2月は同2.1%増の8,910億円となった。このうち、製造業は同8.0%増の4,423億円、非製造業(除く船舶・電力)は同0.0%増の4,657億円となった。

<消費動向調査>平成30年3月調査(平成30年4月9日)

  • 平成30年3月の消費者態度指数(二人以上の世帯、季節調整値)は、2月と変わらず44.3となった。消費者態度指数を構成する4項目のうち、「収入の増え方」及び「暮らし向き」が前月から低下、「雇用環境」及び「耐久消費財の買い時判断」が前月から上昇した。
  • 「日頃よく購入する品物」の1年後の価格の予想(二人以上の世帯)は、「低下する」が3.6%(前月差-0.4%)、「変わらない」が12.1%(同+0.3%)、「上昇する」が79.8%(同-1.5%)となった。
  • なお、3月調査では、主要耐久消費財の保有・普及状況及び主要耐久消費財の買替え状況についても調査(年に一度の調査)を行った。

【参考】<月例経済報告>平成30年4月(平成30年4月16日)

景気は、緩やかに回復している。

    • 個人消費は、持ち直している。
    • 設備投資は、緩やかに増加している。
    • 輸出は、持ち直している。
    • 生産は、緩やかに増加している。
    • 企業収益は、改善している。企業の業況判断は、改善している。
    • 雇用情勢は、着実に改善している。
    • 消費者物価は、このところ緩やかに上昇している。

先行きについては、雇用・所得環境の改善が続くなかで、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、海外経済の不確実性や金融資本市場の変動の影響に留意する必要がある。

<統計調査公表予定一覧>

<統計調査公表予定一覧>
景気動向指数
速報
景気動向指数
改訂状況
機械受注統計
調査
消費動向調査
(全国・月次)
法人企業景気
予測調査(四半期)
平成30年 5月 9日
(3月分)
平成30年 4月24日
(2月分)
平成30年 5月17日
(3月分)
平成30年 5月 2日
(4月分)
平成30年 6月12日
(4–6月期)
6月 7日
(4月分)
5月24日
(3月分)
6月11日
(4月分)
5月30日
(5月分)
9月12日
(7–9月期)
7月 6日
(5月分)
6月25日
(4月分)
7月11日
(5月分)
6月29日
(6月分)
12月11日
(10–12月期)
8月 7日
(6月分)
7月24日
(5月分)
8月 9日
(6月分)
7月31日
(7月分)

「企業行動に関するアンケート調査」は例年2月下旬~3月上旬に公表

 (平成29年度調査の公表日: 平成30年3月2日)

国民経済計算(GDP統計)公表予定はこちらから


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