経済活性化戦略に関する国際フォーラム
動け!日本~競争力強化に向けて(概要)

経済社会総合研究所

平成14年8月

本フォーラムの概要について、事務局の責任により以下のとおりとりまとめましたので、ご参照下さい(事後修正の可能性あり)。また、議事録についても、近日中にホームページ上にて公表する予定でおりますので、議論の全体の内容につきましては、そちらをご参照頂ければ幸いです。

パネルディスカッション
(開催日時)平成14年7月15日(水)13:00~16:00
(パネリスト)リチャード・レスターマサチューセッツ工科大学教授(基調講演)
小宮山 宏東京大学大学院工学系研究科教授
竹内 弘高一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授(基調講演)
吉川  洋東京大学大学院経済学研究科教授、
経済財政諮問会議議員
浜田 宏一経済社会総合研究所所長
(モデレータ)法專 充男経済社会総合研究所総務部長

冒頭、リチャード・レスター教授、竹内弘高教授より基調講演。次に、パネリストコメントとして、小宮山宏教授より「動け!日本」プロジェクト別ウィンドウで開きます。の説明。その後パネルディスカッション。

1.基調講演(リチャード・レスター マサチューセッツ工科大学教授)別ウィンドウで開きます。(PDF形式 165 KB)

  • 今までは米国経済が強かったので、日本の経済問題を議論する際、米国のモデルを使いなさいと言うことができた。しかしこの2年、1990年代の経済的成功を実現した米国モデルの土台が揺さぶられている。
  • ほんの2年前まで、情報技術、ITは最も儲かる事業だった。インターネットは産業革命以来の革命とも言われていた。IT関連投資は一番投資効率が高いとされ、米国の民間投資の半分がIT関連投資へと流入していた。しかしながら、多くのいわゆる「ドットコム企業」が倒産している今日、ITの経済的重要性についての主張の多くが、大袈裟なものであったことが示されてきている。
  • 規制緩和の役割を見ると、1970年代から続く運輸、銀行、航空、通信、エネルギー分野における規制緩和の流れが、1990年代のイノベーションの土台となったことは間違いない。しかし、カルフォルニアにおける電力不足にみられるように、実際に規制緩和を行うことの難しさは過小評価されており、理論と現実の間にギャップがある。
  • 透明性の高いコーポレートガバナンスや会計基準等を有する米国型資本市場についても、これまでは米国の最も強力な武器と言われてきた。しかし、エンロンやワールドコムの不祥事は、米国の資本主義制度への信頼を揺るがしている。これは、30年代以来の危機である。
  • こうした状況から、次のような疑問が発生するだろう。日本を含めて、米国モデルを踏襲しろと言われてきた国々は、今後どうすればいいのだろうか。そもそも国家は、他の国から学ぶことはできるのか。自分の考えでは、日本、米国とも他の国から学ぶことはできる。米国産業界も1980年代に自分たちの弱点を克服するために、日本企業から学んだ。そのプロセスで、1989年にまとめた「Made in America」は、日本のリーディングカンパニーの事例研究がなされていたこともあり、米国経営者の注目を浴びた。他国が行っていることを観察する真の価値は、他国の行動を真似るのではなく、他国の独特の強みについて理解を深めることである。
  • それでは、IT企業の倒産や不祥事が続く現在の米国から、1990年代の米国の繁栄をどう解釈するべきだろうか。もちろんすべてが蜃気楼ではない。1990年代の米国経済の成功が誇張されているのと同様、今日、その脆弱性も誇張されている。
  • そこで、ここでは生産性に関する経験について言及したい。生産性とは効率性とイノベーションからなる。生産性はイコール効率性と解釈されがちであるが、全ての企業が投入量でみた効率化を図れば、いずれ、全体としてマイナスの影響が生じる。需要の伸びが生産性の上昇率を上回らなければ、雇用や経済規模は縮小する。今日、日本ではこのような状況が生じている。しかしながら、長期的にみると、財やサービスへの需要の伸びは、生産性の伸びを上回ってきた。20世紀の間、米国の生産性は10倍上昇したが、同時に雇用も10倍増加した。
  • 別の言い方をすれば、国家レベルで強固かつ持続的な生産性の上昇を達成するためには、企業レベルにおいて、効率性を追求すると同時に、コンスタントに新製品を産み出し、その市場を開拓していく必要がある。
  • 米国では、70年から95年までの生産性の伸びは非常に低レベルだった。1990年代半ばまでの米国経済の成長は、とても生産性上昇主導とはいい難かった。1996年以降、生産性は年率2.5%で上昇している。その要因は新技術、特にコンピューター及び通信技術の発達と言われているが、実際はリチャード・ソロー氏が言ったように、「コンピューターはあらゆるところに見られるのに、生産性の統計には表れない」のではないか。これは、後にソローのパラドックスと呼ばれるほど有名になった。
  • グリーンスパン氏は労働生産性は技術進歩により上昇すると言っている。しかし、経済学者の間では、ITの生産性上昇への寄与度についてコンセンサスがない。マッキンゼー社によるケーススタディーによれば、生産性の上昇には、ITのみならず様々な要因が考えられる。産業によっては、競争圧力や組織改革こそが生産性上昇に寄与していると考えられる。他方、商業銀行やホテルなど多額のIT投資を実施してきた産業において、生産性上昇が顕著にみられない場合がある。

    いずれにせよ、生産性の上昇がみられた米国の教訓から、日本が何を学べるかを3点述べたい。

  • 第一に、先進国経済における製造業の重要性である。製造業、特に輸出産業は日本経済の強みであった。しかし、将来的には経済のサービス化の進展により、製造業の役割が低下するのではないか。中国との競争にどう対応するかという懸念もある。
  • 米国で製造業の雇用は1950年来安定しており、今だ大きな貢献をしている。生産性の上昇から、10年で生産額は50%上昇した。さらに、消費者の観点から、経済における製造業の役割をみてみたい。一般に、人々は豊かになると、消費の中心は財からサービスに移ると言われている。しかしながら、米国での経験では、確かに個人消費に占めるサービスの比率は増加してきたが、このところ安定しており、逆に、1990年代に入って、耐久消費財の占める割合は増加している。
  • データからは読めないが、現在は製造業とサービス業の区別が崩れつつある。現在の消費者は、例えば携帯電話など、有形のモノと無形のサービスを組み合わせた商品を求めている。製造業は依然として重要であり、サービス的要素を加えることにより、空洞化を防ぐことができるだろう。
  • 第二に、IT革命のどの段階に位置し、IT技術から何が期待できるかという点である。1990年代の米国の技術革新は、一時的なものか否か。グリーンスパン氏は楽観的であり、ノースウエスタン大学のゴードン教授は、人間の能力と時間には限界があると悲観的である。自分は、悲観的な意見も考慮に入れたいが、IT革命はまだ初期の段階にあり、今後も進展していくものと考えている。これを生産性向上につなげていくためには、技術的な問題のみならず、組織、政治、人間関係に絡んだ問題を克服しなければならない。そのためには、ものの見方や考え方を改める必要がある。
  • 第三に、イノベーションのプロセスのあり方である。科学的な新発見や工学的なアイデアの商業化は、例えば、シリコンバレーやボストンなど、地域的に集積化する傾向にある。逆説的に言えば、グローバル化の時代であるからこそ、イノベーションにおける物理的な近接性は、より重要性を高めている。
  • イノベーションに伴うコストやリスクを低下させるため、大学や研究所などの外部リソースの技術的知見を活用する必要性が高まっている。企業は競争力を維持するために、地域のイノベーション・システムに積極的に参加しなければならない。誰もがすばやく情報にアクセスできるからこそ、迅速な商品化において、立地条件が重要度を増してくる。政府は、経済の競争力強化のために、地域集積のための環境整備を行い、これを維持する必要がある。イノベーション促進策の主体は、世界的に、国から地域に移行している。ただし、日本では中央政府の役割が強いので、イノベーション促進を地域主導とすることは難しいかもしれない。
  • そのための政策目標として、地域における大学の役割を高めることが挙げられる。地域の大学から企業への技術移転促進策が数多く実施されてきた。大学では、従来の教育、研究に加え、経済成長の促進が、第三の使命となっている。
  • MITのIndustrial Performance Center(IPC)は、IPCローカル・イノベーション・システム・プロジェクトを立ち上げた。本プロジェクトは、イノベーションや産業パフォーマンスの観点から大学と産業の役割を評価しようというものである。本プロジェクトにおけるこれまでの研究成果を紹介したい。
  • 特許は産学連携のチャネルの一つに過ぎないことを認識すべきである。例えば、MITは米国の大学では特許取得数が多いが、それでも多い年で年間150件である。特許による収入は2000万ドルだが、研究予算の3%に過ぎない。他のチャネル、例えばコンサルティング、サバティカル、大学主催の研究会、意見交換、インキュベーター機能、ビジネスサポート等があり、特に学生の就職が重要な連携の手段となる。
  • 産学連携の良い関係を築くためには、双方向からの知識の交換が必要であり、大学も産業から知識を吸収し、分析することが重要である。
  • 大学と企業は全く違うという認識が必要である。連携は必要だが、明確な境界線をつくって、自分達がどちらにいるのか忘れてはいけない。
  • 産学連携において双方の中間で調整を行う組織が必要だが、これをうまく運用しなければかえって連携の妨げになる。
  • 地元経済における大学の役割を考えると、単に技術移転の手段ではなく、リスク資本、中小企業、大企業、法律・会計サービス等がすべて関わってくる一つのシステムとしてとらえることが重要である。

2.基調講演(竹内弘高  一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授)別ウィンドウで開きます。(PDF形式 6 KB)

  • International Institute of Management Development(IMD)による、国別の競争力ランキングをみると30位に日本が位置付けられており、サッカーの国際ランキングと同様、韓国に抜かれている。これをミクロでみると、企業関連の順位は低くなく、政府関連の競争力が日本の足を引っ張っている。因みに、World Economic Forum(WEF)による企業の国際競争力ランキング(2001年)では、日本企業は8位であり、「企業によるR&D投資」、「国際ブランド」、「企業の独創力」では高い順位を占めている。
  • 特許取得数を比較すると、2001年の米国における取得数トップ10社のうち7社は日本企業が占めている。特許取得数は、米国全体で年間15万件あり、そのうち日本企業が全体の1/5の3万3千件を取得している。最近中国の脅威論があるが、中国はどの程度か。レスター教授によるとMITの特許取得数は年間150件であるが、中国企業はこれと同程度の220件である。中国脅威論は、生産面では理解できるが、イノベーションについては本当に強いのかどうか見直しをせまるデータである。それでは、日本は何が問題なのか。
  • 競争にはオペレーション効率(Operational Effectiveness:OE)と戦略的ポジショニング(Strategic Positioning:SP)という2つの要素があり、日本は、OEではうまくいっているが、SPでは失敗している。
  • 日本型政府モデルは、失敗の源泉であるが、成功の源泉ではない。競争の効果を信じておらず、1960年以前はともかく、それ以降、競争が効果を発揮するのを抑圧してきた面がある。
  • 日本型企業モデルは、OEについて世界のグローバルスタンダードを作ったともいえ、「カンバン」「カイゼン」は世界共通語となるなど、間違いではなかったが、不完全である。
  • 1951年にデミング賞が創設され、Total Quality Control(TQC)からTotal Quality Management(TQM)へとつながった。
  • Superior Sustainable Profitability(SSP)、すなわち、他社より卓越し、持続的な利益をあげることが重要である。その際、他社といかに違うことをするかという発想が必要となる。日本企業は横並びを意識して一つの企業が多くの分野で競争しがちであるが、実際は何をやらないかを決めることが重要である。例えば、日本の半導体業界は、大手6社が全ての製品部門である17分野でそれぞれ競争を行っているが、米国のインテル社やモトローラ社は異なる3分野にしか参入していない。
  • デミング賞設立から50年目という節目の年である昨年、「日本の競争戦略」の共著者であるマイケル・ポーター氏に因んで、「ポーター賞」を設立した。受賞基準は、日本企業であること、SSPの水準が高いこと、すなわち、他社と違うことをやっていることであり、シングルビジネス部門では、マブチモーターと松井証券が、マルチビジネス部門では、キャノンのレンズ事業部とHOYAビジョン・ケア・カンパニーが第1回「ポーター賞」を受賞した。

3.パネルディスカッション

(1)「動け!日本」の紹介別ウィンドウで開きます。

(小宮山 宏 東京大学大学院工学系研究科教授)別ウィンドウで開きます。(PDF形式 497 KB)
  • 「動け!日本」は、経済財政諮問会議によって提案され、4月に総合科学技術会議の指定を受け、東京大学の理系の専門家が中心となって実施している。2ヶ月という短期間で40名余の理系の教官が集まり、緊急報告をまとめた。
  • レスター教授、竹内教授の基調講演を聴いて、「動け!日本」における検討のピントがずれていないことがわかり、意を強くした。
  • なぜ、経済の専門家でもない我々が本プロジェクトを実施するのかとよく質問される。本プロジェクトは、レスター教授を中心にMITの工学系専門家が行った「Made in America」プロジェクトを今の日本で再現するものである。「Made in America」では、1980年代の米国では生産技術に問題があったというメッセージが発出されていたと思う。日本の場合は、目標づくりが苦手であり、その目標設定で負けていると考えている。
  • これからのフロントランナーとして、国内の市場、すなわち我々の「暮らし」そのものがビジョンとなっていくであろう。ビジョンを実現することがデファクトスタンダードとなり、さらにはグローバルスタンダードとなるだろう。
  • 20世紀の暮らしはテレビや車を欲したが、21世紀は欲しいものが健康、環境、安全、ユビキタスへ移っていくだろう。これらは社会のインフラ、制度と密接に関連し、一企業ではなかなか手を出しにくい分野になっている。
  • 産業界だけでも動きにくく、政官でも動きにくい。そういった中で大学の役割があるのではないか。我々が欲しているものは、世界一の日本であろう。世界一の健康、世界一のグリーン産業、世界一の安全社会、世界一の教育システムである。ここではイノベーションが起こってから、産業になるというスタイルがあり、産業のみでは動いていかない。だからこそ「動け!日本」というプロジェクトが必要なのである。
  • 暮らしの中のニーズを考えるとき、例えば携帯電話がこの世に存在しないときに、携帯電話が欲しいというニーズは出てこない。そこで「何がほしい」と「何ができる」のキャッチボールが非常に必要である。
  • 例えば、健康医療のニーズとイノベーションとのキャッチボールを短期間に行った。その中で、ナノテクノロジーとモバイル技術の組み合わせ等のアイディアが出てきたが、医療行為の範囲問題や薬事法の規制等があり、このような取り組みはつぶそうと思えば簡単につぶせる。しかしながら、いかに実現していくかが大きな課題であり、その手法として、特区を活用し社会的実験を行うことは有効であろう。我々は目標をきちんと決めれば様々な抵抗に勝てると思っている。
  • 我々に必要なものは目標作りである。今後、この「動け!日本」をどのように進めるのかを考えたとき、産学連携とよく言われるが、社会が参画しないとなかなか進まない。社会が積極的に参画し、メディアが真の意味での「知」の仲介者となり、大学と社会と民間企業のよい循環を作っていきたいと思っている。

(2)コメント

(吉川 洋 東京大学大学院経済学研究科教授、経済財政諮問会議議員)
  • 1950年代から1960年代にかけての高度経済成長の時代は、GDPが平均で10%の成長した。その後、第1次オイルショック後は、成長率は平均4%台となり、バブルが崩壊し、90年代のいわゆる「失われた10年」の成長率は、1%台であった。
  • この1%という水準は、高齢化の進展のスピードと将来的な労働人口の減少にかんがみると、日本の実力だという見方もあるが、私は、そういう考えに与しない。成長会計でみると、高度成長期の成長率10%のうちの5は資本の伸びで、4がTFP(全要素生産性)で、1が労働の伸びであった。労働要因は全体の1/10程度と小さく、労働力人口が減っていっても、経済成長にとって決定的なマイナス要因とはならない。 良い意味での技術進歩がR&Dやイノベーションと結びつけば、成長も可能であろう。
  • IMDランキングでみると日本は30位であるというお話があったが、確か科学技術だけであると2位だったと思う。大学や企業における基礎研究については悪くないのだろう。
  • 経済成長の制約要因は、基本的に個別の財・サービスへの需要が飽和していくことである。例えば、携帯電話の需要が飽和すると成長が鈍化してくる。着実に成長させるためには、需要の中身が変わる必要がある。既存の財・サービスの成長が鈍化した際に、新しい財・サービスが受け入れられれば、それが、経済全体の成長を引っ張っていくことになる。新しい財・サービスへの需要は、潜在的なものも含めて新しいイノベーションと出会って伸びていくという解釈である。
  • 高齢化の進展は、確かに一方で制約要因となるが、例えば、健康など、新しい需要もそこから生じる。日本の市場規模は大きく、新しい財・サービスが試される場として、大きな潜在力を持っていると思う。新しい需要に新しいイノベーションが出会うことが重要であり、そういう意味で日本の成長力は楽観視している。
  • ただし、楽観視とは何もしなくていいと言うわけでなく、たくさん問題点も抱えている。アジアの成長力と比較して取り残されているものがあり、例えば、港のサイズにしても20年前は神戸港がアジアで一番だったのが、今ではアジアで5位に入る港が日本にはない。香港が1位で、その1/5の量が横浜港である。これについては、規制の存在とイノベーションの欠如を指摘せざるを得ない。
  • 製造業の空洞化に関し、7月8日付の日経新聞に記事によれば、アンケートした製造業者の6割が国内の生産を増加・維持すると答えている。さらに、生産額を増やす製品・分野がある企業は7割を越えており、その主な理由は国内需要の増加である。こうした需要にテクノロジーを結び付けていくことが重要である。
(浜田 宏一 経済社会総合研究所所長)別ウィンドウで開きます。(PDF形式 68 KB)
  • SP(Strategic Positioning )という話があったが、戦略的な話として、経済特区のメカニズムについて述べたい。
  • その背景として、国の税収が歳出より下回っている状態が恒常化している。平均あるいは総額でいうと深刻な問題である。一方、国際競争力の観点からこれ以上税率を高く出来ない。そうすると税率を低くする必要があり、そういう意味でナローパスである。金融についても、ゼロ金利政策は難しい面がある。金利がこれ以上下がらないので、色々な常套手段ではない政策を取らなくてはならない。このような袋小路に入っている中で、特区のあり方を考えなくてはならない。
  • 沖縄の名護は、名護市長の尽力もあり、法人税35%を軽減するということで、外部から金融特区に資本が入ることを助長している。しかし、ここでは、税金を使わない特区について述べたい。
  • 特区のメリットとしては、集積の利益、他の人もそれを見て真似るというShow windowの効果、既得権者による抵抗の排除などが挙げられる。農業についても北海道で大規模でやれば文句が出ないだろう。
  • 問題点は、一国二法制になるという点である。また、無から有を生むようなうまい話が本当にあるのかという点である。
  • 税金を使わずにうまく行っている特区の例を調べたが、外国で華々しくうまく行った例はない。外国に事例がなくても、日本で初めてやってうまく成功させていこうと思うべきなのかもしれない。しかし、これは非常に難関である。
  • 特区はマクロ政策の代わりになるわけではない。
  • もう少し、金融サービスをどうすべきかということを議論すべきではないか。どうしてシティを佃島につくろうという発想がでないのか。日本は物さえ作れば、金融は諸外国に任せればいいのか、という疑問を感ずる。

(3)ディスカッション

(レスター)
  • 高齢化について色々議論されたが、20年後はどうなっているのかについて関心がある。
  • クリエイティビティの役割について、吉川先生に同意する。将来日本が成長するカギは国民にある。イノベーションを通じて、国内の需要を喚起することである。イノベーションを生み出すには何が必要か。イノベーションは、ただ単に個々の企業の中では生まれない。企業間での交流や公的な研究機関との交流も必要。クリエイティブな場所を作るにはどうすればよいのか。この答えを見つけるためには、クリエイティビティの意味を考え直さなければならない。背景、制度、国、文化が違う中で、お互いに話し合い、そこから製品やサービスに対するアイディアが生まれるだろう。これからは国境を越えた共同作業が必要である。
  • 竹内先生が、半導体産業を例にとって、「日本企業は的を絞っていない」と指摘した点は興味深い。日本と比較して米国は、一定分野への特化が見られる。日本企業の行動は、全ての分野に手を出さなければならないという信条によるものか。
(竹内)
  • カリフォルニアは、大きさは日本と同じだが、産業クラスターは大きく3つあるといわれている。シリコンバレーとハリウッドとワインのナパバレーである。その3つは、サプライとデマンドの両方がある。例えばハリウッドでは、インプットとして役者、俳優が集まっている。デマンドサイドは、映画好きである。ワインのナパバレーも同様である。経済特区について、税金を使うのはいかがなものか。このような集積を人為的に作っても長続きしないのではないかという心配がある。
  • 小宮山先生が目指す「世界一」のうち、大学については可能性がないのではないか。
(小宮山)
  • 特区には税制の特区と、規制の特区がある。ここでは規制の特区を考えているが、日本は社会的な実験がしづらい土壌があると思う。
  • 竹内先生のコメントについて、大学については、もともとポテンシャルもあるから、何とかなると思う。
(吉川)
  • 経済特区について、政府の方針は、税制を用いるのではなく、規制を外すというものである。
(浜田)
  • 大学の問題については、大学だけが悪いわけでなく、中学・高校の教育方法にも問題があると思う。
(フロアー)
  • 米国の大学と日本の大学との違いは、巨大な軍事費の委託の有無であると思うがどうか。また、「動け!日本」緊急産学官プロジェクトの提出資料を見ると、対象分野が随分と限られているように思える。
(吉川)
  • 日本の国立大学では、国防関係の研究を受けない傾向にあり、この点は、他の先進国と大きく違うと思う。ただし、多くの先進国では、基礎研究を公的資金で行っており、日本でも、もっと公的資金の基礎研究に果たす役割が認識されるべきである。
(レスター)
  • 国防総省は、確かに米国の大学の大きなスポンサーではあるが、最大というわけではない。MITでは、研究開発予算の65%が政府資金だが、国防総省からはそのうちの13%で、National Institutes of Health(NIH)等様々な公的機関からの資金の方がはるかに多い。また、国防総省からの委託といっても、研究内容等で特に規制を受けているわけではない。大学である以上、スポンサーがどこであっても広く世に公表されるべきである。オープンにできない研究活動は行っていない。
  • 日米の大学の違いは2つある。米国の大学は、学際的な協同姿勢が強く、外国への開放性が高い。
(小宮山)
  • 「動け!日本」では、確かに「分かりやすいもの」を提案したが、それは日本にとって重要な問題であるからである。

以上

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