ESRI通信 第120号

平成30年8月28日
内閣府経済社会総合研究所 発行
Cabinet Office, Government of Japan
Economic and Social Research Institute

【事業活動におけるAIの利用に関する実態把握に向けて】

本年4月、2年ぶりに経済社会総合研究所に戻ってまいりました。当研究所では、AIについて様々な側面から研究に取り組んでいるところですが、今回私が担当する研究テーマの一つに、「デジタルエコノミーと生産性」があります。これは、無形資産の一つとして注目されている組織のあり方とAI(人工知能)の利用が生産性にどのような影響を与えるかについて、実証的に研究を行うものです。

最近、AIに関する記事はほぼ毎日目に留まります。人間のような万能型のAIが実用化されるのはいつか、現在の職業の何割がAIにとって代わられるかといったAIの将来に関するトピックスも報じられていますが、このところ、事業活動において実際にAIが導入される事例についての記事が増えているように思われます。我が国でも、製造ラインの自動化、不良品や異物の検知、需要予測による商品の仕入・販売、コールセンターにおけるチャットボットを利用した質問応答、インフラ等の補修時期の予測、医療分野における診断支援、スタッフのシフト管理など、幅広い業種、業務分野でAIが利用されるようになっており、それぞれの業務の効率化や質・精度の向上への貢献が期待されています。

私たちの研究の主な関心事項は、こうしたAIの利用が実際にどの程度生産性を向上させるか、その影響は組織のあり方によって違いが見られるかということですが、まずは実態を正確に把握することが重要と考えております。AIはどの程度の事業所に利用されているのか、利用事業所には業種、規模、組織等の側面でどのような特徴があるのか、利用されていない事業所についてはその理由は何か等を把握する必要があります。また、AIにより予測、分析を行うには、その前提としてデータが存在していなければなりません。このため、現在AIが利用されているか否かにかかわらず、そもそも各事業所の業務においてどの程度データが蓄積、利用されているかも調査する必要があると考えております。

当研究所では、平成28年度に製造業等の事業所を対象として「組織マネジメントに関する調査」を実施しました。現在、この調査と他の調査の統計データと組み合わせて、組織のあり方と生産性の関係について分析しているところです。今年度は、この「組織マネジメントに関する調査」に、上述のAIやデータの利用に関する項目を追加した調査(非製造業の一部業種対象)を新たに実施する予定です。そして、新たな調査の実施で得られる統計データ等を用いて、AIの利用、組織のあり方と生産性との関係について分析してまいりたいと考えております。

平成30年8月

  • 内閣府 経済社会総合研究所
    総括政策研究官 丸山 雅章

【研究紹介】

就業者の労働時間の参考系列公表について

  • 内閣府 経済社会総合研究所
    国民経済計算部
    政策調査員 由井 謙二

我が国の国民経済計算(JSNA)においては、経済活動別の労働投入量として、これまでは年間の「就業者数」・「雇用者数」及び年間の「雇用者の労働時間(1人当たり平均)」を公表していたが、2018年3月に、自営業主・家族従業者(無給)(以下、自営業主等という。)を含む年間の「就業者の労働時間」を参考系列として公表した。以下では、JSNAにおける労働投入の概念を整理した上で、就業者の労働時間の推計方法及び推計結果を紹介する。また、この推計結果を用いて労働生産性を試算し、経年の動きを概観したい。推計方法の詳細については、8月に公表された「季刊国民経済計算No.163」にてまとめられているので、そちらも併せて参照されたい。

JSNAの労働投入の概念における注意すべき特徴としては、労働者数を「人」の数ではなく「仕事」の数で数えている点が挙げられる(以下、前者の数え方を「人ベース」、後者の数え方を「仕事ベース」と呼ぶ)。例えば、世帯を調査対象とした「国勢調査」(総務省)では、1人の仕事を主なもの1つに限っており、仮に副業を有していても二重カウントせずにあくまでも1人と数え、得られる情報は人ベースとなる。一方、JSNAでは、2つ以上の仕事に従事し、かつ事業所も異なる場合は、それぞれ1人と数える。事業所を調査対象とする「毎月勤労統計調査」(厚生労働省)では、副業により異なる事業所で働いている場合、それぞれの事業所で1人と数えるため、得られる情報は仕事ベースとなる。

就業者のうち雇用者の労働時間は、事業所調査の「毎月勤労統計調査」より仕事ベースで推計している。一方で、就業者のうち自営業主等の労働時間は、基礎統計の制約から仕事ベースでの推計が困難となっている。具体的には、「毎月勤労統計調査」は雇用者のみを対象としており、世帯を調査対象としている「労働力調査」(総務省)は、自営業主等の労働時間を把握できるが、各就業者の副業の労働時間が本業の労働時間と合算されるため、仕事ベースの情報を得られない。

そのため、JSNAでは、仕事ベースの雇用者の労働時間に、「就業構造基本調査」(総務省)における自営業主等と雇用者の「労働時間比率」を乗じることで、仕事ベースの自営業主等の労働時間を算出している。なお、「就業構造基本調査」は世帯調査ではあるが、「労働力調査」とは異なり、他産業での副業分の労働時間が本業の労働時間に含まれないため、「労働時間比率」の算出に用いている。最後に、こうして求めた自営業主等の労働時間と雇用者の労働時間をそれぞれの就業者数をウェイトとして、就業者の労働時間を算出する。

推計式

推計の結果、2005~2016年平均の雇用者の年間労働時間が1,783時間に対して、就業者が1,781時間となった。また、一国全体の労働生産性(2011年=100)について、分子を実質GDPとし、分母の労働投入量を雇用者ベースの総労働時間(雇用者数×雇用者の労働時間)で見たものと、就業者ベースの総労働時間(就業者数×就業者の労働時間)で見たものを比較すると、2011年以降において、就業者ベースの方が、自営業主等の人数の減少傾向を反映して、雇用者ベースを上回る結果となった。

国民経済計算(SNA)の国際基準(1993SNA、2008SNA)では、労働生産性を求めるための労働投入量として、労働者数だけでは精緻であるとは言えず、労働時間も考慮した総労働時間が望ましいとしている。JSNAの「就業者数」に対応する「就業者の労働時間」の推計・公表により、一国全体及び経済活動別の「総労働時間(就業者数×就業者の労働時間)」を把握できるようになり、JSNAと生産性分析との親和性の向上に寄与すると考えられる。

一国全体の労働生産性(実質GDP/総労働時間)のグラフ


【経済社会総合研究所からのお知らせ】

  • 消費者マインドアンケート(試行)の9月分の実施

    内閣府経済社会総合研究所景気統計部では、消費者の皆さまの「暮らし向き」や「物価の見通し」について、「だれでも」「自由に」回答できるアンケート調査(試行)を行っております。当面毎月20日を締切として調査を行っています。初めてご回答される方も、2回目以上のご回答の方も大歓迎です。質問の数も少なく、ごく簡単なものですので、ぜひ毎月(1回)ご協力ください。

    (URL:http://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/shouhi/open_chosa/open_chosa.html


【最新の研究発表】

  • 遺産相続が個人の労働供給に与える効果:日本のマイクロデータによる実証分析(新関剛史、堀雅博)を掲載しました。(平成30年7月)

    本稿では、家計資産の外生的変化としての遺産相続が個々の労働供給に与える資産効果を検証した。26–51歳の日本のマイクロデータを用いた結果、(1)男性の就労確率は遺産受取に反応しないが、女性の就労確率は低下する、(2)ほとんどの回答者にとって、遺産の相続は予期せぬものと思われることがわかった。また、回答者の配偶者の情報を用いて、家計を単一の意思決定主体とみなす単一世帯モデル(Unitary model)の検証を行った。その結果、家庭内で誰が遺産を受け取ったかは、個々の世帯員による労働供給に重要な影響を与えることが示唆された。これは単一世帯モデルとは非整合的な結果である。

<報告書の掲載>


【最新のシンポジウム・フォーラム】

<概要、資料の掲載>


【最新の統計】

<SNA統計>

<景気動向指数>平成30年6月速報(平成30年8月7日)

6月のCI(速報値・平成22(2010)年=100)は、先行指数:105.2、一致指数:116.3、遅行指数:115.6となった。

  • 先行指数は、前月と比較して1.7ポイント下降し、3か月ぶりの下降となった。3か月後方移動平均は0.23ポイント上昇し、3か月連続の上昇となった。7か月後方移動平均は0.31ポイント下降し、2か月ぶりの下降となった。
  • 一致指数は、前月と比較して0.5ポイント下降し、2か月連続の下降となった。3か月後方移動平均は0.10ポイント上昇し、3か月連続の上昇となった。7か月後方移動平均は0.16ポイント下降し、3か月ぶりの下降となった。
  • 遅行指数は、前月と比較して2.3ポイント下降し、2か月ぶりの下降となった。3か月後方移動平均は0.84ポイント下降し、3か月連続の下降となった。7か月後方移動平均は0.30ポイント下降し、19か月ぶりの下降となった。

一致指数の基調判断

  • 景気動向指数(CI一致指数)は、改善を示している。

平成30年6月改訂(平成30年8月23日)

  • 6月のCI(改訂値・平成22年=100)は、先行指数:104.7、一致指数:116.4、遅行指数:116.9となった。

一致指数の基調判断

  • 景気動向指数(CI一致指数)は、改善を示している。

<機械受注統計調査報告>平成30年6月実績および平成30年7~9月見通し(平成30年8月9日)

  • 機械受注総額の動向をみると、2018(平成30)年5月前月比3.2%増の後、6月は同14.4%減の2兆2,139億円となった。
  • 民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の動向をみると、2018(平成30)年5月前月比3.7%減の後、6月は同8.8%減の8,276億円となった。このうち、製造業は同15.9%減の3,818億円、非製造業(除く船舶・電力)は同7.0%減の4,454億円となった。
  • 4~6月をみると、受注総額は前期比2.6%増の7兆3,094億円となった。また、「船舶・電力を除く民需」は同2.2%増の2兆6,786億円、製造業は同5.5%増の1兆2,835億円、非製造業(除く船舶・電力)は同0.4%減の1兆4,019億円となった。
  • 2018(平成30)年7~9月見通しをみると、受注総額は前期比2.8%増の7兆5,129億円の見通しになっている。また、「船舶・電力を除く民需」は同0.3%減の2兆6,714億円、製造業は同5.0%増の1兆3,477億円、非製造業(除く船舶・電力)は同3.7%減の1兆3,503億円の見通しになっている。

<消費動向調査>平成30年7月調査(平成30年7月31日)

  • 平成30年7月の消費者態度指数(二人以上の世帯、季節調整値)は、6月の43.7から0.2ポイント低下して43.5となり、2か月連続で前月を下回った。消費者態度指数を構成する4項目のうち、「収入の増え方」が前月から上昇、それ以外の3項目「耐久消費財の買い時判断」、「暮らし向き」及び「雇用環境」が前月から低下した。
  • 「日頃よく購入する品物」の1年後の価格の予想(二人以上の世帯)は、「低下する」が3.5%(前月差 +0.2%)、「変わらない」が12.5%(同 -0.1%)、「上昇する」が81.5%(同 -0.2%)となった。

【参考】<月例経済報告>平成30年7月(平成30年7月19日)

景気は、緩やかに回復している。

    • 個人消費は、持ち直している。
    • 設備投資は、緩やかに増加している。
    • 輸出は、持ち直している。
    • 生産は、緩やかに増加している。
    • 企業収益は、改善している。企業の業況判断は、おおむね横ばいとなっている。
    • 雇用情勢は、着実に改善している。
    • 消費者物価は、このところ緩やかに上昇している。

先行きについては、雇用・所得環境の改善が続くなかで、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、通商問題の動向が世界経済に与える影響や、海外経済の不確実性、金融資本市場の変動の影響に留意する必要がある。また、平成30年7月豪雨の経済に与える影響に十分留意する必要がある。

<統計調査公表予定一覧>

<統計調査公表予定一覧>
景気動向指数
速報
景気動向指数
改訂状況
機械受注統計
調査
消費動向調査
(全国・月次)
法人企業景気
予測調査(四半期)
平成30年 9月 7日
(7月分)
平成30年 8月23日
(6月分)
平成30年 9月13日
(7月分)
平成30年 8月29日
(8月分)
平成30年 9月12日
(7–9月期)
10月 5日
(8月分)
9月25日
(7月分)
10月10日
(8月分)
10月 2日
(9月分)
12月11日
(10–12月期)
11月 7日
(9月分)
10月24日
(8月分)
11月 8日
(9月分)
10月31日
(10月分)
平成31年 3月12日
(1–3月期)
12月 7日
(10月分)
11月26日
(9月分)
12月12日
(10月分)
11月30日
(11月分)
 

「企業行動に関するアンケート調査」は例年2月下旬~3月上旬に公表

 (平成29年度調査の公表日: 平成30年3月2日)

国民経済計算(GDP統計)公表予定はこちらから


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