第2回ESRI経済政策フォーラム
「財政を巡る論点について」(概要)

経済社会総合研究所
平成13年5月22日

本フォーラムの概要について、事務局の責任により、以下の通りとりあえずの要約を行いましたので、ご参照下さい。なお、議論の正確な内容については、議事録(PDF形式 138 KB)別ウィンドウで開きます。を参照頂ければ幸いです。

  • (開催日時)
    平成13年5月21日(月) 13時30分~16時30分
  • (パネリスト)
    岩本康志
    京都大学経済研究所助教授
    小野善康
    大阪大学社会経済研究所教授 (基調講演)
    八田達夫
    東京大学空間情報科学研究センター教授
    井堀利宏
    経済社会総合研究所総括政策研究官 (基調講演)
  • (モデレーター)
    浜田宏一
    経済社会総合研究所所長

冒頭、井堀利宏教授、小野善康教授より基調講演をそれぞれ頂き(詳細はホームページ掲載の基調講演をご参照下さい)、その後パネルディスッカションを行った(パネルディスッカションの後半は、パネリスト以外の参加者の方々からの質問、ご意見にパネリストが回答しつつ議論を行った)。

基調講演「財政再建の論点」(井堀利宏 経済社会総合研究所 総括政策研究官)

1) 景気状況に応じ財政赤字を出しても良いが、現在の財政赤字は、景気が回復してもあまり縮小しない。公債残高を政府の資産で相殺することはできない。黒字である民間部門の資源を徴収することも困難である。このままの財政運営を中長期的に維持すれば、財政はいずれ破綻する。追い込まれて極端な増税を行うことは経済に大きな悪影響をもたらす。赤字が発散しないよう、現実性ある財政再建のシナリオを提示することが必要。
2) 財政赤字の景気刺激効果は、高度成長期と比べ、薄れている。一方、国債の発行は、異時点間の再分配の問題をもたらし、将来世代の負担を高める。
3) 借金を全部返す必要はないが、財政赤字のメリットよりデメリットの方が大きく、維持可能なレベルまで、財政赤字を戻す必要がある
4) このため、(i)社会保障改革、(ii)国と地方の役割の見直しを進めるとともに、増税が国民の納得が得られるよう、公共事業評価等、支出内容の改革を進める必要がある。

基調講演「不況期の財政政策の論点」(小野善康 大阪大学社会経済研究所 教授)

1) 経済政策の目標は、資源の有効利用である。完全雇用時と失業がある時では、とるべき政策は異なる。失業がある時に、政府の効率が悪いからと財政赤字を削減すれば、失業問題を悪化させてしまう。一律の財政支出の縮小は、金を倹約するが、失業をもたらし、本末転倒である。かっての政策論争は、金をまくか、削減するかということでしかなかったが、いずれも資源の有効利用の観点がない。現在重要なのは、先ず雇用創出であり、2番目が財政再建である。
2) 財政赤字の次世代負担については、それによりクラウドアウトが生じるかである。不況期には、使われていない労働力を使うわけで、負担は生じない。
3) 単なる金のばらまきの形での財政支出は、所得の移転に過ぎず、景気刺激効果はほとんどない。
4) 国債発行は、信用が高く皆に保有されているという意味で、日銀券と同じような流動性を生み出している。現在の金融経済情勢の中で、ただ圧縮すれば良いということにならないのではないか。

パネルディスカッション

(1) 財政政策の有効性
岩本康志京都大学経済研究所助教授からは、これまで構造問題にも過度に財政金融政策が割り当てられてきており、財政政策の発動はかなりの不況期に限定すべきという意見があった。また、失業者の有効利用の観点からの財政政策については、付随する費用が大きいという意見があった(岩本、井堀)。
一方、金のばらまきは、その財源調達のための所得移転に伴い、財政政策の呼び水効果、乗数効果はともにあまりないが(小野)、構造調整に資する公共投資は、前倒しして進めたほうが良い(八田達夫東京大学空間情報科学研究センター教授、小野)という意見もあった。
(2) 財政赤字の将来負担
不況期では、国債の将来負担は生じないという議論(小野)に対し、財源調達と使い途の議論は別に考えるべきであり(井堀、岩本)、公共資本の受益と負担を合わせるため、国債の償還年数を30~35年に引下げるべきという意見(岩本)もあった。
(3) 財政再建と景気回復
景気回復と財政再建の両方に役立つ政策をとって行く事が重要であり、公共投資で前倒しできるものを進めることが重要であり(八田、小野)、都市の収益性向上による地価上昇は、不良債権問題にも資する(八田)という意見があった。また、景気回復に向かったときに自然増収が増えるような仕組みを作っておくことが重要として、キャピタルゲイン課税の強化、婦人労働の促進、配偶者控除の廃止、所得税増税と消費税減税(益税問題あり)の組合わせといった提案があった(八田)。
一方、岩本氏からは、財政再建のため、義務的支出と裁量的支出にわけ、後者の削減により、何もしなければ財政赤字が改善する仕組みを作ることが重要という指摘があった。
また、財政赤字が多少減っても、景気には余り影響がないといった指摘もあった(井堀)。さらに、財政再建に比重を移した97年の橋本財政と景気後退の関係については、橋本財政は、景気後退の引き金を引き失敗であり、繰り返すべきではないという意見があった(八田)一方、景気後退の主因ではなかったし、量的にしばらないと財政制度が変わらないことを考えると、セカンドベストだったと評価する意見もあった(井堀)。また、財政構造改革の効果については今後分析する必要があるという意見があった(井堀、八田)。
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