「デフレからの脱却と経済再生に関する国際フォーラム」の議事概要

場所:内閣府

日時:2003年9月18日 9:30-17:10

セッション1:デフレ不況の解明

1、報告者のプレゼンテーション

(1)浜田宏一 「平成不況:概観」
10年以上に及ぶ平成不況について現在議論されている政策と経済理論・実証結果との関連を説明した。まず、不況の原因として1,潜在成長力の低迷、2,組織の環境変化への不適応といった実物的要因のほか、3,90年代前半の急激な金融収縮の影響があげられる。次に、その治療方法としては第一義的に金融政策、特に金融政策の非伝統的な方法及びインフレターゲットが有効である。最後に、適切な政策がとられていない理由として既得権益の存在とのマクロ経済メカニズムに対する無理解をあげている。
(論文は「The Heisei Recession: An Overview」別ウィンドウで開きます。(PDF形式 383 KB))
(2)堀雅博、清水谷諭 「どうすればデフレ期待を反転できるか?-国民生活モニター(票)から示唆されることー」
個票を用いデフレの消費に与える影響、デフレ期待を反転させるのに必要な要素について分析を行った。2001年以降の平均期待物価上昇率は、概ね0.5%から0%の間にあり、こうしたデフレ期待が耐久消費財の消費を減らすといった家計消費抑制の効果があった。また、量的緩和等の金融政策は物価上昇率(インフレ/デフレ)期待に対し全体としてはあまり有効な影響を与えていない。すなわち、金融政策をデフレ反転の目的のために用いるには、より大胆な政策が必要である。
(論文は「What Changes Deflationary Expectations?-Evidence from Japanese Household Data-」別ウィンドウで開きます。(PDF形式 238 KB))

2、討論者のコメント

D. Weinstein

浜田氏のペーパーは、現在の政策議論と実証結果の関連性を合理的に述べている。深刻な構造問題と金融政策の改善が必要と主張している。

私は浜田氏の意見にほとんど同感である。しかしペーパーの中で、日本の労働者が貿易の過程で損をしているとする点については反対である。日本の労働者はほとんど熟練労働者なので、貿易を通じて実質賃金は上がるのではないか。また、財政政策が成功したのか失敗したのかということについては、もっと慎重に考えてもよいのではないか?日本の歳出はかなり増大しているが、これは金利の支払いや社会福利が増大しているからであって、経済を拡大する効果は小さい。

清水谷氏のペーパーについて。過去の期待と将来の期待は密接な関係にあるという点、日銀の金融政策変更はあまり影響がないという点などが論じられた。今後調査方法の改善や金融政策の変更が期待物価に影響するメカニズムの解明などが待たれる。
(説明資料はコメンテーターにおいて修正中)

浜田
「実質賃金は収斂する方向にあるが賃金格差は残るということが一般的な考察ではないのか。財政政策の効果が小さいという点については、国民は、政府がリカーディアン的な政策を取っていると考えていることが背景にあるのかもしれない。」
清水谷
「このような調査を日本で実施するのは他になく、今は試行錯誤の段階であると考えている。今日からもっとフォーマルな分析をしていきたいと思っている。」

3、質疑応答

発言者
「わが国の財政収支は景気悪化に伴う税収減で大幅に赤字が増えており、財政政策がビルトインスタビライザーとしての効果を発揮しているといえる。」
発言者
「日本の財政状況をよく考えてみると、債務が減少することはないと思う。」
発言者
「男女間でインフレ期待が違うという研究もあり、こうした点を追求することも興味深い。金融政策の有効性を高めるためには、日銀が姿勢を明確にすることは意味があると思う。日銀がデフレ抑制にコミットするというのが重要である。」
発言者
「日本の赤字の増大分は社会支出部分の増大である。日本は将来の負債がどれくらいになるのか、債務について考える場合には、正しい数値を使って議論することが必要である。将来の債務が膨大になっていることを念頭において議論することが求められる。」

セッション2:ゼロ金利下における金融政策の効果

1-1、報告者のプレゼンテーション

M. Woodford 「流動性のわなの下での最適な金融政策」
量的金融緩和は、将来の金融政策に関する人々の期待の変更を伴わない場合には有効ではない。他方、最も必要なのは物価水準の十分な上昇への明確なコミットメントである。外国為替市場への介入が有用であり得る。
(論文は「OptimalMonetaryPolicyinaLiquidityTrap」別ウィンドウで開きます。(PDF形式 453 KB))

1-2、討論者のコメント

渡辺努

Woodford氏の論文には、日本がどのように金融政策を考える上での枠組みが提示されている。3年5年前にこのペーパーを見ることができれば様々な議論の混乱を回避することができたであろう。その点は残念である。

金融政策と財政政策の関係について述べたい。この論文では,財政が金融政策に追随することが仮定されている。リカーディアン型財政政策の仮定である。通常であればこの仮定は問題ない。しかし金利がゼロバウンドにかかっているときには,最適金融政策が行われる背後で,かなりの規模の財政調整が行われることになる。この財政調整は財政余剰を減らす方向での調整である。これは筆者たちが論文の中で言及している点でもある。しかし,現実の財政政策がこの方向で行われてこなかったのは明らかであり,その意味でこの論文で前提としてる仮定が満たされていなかった。これが日本のデフレを深刻化させた可能性がある。

過去五年間において、日銀はデフレ懸念が消えるまでゼロ金利を続け、そして量的緩和をつづけることにコミットすると明言した。このコミットメントはデフレ回避に十分であったかどうかはわからないが、日銀の姿勢が正しく伝わったかどうかのほうが問題である。2002年10月には、ゼロ金利が今後4年続くと市場では考えられていた。日銀の姿勢がある程度,伝わっていたためといえる。しかし、別の証拠もある。2000年8月の日銀の政策会合では、デフレの懸念は解消されたと宣言しゼロ金利を停止することが決定された。これにより日銀は自らのコミットメントを裏切っている。これは日銀の政策に対する信認を著しく毀損させた。本年6月以降の国債金利上昇の背後には,日銀が再び約束を破って量的緩和を中断するのではないかとの懸念がある。2000年8月の失敗が尾を引いている。
(説明資料は「Comments on " Optimal Monetary Policy in a LiquidityTrap" by G. Eggertsson and M. Woodford」別ウィンドウで開きます。(PDF形式 33 KB))

1-3、質疑応答

発言者
「日銀はデフレからハイパーインフレに移行することを懸念しているのではないか。」
発言者
「価格水準のターゲティングについて、最適政策を選ぶ基準を教えてほしい。確定的なルールというものはあるのだろうか。また、デフレ前の水準をターゲティングする場合、現実のベースマネーが大きく増大しているのをどう評価するか。」
発言者
「私は、財政政策は非リカード的なもので考えている。所得や名目GDPの伸び率については政府が明確に目標を示すべきである。私は自然利子率の動きが重要であると考える。自然利子率はほぼ潜在的な成長率と同じ水準で推移しているだろう。」
Woodford
「まず、財政政策のなかでリカード定理があてはまることを想定したかという質問だが、提出したペーパーではリカードは想定されていない。最適な均衡を目指すため、財政当局は必要なことは何でも実行しており、制約は存在しないということを前提としている。インフレが見られた場合に税制政策をいじるかどうかということが重要な制約になるだろう。日銀が将来の緩和について十分にコミットしているかどうかについては、日銀の発表は正しい方向に影響を与えていると思う。日銀はゼロ金利の政策を即時放棄しないということを発表したが、これまではそれが明確にされてこなかった。より明白に国民に対し、表明し続けることが必要だろう。量的緩和について、将来の価格レベルと関係なく述べられている場合には、ターゲッティングとは関係ないということなのではないか。今日本の状況が難しいのは、コミットが事前に出されてないということだ。ターゲットの決め方については現在よりも高い価格レベルにコミットするのは正しいことであろう。価格を人々が期待する水準にターゲットすると明確に言うことが重要だ。」

2-1、発言者のプレゼンテーション

A. Auerbach 「流動性のわなの下での買いオペの効果」
流動性のわなが発生している場合でも、金融政策はマクロ経済はもとより財政上の便益の点から評価されるべきであるまた、将来の短期金利が正になるのであれば、金融拡張が厚生、価格及び生産の上昇に有効である。
(論文は「The Case for Open-Market Purchases in a Liquidity Trap」別ウィンドウで開きます。(PDF形式 146 KB))

2-2、討論者のコメント

齋藤誠

Auerbach教授の議論によると、短期利子率がいつかゼロから上昇することになるだろうと予想されると、バックワード・インダクションを通じて貨幣数量説はゼロ金利政策下でも成立する。積極的に日銀が国債を買い入れることにより、税による歪曲効果を解消することができるというミクロ経済的なメリットに加え、一時的だけれども、マクロ経済の産出量にも好ましい影響を与える。これらの理論的な考察にはまったく同感である。

前者の減税の税歪曲効果の解消については,日本政府はすでにをれを活用してきたように思われる。私はモデル自体ではなく、モデルの日本経済に対する妥当性について話したい。特に,金利期間構造は、政府と市場の相互作用で内生的に決定されており、外生変数ではないということを指摘したい。ゼロ金利政策や量的緩和政策については、政治的な圧力で、緩和方向に何度も、何度も、コミットメントが改訂されてきた。その意味で,コミットメントが弱く、信憑性にも問題がある。金利水準への時間軸効果が強まって,金利期間構造はほとんど横ばいとなってきた。そうした環境で市場参加者は、ゼロ金利が長期的に続くだろうと見るため、その方向に投機的な動きを展開してきた。

99年以降ゼロ金利政策が実施され、スワップスプレッドが下がり続けている。先進国の中では異例なものといえるが、市場参加者が日銀の行動を考慮に入れながら、短期的に投機をした帰結と言える。市場参加者としては、金利引き上げは絶対に行われないという予測のもとに積極的に投機してきたことになる。

こうした短視眼的な市場参加者のもとでは、将来の貨幣数量説を現在にまで遡らせるというフォーワドルッキングな現象が起こりにくい。物価への波及がきわめて限定的な結果,巨額な貨幣供給は,深刻な超過状態になってしまっている。すると,わずかな金利上昇でも,日銀の側に超過準備を吸収しなければいけない事情が生じてしまうことから,将来の貨幣供給増維持という、日銀のコミットメントの信頼性がいっそう低下してしまう。

現在の日銀のコミットメントでは、物価を引き上げてから金利はその後に引き上げる、と考えている。微妙な点ではあるが,これはAuerbach氏の考え方とは逆である。日銀の政策コミットメントの実効性をあげるためには、将来の金利引き上げスケジュールを明確にするとともに,日銀の超過準備残高を妥当な水準にまで減らす必要がある。これがAuerbach氏の提唱する理論を日本で活用するためのひとつの方法であろう。私は,それにもかかわらず,物価への波及よりも,マネタイゼーションを通じて税歪曲効果を弱めるほうがより重要なのではないかと見ている。
(説明資料は「Comments on “The case for open-market purchases in a liquidity trap” by Auerbach, A. J. and M. Obstfeld」別ウィンドウで開きます。(PDF形式 57 KB))

2-3、質疑応答

発言者
「インフレがいったん始まると、おそらく過剰な流動性をそのまま維持していることはないだろうから、経済主体は支出増大させることになるだろう。」
発言者
「インフレと最適コミットメントのパスをもう一度見てもらいたい。最適なコミットメントは金利上昇を先に持ってくるということである。恒久的にマネーサプライを維持することは、ゼロ金利が永久に続くということを示唆している。より低金利にコミットするというのが大事な点になる。」
発言者
「金利の期間構造から見るとは、日本は近視眼的に投資を行っているといえるだろう。最近、2,3年物の国債価格に変化が見られている。これからはマネタリーベースの動きに注目していきたい。」
発言者
「買いオペを流動性のわなの下で行うことについて、同感である。また、Woodford氏の見解についても同感である。金融政策の財政的な影響が重要である。日本での議論ではこの点がしばしば無視されがちであるため、日本でももっと追求していくべきである。」
Auerbach
「ひとつの問題についてコメントしたい。政策の逆転に近いものがおきるのかということ。現在のコミットメントとして、マネーサプライをさらに上昇させる必要がある。現在までの政策がどうであろうと、十分な金融刺激策となっていない。」
発言者
「日銀はデフレを引き起こすほど政治力があるのに、インフレへの政治的圧力を考慮しなければいけないのはなぜか。」
発言者
「現在の日銀の枠組みに強く反対しているわけではないが、信憑性を与えるためには超過準備の水準が問題になる。25兆円の超過準備はあまりに大きすぎて、正当化することはできないのではないか。1兆円を下回るところが妥当な額ではないだろうか。」

セッション3:企業再生のための理論と政策

1、報告者のプレゼンテーション

(1)田作朋雄 「日本における企業再生」
90年代以降の企業再生に関する枠組みの変遷と法制面の整備状況を説明し、90年代はメーンバンク制による私的整理が一般的であったが、現在は法律整備(民事再生法、改正会社更生法)が整い、企業の財務悪化の早期発見と迅速な対応が可能になったことを示した。また、2003年4月に設立された産業再生機構を国が設立した資産管理会社(AMC)として位置付け、その機能と役割について説得的に説明している。
(論文は「Corporate Revitalization in Japan」別ウィンドウで開きます。(PDF形式 54 KB))
(2)D. Baird 「米国型の企業再生と日本への応用」
米国連邦倒産法第11章(チャプター・イレブン)の適用を受けた大企業の最近の事例について考察することにより、倒産に対する市場の対応が進んだために、チャプター・イレブンの多数の債権者の協議の場を提供するという役割が薄れてきたことを示した。また、経済のサービス化に伴い、チャプター・イレブンが設けられた1つの背景である十分な継続企業価値(ゴーイング・コンサーン・バリュー)がどの企業にもあるという状況はなくなっており、その意味でもチャプター・イレブンの役割が変化していると述べた。
(論文は「Revitalization of Enterprise in Chapter 11」別ウィンドウで開きます。(PDF形式 51 KB))
(3)H. Kim 「韓国型の企業再生と日本への応用」
企業リストラの仕組みを中心に韓国における企業リストラの経験の要点について考察し、1)日本においても政策の重点を不良債権処理から企業再生へ移していくこと、2)企業の再建を促進するための“買収ファンド”等の装置(コーポレート・リストラクチャリング・ビークル)を導入すること、3)倒産法制を統合すること等が重要であるとの提言をした。
(論文は「Corporate Restructuring in Korea and its Application to Japan - Corporate Restructuring Vehicles-」別ウィンドウで開きます。(PDF形式 60 KB))

2、討論者のコメント

J. Corbett

田作氏の論文は、日本での企業再生のためのツールを提示している。過去には債権放棄などしか考えられなかったが、今ではそのツールが増えてきている。新しい民事再生法よりDIP financeが可能になったということだが、淘汰されるべきゾンビ企業の復活に傾いてしまうおそれはないのか、という懸念を抱いた。また、経済産業省による早期企業再建のガイドラインがなぜ作られたのかという点に疑問を感じた。

私的救済のガイドラインは債権者の調整連携がなかなか進まないためIRCJはRCCとは異なり、大企業再生を目的として設立されたものだろう。しかし、何故政府の機関が分在しなければならないのか、日本の市場に何が欠けているのかを考える必要があるだろう。

日本で大きな問題は、情報の非対称性と、問題企業資産の評価が難しいということがあげられる。現段階では市場が存在していないため、裁判所は適切な再建策をまとめるために有用である。

Kim氏の論文は非常にわかりやすいが、いくつか疑問がわいてきた。韓国では政府がイニシアティブをとって再生機構が作られたが、政府はまだ主導権を握っているのだろうか。プロフェッショナルな知識はどこから導入されたのだろうか。なぜ法廷外の和議を使うことが回避されたのだろうか。Kim氏の言うように日本では企業の再生にもっと重点を置くべきだろう。

Baird氏によればアメリカでは契約時における企業管理権の分配に重点が置かれていると感じた。継続企業価値が下がっているのだとすれば日本でもそうだと思う。また、最近における企業再生のやり方の変化は法律の変更ではなく経済の変化に起因するものだということを主張しているが、これは非常にわかりやすい。債権者が法廷外で企業再生の手続きを行うことが容易になってきたということである。

今回のプレゼンテーションで破産法や企業再生についてわれわれが学んだのは、日韓の場合には非公式なものよりも公式な手続きの整備の方が促されているようだということである。何が重要なのか、さまざまな国での状況を調べる必要がある。
(説明資料は「Comments on Corporate Restructuring in Japan, Korea and the US」別ウィンドウで開きます。(PDF形式 54 KB))

3、質疑応答

Corbett氏からの質問及び出席者からの質問に対して、田作、Kim両氏から以下のような発言があった。

田作
「経済産業省の企業の早期再建に関するガイドラインは、企業の再建への取り組みを早期に開始することが重要であるという姿勢を示しているものであると思う。産業再生機構の位置付けについてであるが、産業再生機構が何もしなくとも不良債権処理と企業の再生が進めば最善なのだが、これまで十分に進まなかったのは、それらを進めるための、オプションをそろえたという性格のものである。私的なものと公的な機関どちらがいいのかはわからないが、いわゆるゾンビ企業の命を長引かせることだけは避けなければいけない。」
Kim
「企業再生の中で民間セクターの重要性が増している。韓国は民間のアセットマネジメント会社、企業再生機構、銀行にも企業再生の能力がついたといえると思う。銀行が企業再生を担うことが難しいのは、銀行がハイリスクの投資を行えばBISなどの自己資本比率を維持することが難しくなるからである。」

ラウンドテーブル:デフレ脱却と経済再生

1、報告者のプレゼンテーション

黒田東彦 「今後の政策的課題と展望」
金融政策の積極的活用と研究開発、環境等への財政支出のより効率的な配分によって、デフレを止め、現在の経済回復を強めることが第一歩である。数年間の集中的な構造調整の後に日本経済は持続的な成長経路にのる。
(説明資料は「Policy Issues and Prospects:Toward Overcoming Deflation and Revitalizing the Japanese Economy」別ウィンドウで開きます。(PDF形式 19 KB))

2、ラウンドテーブルディスカッション

発言者
「インフレ抑制は回復の十分条件であるか。財政再建に関して、どうして総需要を維持することができるか。」
発言者
「円をどうやって切り下げていくかということだが、マクロ経済にコミットしていけば、為替にすぐに影響が出て、当然円安につながっていくだろう。意図的に円安誘導をすると近隣窮乏政策であるという意見があるが、必要であればするしかない。全部に対して切り下げるわけには行かないが。」
発言者
「福井総裁が就任して以降これまでのベースマネーの供給額がたまたまではあるが財務省の為替市場介入額とほぼ見合ったものになっており、結果的に非不胎化介入が行われたような形になった。こうした行動はアメリカの市場に影響及ぼし、日本にも逆にスピルオーバーしてきた。国内に関して言えば、これは通常の金融緩和よりも影響が強かったといえるだろう日銀は量的緩和の政策を継続している。アウトプットギャップは狭まっており、プラスに転じているなど、デフレ脱却の条件が整ってきている。しかし一方で高齢化と人口の縮小が続いているため、地価の下落が続いている。そういったことからも、不良債権の発生は続いていくだろう。」
発言者
「アメリカでは足元で小幅の成長が続いている中で、今後も成長を続けていくだろうと予測されているのに対し、日本では最近の成長率の回復を単に将来に延長する形で議論が行われているだけである。将来的な展望については何も根拠をもって話されていない。大規模な金融刺激策が追加的に実施されない限り、私は将来に対し、非常に悲観的である。」
発言者
「どうやって期待を刺激していくのか、エコノミストでもわからないといえる。実体経済を活性化するのは難しいが、この四半期にいくつかのいい兆候が見られている。日銀は新体制になって以降いいメッセージを送り続けており、民間でも収益が改善し始めている。何かが変化し始めているということができる。価格の下落が予測される中、多くの企業が増収に自信を見せ始めている。大規模製造企業に限って言えば、売り上げ当たりの収益も5%あたりまで回復してきている。下請企業などを犠牲にしているだけだという批判もあるが、投資も増大しており、ボーナスも過去最高になっている。また、過去デフレに苦しんでいた中国がインフレに転じている。」
発言者
「軽いデフレ下で業績回復が不可能というわけではない。企業がリストラ努力を続ける一方で、最近では家計における貯蓄率は下がっており、総需要の水準が維持されている。従って当分の間、業績回復は継続していくと見られる。最近輸出実績はよくないが、民間の個人消費や設備投資などは健全な展開が続いている。持続的な回復が保証されているわけではないが、今後は輸出の回復も見込まれることから、持続可能な成長を実現することが十分可能である。」
発言者
「持続的成長を実現するためにはデフレが問題だということを確認しておきたい。デフレ解消のためのマクロ経済政策と銀行部門のリストラはお互いが補完できるものである。(ウィクセル的な)自然利子率が下がっているということが大きな問題の根源となっているので、これを上げるための対策をとることが必要だろう。」
発言者
「財政の赤字が累積しているが、いつまでもこの状態を続けていくことはできない。日本の政策担当者はいくつかのオプションを迫られるだろう。公的部門の巨額な債務超過のため、金融緩和を続けざるを得なくなり、その結果日銀が自立を失うというのがひとつ。もうひとつは政府支出を引き締め、財務省が福祉支出を縮小するというもの。もうひとつのオプションは増税。そして最後にはデフォルト(破綻)するということだ。いずれもネガティブなオプションであり、現状では日本経済の先行きは明るくないのではないか。」
発言者
「貯蓄率が低下していることは短期的にはプラスだと思う。経済の非効率的な状況を是正するのは簡単ではない。技術的な進歩が有り、エコノマイゼーションが起きればいいのだが、政府がインセンティブを与えて誘導するのは難しい。」
発言者
「株価と地価の関係を聞きたい。株と不動産の間の資金移動は、ポートフォリオの再配分に過ぎないのか、アメリカによる対外要因なのか、本当に回復に結びつくのか。」
発言者
「企業投資がこのところ堅調を続けたため、これが経済に好影響を及ぼしている。収益も伸び、名目売り上げも回復してきている。デフレは継続しているものの、経営陣の努力によって企業は回復をはじめていると言うことができる。内需ではいい傾向が見られている。不動産価格の変化の影響はあまり深刻なものではない。長期の金利が急に上昇し、自然利子率よりも上がった場合に警戒が必要になるため、日銀と財務省の協調が求められるようになるだろう。長期金利の安定には、新規国債にプットオプションをつけるべきではないかと思う。」
発言者
「デフレから脱却するための政策がすべてにおいて小さすぎ、遅すぎたというのが問題なのではないか。来年度あたりにはおそらく公債の新規発行が税収を上回るということが起こるかもしれない。これは、日銀の政策転換が3年遅すぎたということではないか。大量の流動性の導入や為替介入も遅すぎた。りそなの国有化はよかったが、これも遅すぎた。ゆえに抜本的な変化をもたらさない限り、回復は持続しないと考えている。」
発言者
「ESRIはもうすこし指数の問題を深く研究するべきではないかと考えている。また、日本ではもっとミクロデータを使った研究を行っていくべきだと思う。」
発言者
「総務庁には厳格な基準があって、ミクロデータを使うのは難しい。政府自体ミクロデータ活用のために必要な行動をとってきていないと思う。」
発言者
「日本の持続的回復は可能か、というのが今日のテーマである。楽観はしつつも注意が必要である、というのが私の見方だ。いくつか実質的な改善が見られており、将来に対して明るい見通しが持てるものの、依然としてデフレ脱却が必要であり、また、構造改革もまだ終わっていない。特にデフレ状況を取り除くことが喫緊の課題である。」
発言者
「GDPデフレータの伸びが低すぎて、実質GDP成長率が高く出すぎるということもあるのではないか。ESRIにおいて検討してほしい」
発言者
「デフレーターについては、計算の仕方によって数字が異なってくるわけで、現行の方式が間違っているというわけではないが、経済が急激な変化をしているのでデフレータについての検討は必要である。」
発言者
「財政の持続性を回復させるためには、大きな公開市場のオペを行い、政府外の部門が保有する公債残高を減らすべきである。」
発言者
「財政の持続可能性に関して、公的年金制度を持続可能なものとするためには現行の2階部分は民営化するべきである。」
発言者
「年金プランを手直しするべきだと多くの人が考えていると思う。基礎年金はもうほとんど破綻しているといえる。強制加入にもかかわらず、罰則が存在しないため給付対象者の40%は年金を払っていない。来年は年金改革を目玉にしているが、その方策は各省庁でさまざまである。」
発言者
「財政再建については、日本は中期の政策計画を持っている。財政のプライマリーバランスの赤字を解消するということを目標にしており、5年で半減させることを目指している。持続可能な財政の実現のためには年金の改革が必要なことは共通の認識になっている。今回の改革ですべての問題が解決されるわけではないかもしれないが、中期的には合理的な解答が出てくると思っている。」

プレスとの質疑

「日本ではデフレの克服に関して政策当事者間で責任を押し付けあっており、政策に関し、意見の一致が見られないことが問題だと思う。」
「日銀と政府は従来以上に調整を取り連携をとるようになってきた。政策当事者間で意見の違いが有るのは日本政府だけの問題ではなく、ほかの国にもあるだろう。民主国家では避けられないものである。肝要なのは、合理的な解決策をタイムリーな形で見出すことである。バリー氏はこれが日本特有の問題であると示唆されているようだが、意見の相違はどこにでもあり、自然なことだと思う」
「金融緩和と為替市場への介入の額が偶然一致したということだが、財務省と日銀の間に何らかの合意はなかったのだろうか。」
「明示的な合意はなかったというのが私の理解である。」
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