第14回ESRI経済政策フォーラム
「構造改革特区と経済活性化」(概要)

経済社会総合研究所
平成15年7月28日

本フォーラムの概要について、事務局の責任により以下の通りとりまとめましたので、ご参照ください。また、議事録についても、近日中にホームページ上において公表する予定ですので、議論の詳細についてはそちらをご参照いただければ幸いです。

  • (開催日時)平成15年7月3日(金)14:00~16:30
  • (パネリスト)
    奥谷 禮子
    (株)ザ・アール代表取締役社長
    北川 正恭
    早稲田大学教授(前三重県知事)
    末吉 興一
    北九州市長
    福井 秀夫
    政策研究大学院大学教授
    八代 尚宏
    日本経済研究センター理事長
  • (モデレーター)
    香西 泰
    経済社会総合研究所所長

冒頭、鴻池構造改革特区担当大臣の挨拶、八代尚宏、北川正恭両氏の基調講演をいただき(八代氏の基調講演についてはホームページ掲載の基調講演資料をご参照下さい)、その後、パネルディスカッションを行った(パネルディスカッションの後半は、パネリスト以外の参加者の方々からの質問、ご意見にパネリストが回答しつつ議論を行った)。

1.基調講演(八代尚宏 日本経済研究センター理事長)([資料参照](PDF形式 21 KB)別ウィンドウで開きます。

  • 規制改革の主要な目的は、競争の促進により消費者の利益を守ることである。そのために、競争を阻害する事前規制を撤廃し、同時に、競争を促進するような事後チェック機能を強化していく。ある意味で規制緩和と規制強化の組み合わせになり、自由放任にするということではない。それと同時に、規制の強い「官製市場」を改革することによって新しい産業と雇用を創出する。いわば保護貿易から自由貿易への転換のようなものであり、医療、教育、農業も産業と位置づける。また、国から地方へ権限を委譲していくことも求められている。
  • 構造改革特区の意義は、全国一律の改革に対する反対論の壁を破るために、実際に社会的実験をやってみるということである。米国の州の間の制度間競争と同じようなことを日本でも導入しようということであり、国のモデル事業、あるいは中国や北朝鮮の特区とは異なる。地方のイニシアチブ、地方のニーズに基づき、知恵を出して改革を行う。国の介入を伴う財政的な支援は無い。
  • 特区を推進するための制度は、日本の行政制度としては前例のない、革新的な特徴を多くもっている。1、地方自治体と内閣の特区室が直接的に連携しており、地方のイニシアチブが国の制度になっていく。2、特区法の具体的な規制の特例措置の部分は、ポジティブ・リストではあるが、年2回の改正でどんどん追加していって実質的なネガティブ・リストに近づけていくという手法をとっている。3、徹底した情報公開が図られており、特区室と各省との折衝過程も含めてすべての情報がネット上で公表される。4、制度改革に中立的な専任の大臣がいて、専任の組織を率いている。
  • 特区の認定までのプロセスは、まず各自治体や個人、企業から提案を受け付け、特区室で整理して各省と折衝する。合意ができれば、それを規制の特例措置という形で特区法のリストに追加する。それに基づいて改めて申請を受け付け、特区ができる、というものである。年2回の法律改正を中心に、これらを同時並行的に行う。
  • 第1次の特区として117地域が設立された。医療については、高度医療先進病院の適用基準弾力化が、特区ではなく全国で実施された。特区は全国適用のための一里塚であって、最初から全国適用ができればそれにこしたことはない。特区として認定されたものも、今後は速やかに全国ベースに拡大していく必要がある。
  • 今後の課題としては、真に実験的な内容の特区がまだ少ない。今度の改正でできる株式会社の病院参入のようなものがもっと出てくる必要がある。また、各省にまたがる複数の規制の特例を同時に達成して新しいビジネスを作っていくという方向を目指すべきである。
  • まもなく特区評価委員会ができるが、そこでは特区の成果と弊害の両面を見る必要がある。成果の評価としてはコスト等の本質的なものを見ることとし、特区でさしたる弊害がなければ全国展開を認めてもよいと思う。
  • 特区評価委員会の委員のうち3割が公募されるが、この種の委員会では初めての試みだと思われる。事務運営を民間に委託するという話もある。特区方式は制度改革の実験場のようなものであり、道路公団や郵政3事業のような問題についても応用できるのではないか。

2.基調講演(北川正恭 早稲田大学教授(前三重県知事))

  • 私は特区構想を高く評価している。その関係で2つの話をしたい。1つは、マニフェスト(政権公約)である。これは、選挙の際に、数値、財源、期限を明確にした現実的な公約を掲げて、政治主導で民主主義を達成しようという趣旨のものである。
  • もう1つは、北京の蝶々の話である。これは、北京で1羽の蝶々が羽ばたいたら、それに感動して2羽、4羽、・・・と感動、共鳴が世界中に広がり、ニューヨークでハリケーンが起きたという、カオス理論のたとえ話である。この特区の構想はまさに北京の蝶々を飛ばすことであり、1つの自治体から始まって、この話のような共鳴現象が起きれば、あっという間に世の中が変わると思う。
  • これまで、行政には縦割りの弊害と、中央が上で地方が下というヒエラルキーの弊害があったが、規制改革はそれを取り払うことに意義がある。三重県では四日市のコンビナートの再生に関する特区構想を出したが、そのプロジェクトチームに入っていた四日市の一消防署の職員の方が消防庁長官にレクチャーし、その説得が形を変えてモデル事業として実を結ぶということがあった。かつては考えられなかったことである。
  • 民間、市、県という順番でできることをやっていくという補完性(subsidiarity)の原理に立って考えると、本来、国が勝手に補助金をカットして、その代わりに税財源を移譲「してあげよう」と、裁量権を行使するのはおかしい。そういうシステムに国だけでなく地方も甘えてきたが、これを打破しないといけない。
  • 中央官庁は供給サイドに立ち、業界と庇護と依存の関係で結びついた、非常に排他的なシステムを形成している。これに対して、構造改革特区は消費者、納税者の立場でこれを壊そうとするものである。抵抗が大きいのは当然である。
  • しかし、庇護と依存という関係から脱却して、中央、地方、民間が力を合わせていけばそれぞれの良さが相乗効果を生むことになるだろう。選挙によって選ばれた人がビジョンを示し、官僚がそれに従って本来の働きをするという良循環が起こると思う。規制の内容は民意で決め、官僚はそれを公正なルールに基づいて、透明な組織で、透明に運営するということになる。
  • 構造改革特区は補助金がついていないが、財政事情を考えてみても、これまでのように国や自治体がお金を分配するのではなく、政策のプログラムで競争するというようにパラダイムを変えていく必要がある。
  • これまでは国が決めた法律は絶対だったが、今回は内閣府に相談窓口ができて、悪ければ直せばよいということに民間や自治体が気づいた。これによって、自治体も自己決定、自己責任で行動するようになってきた。
  • 自治体と民間の間の意思疎通を図るために情報公開が非常に立つということがわかった。さらに進んで、政策決定過程、予算編成過程からの情報提供や双方向の情報共有ができるようになってくると、すばらしい政策が出てきて、それが共鳴し、人も予算も半分で100倍の仕事ができるようになる。官と民の新しい信頼関係もできるようになる。
  • 特区構想が出る前、地方分権一括法案で法定外目的税ができるようになり、三重県は産業廃棄物税について県とコンビナートの企業とで激論を戦わせた。それで成熟度が高まり、特区構想が出たとき、産官学民のコンソーシアムがうまく機能した。

3.パネルディスカッション

(奥谷)
  • 私は規制改革会議のメンバーをしているが、特区ができたのは、規制改革が目に見えてはっきりとは進まないので、特別なものを設けて進めようという意味合いが強かったと思う。病院の株式会社参入など、官僚の抵抗が強くてなかなか進まないというのが一番大きな問題だろう。
  • 特区を逃げ場に使ってはいけないし、その評価を規制の主体である中央官庁主導でやったのでは意味がない。評価委員の人選に加えて、民主導で仕切れる力を与える必要がある。
(末吉)
  • 北九州市の臨海部の埋立地に外国企業を誘致している。労働者の質が高く、産業インフラのそろった、アジアに近いまとまった土地が安く買えるといった利点がある。しかし、候補に挙がっても、埋立地の目的外利用に関する手続きに半年、1年と時間がかかるため、不成立になったことも多い。少なくとも3ヶ月で結論を出さなければ難しい。
  • だめになった原因を整理してみたところ、都市計画区域と港湾区域の関係で暗礁に乗り上げたり、単なる通達が原因だったりするが、法律を変えなければいけないようなケースはほとんどなかった。結局、国際物流特区として3分野7項目だけの規制緩和を適用することになった。
  • 構造改革特区法ができる時に要求し、実現されたメリットは、1、内閣府が地域の計画を応援してくれること、2、照会から2週間以内に返事をくれること、3、相手企業との交渉で信頼してもらえるような「仮免許」を出してもらえることの3点である。
  • 補助金や税制の優遇については、地域振興のためには計画さえ良ければあった方がよいと思うが、いずれにせよ、総論ばかりで前に進まないよりは実験をしながら進む方がよい。
  • 最も重要な点は、地方公共団体の政策立案能力が問われることである。民間からのヒヤリングを含め、勉強させられたし、人材育成も必要になる。
(福井)
  • 特区の法的な論拠は重要なので、ここで整理しておきたい。一国二制度という議論に関して言えば、米国では、たとえば裁判制度や死刑、麻薬について州ごとに全く違う判断ができるようになっている。これと比べれば、特区で想定されるような自治体ごとの違いは小さい。日本は米国のような連邦制ではないので、条例によって国法から抜け出て独自のことをやるのは無理だが、国法自体で、地方公共団体と民間の発意を重視し、地域の実情にあった枠組みを作れるようにすれば問題はない。これが特区の出発点となった考え方である。
  • 特区で実験をやってみて弊害が全くなければ、メリットが全くなくても直ちに全国で解禁すべきである。そもそもメリットがあるかどうかを中央官庁が判断する必要はない。使うかどうかはユーザーの自由であり、可能性を閉ざす方向で全国を統一する必要はない。
  • 万一弊害が起きた場合には、効果的な抑制をする代替措置ができるかどうかどうかが次の判断になる。さらに、その副作用まで考慮した規制改革後の状態と規制を維持したときの状態とを比べてどちらの方が相対的にメリットが大きいか、を検証する必要がある。これまで認定されているものは、細かいものにとどまっており、何の弊害もないはずだから、100%全国展開に移行すべきであると考えている。
  • 今後の展望としては、規制改革の事項自体をどこまで大仕掛けにできるかに、特区制度の成否がかかっている。具体的には医療、教育、農業の株式会社参入や、医薬品の通常の小売店での販売、混合診療、教育バウチャー等である。
  • 特区は実験室のようなものであるから、対象が広く、サンプルも多い方がよい。その方が仮説の検証も容易になる。情緒的な議論に流されず、経済学の基礎的知見を用いて判断することが望まれる。
(北川)
  • 改革の第一歩は小さくても、北京の蝶々の話のように、大きな成果が出ることを期待できる。そのとき、タックスペイヤーの立場に立つか、タックスイーターの立場に立つか、あるいは需要側に立つか供給側に立つかという、大きなパラダイムシフトが問われる。
(八代)
  • 官僚の抵抗という話があったが、彼らも一枚岩ではない。問題は彼らを良い方向で活用するシステム作りである。特区室は官僚の集まりであるが、彼らが構造改革の最前線にいるのは他の官庁と仕組みが違うからである。基本的に中立的な組織で、しかもトップに極めてやる気のある大臣がおられる。この組み合わせがあれば改革はできるという見本ではないか。
  • このことは官僚機構に限らず、業界団体についても言える。たとえば、医療改革は医師会の協力なしにはできないし、医師会は一枚岩ではない。そういう意味では、医師会の改革派といかにして手を握るかということが大事である。
(香西)
  • 特区を日本経済の活性化のためにやるのか、地域の活性化のためにやるのかという点について、この2つは大きな流れとしては一致すると思うが、どちらを主とするかで多少の違いはあるのではないか。
  • 別の言い方をすると、特区法の第1条には地域の活性化を図るということが書いてある。これは、地域の立場からすればそのとおりだが、中央官庁の論理からすれば、地域の特性に応じて認めるのであって、そう簡単に全国展開されては困るとも読める。そのあたりに問題はないのか。
(奥谷)
  • 特区の狙いとして、中央に力がなくなったので地方にがんばってもらいたいという意味があると思うが、地方に内発的な必然性がなければ失敗に終わってしまうだろう。いろいろな試みが全国展開に移ったときにどうなるかというのが、1つの大きな問題になってくると思う。
(八代)
  • 香西所長のご指摘は、昔から問題になっていた点で、結局、特区を限定的に認めるのか、条件さえ満たせばどこにでも認めるのかという議論になる。財政的措置を伴うものであれば限定的にしかできないが、特区法では、手を上げたところは基本的にすべて認めるようになっていて、その意味では、そのまま全国展開できるような仕組みも秘めていると思われる。
  • 特区には排他性がなく、他の自治体がそっくりまねをしてもかまわない。それは全国展開を目的としているからである。法律では地域の特性について書かなければ法制局が認めなかったということだが、それは一国二制度を防ぐためにそういう書き方をしたということであって、私の解釈では、地域の特性がなくてもかまわないというのが真意であると思う。
(福井)
  • 地域の特性というのは、それがあれば副作用が小さいはずだという、一種の方便だと考えればよい。もっと積極的な意味を考えると、地域ごとに能力や熱意が違うので、地域ごとに判断するという枠組みであれば意欲的なところが提案を出してくることになる。そうであれば、とりあえずその地域の振興が図られるので大変望ましいし、また、成功すれば論理的帰結として当然、全国で認めるわけだから、意味のある設定であったと思う。
  • ただし、自治体がすべて改革に積極的とはいえないので、自治体が申請の主体であり続けることについては、改善の余地がある。本来は、民間からの提案が出てきてしかるべきである。
(北川)
  • 地場産業は7、8割つぶれてきており、このまま補助金行政を続けたら残りの部分も官頼りになってしまう。独自の政策を地域自体が作り上げる必要がある。ここで供給側から需要側へというパラダイムシフトが必要になる。
  • 製造業は国際競争が厳しいが、人件費の占める比率は原価の15%程度であり、大改革をすればまだ世界に伍して残ることができる。
  • 三重県がある企業に対して補助金を出したら、後で国が追随して科学研究費をつけてきた。これまで自治体が国の補助金を探していたのとは全く逆である。これを全国の自治体がやったら大きなものになる。
(香西))
  • 次のステップ、将来展望についてはどう考えるか。あるいは、こういう提案があってしかるべきだというようなことはあるか。
(八代)
  • 経済的規制はかなり自由化されているが、社会的規制についてはまだ進んでいない。特に大きな分野は医療、教育、農業である。特に、これらの社会的規制の分野に株式会社を参入させるべきである。違うことをする人を入れなければ本当の意味の競争は成り立たないからである。選ぶのは消費者にまかせればよい。
  • また、日本企業と違った考え方をする外資がこれらの分野に入ってくるよう、外資にとって魅力のある仕組みを自治体が考えるとよい。
  • 複数省庁にまたがる総合的な規制改革も今後の大きな柱の1つになるだろう。
(香西)
  • これまで提案して断られたが、再提案したいというものがあるか。どういう問題があったかも含めてお聞かせ願いたい。
(末吉)
  • 一番壁が厚かったのは外国人労働者の問題である。民間が外国様式のトマト工場を作ることになり、慣れた外国人を連れてきて建てさせようとしたが、認められなかった。これについては、時期がきたらまた内閣府に駆け込むつもりである。抽象論でなく、減税措置の可能性も含め、具体的なやり方に即して特例措置を迫りたい。
(北川)
  • 物流の関係で警察庁と問題が生じたが、結局はうまくいった。鴻池大臣にもがんばってもらったが、議論を全部オープンにするというのが決定的だったと思う。
(奥谷)
  • 幼保一元化の問題は、前々から進めている自治体はすぐにクリアできると思うが、その次にどう改革していくかが、また1つのテーマになっていくのだろう。
  • 医療、教育、農業は大きな抵抗にあっている。先ほど八代さんから前向きの官僚と後ろ向きの官僚の両方がいるという話があった。若い官僚で前向きの人がかなりいることは感じているが、まだ力が弱い。
  • 医療に関しては、株式会社の参入というと、「医は仁術」という言葉がすぐに出てくる。入院するとコンピュータもファックスも使えないなど、足だけ怪我をして他は元気で仕事に忙しい人でも、仕事をしていない寝たきり老人でも同じような扱いをして、「平等」であると言っている。もっと多様なサービスを付加して、患者が選べるようにすべきだ。今回の特区でも自由診療しか認めないということだが、これではあまり意味がない。1つの手がかりにはなるかもしれないが、譲歩しすぎだ。
(八代)
  • まだ負けたわけではなく、これから高度医療の中身についてできるだけ拡大解釈するように、運用面で戦っていく。
  • 末吉市長のお話にあった補助金や税制上の優遇措置の問題は特区の本質にかかわる問題だ。そういう措置のつくタイプの特区は強力だが、実施する際には、政治的な要因で、構造改革特区で手を挙げているのとは全く違うような地域に適用されるようになるだろう。また、そういった措置は全国展開の障害になるかもしれない。この問題に関しては、先ほど北川さんの話にあったように、国よりもむしろ自治体がまず減税や優遇措置をつけて、これに各省の既存の補助金を取ってきてマッチングさせるのがよいのではないか。
(末吉)
  • 北九州市も、特区条例を作って、投資額に応じて助成をするということを既にやっている。
(福井)
  • 「社会的規制」という言葉は、それに分類されるだけで聖域になったと考える人が多いので、やめた方がよい。「経済的」でも「社会的」でも、公共財、外部不経済、情報の非対称性といった限定的で明確な論拠が必要だという点では同じである。合理的な根拠のない規制に関しては、所管官庁から驚くような理屈を聞かされる。
  • たとえば、スーパーは薬剤師がいないから薬を売ってはいけないという。しかし、薬局で薬剤師がきちんと副作用の説明をしているかというと、実際には薬剤師が名義だけ貸していたり、店にいなかったりといったケースが多い。また、富山の薬売りは、高校を出て3年の販売実績があれば、薬剤師の資格がなくても、一般には薬剤師しか売ることのできない薬を売ることができる。それならコンビニでも同じようにすればよいではないかと言うと、所管官庁は答えられなくなる。この程度の議論の優劣のはっきりしたものですら、特区も全国展開もできていない。
  • がんの治療で保険診療の対象でない新薬を使うと、通常のがん治療まで保険の対象外(自由診療)になってしまう。これでは金持ち優遇ではないかと言うと、混合診療を認める方が金持ち優遇だという答えが返ってくる。その理屈は、安全確保のため保険診療が混じる以上は危ない治療を試させないというものだ。そうすると、今許されている自由診療については安全でなくてもよいと考えていることになる。
  • 株式会社病院は既に62あって安全に高度の医療を営んでいるにもかかわらず、今後の株式会社は患者をないがしろにするから絶対認めないという議論がいまだに残っている。
  • 農家の高齢化により耕作放棄地が急増しており、個人農家は耕作放棄しやすいという農業団体自身のデータがあるにもかかわらず、株式会社の方が耕作放棄しやすいはずだから農地の保有は認めないという議論がまだある。米国やフランスの例を調べたら弊害はないことがわかっているが、それでもやりたくないようだ。
  • このような議論は枚挙に暇がない。すべて総合規制改革会議のホームページ、特区WGとかアクションプランWGとかで公開されているので、興味のある方は是非見ていただきたい。
(北川)
  • マニフェストを掲げて選挙をやり、多数を得たなら、その内閣は圧倒的な強さを持つ。サッチャーも言っているように、官僚は必ず従い、本来やるべき仕事をやるようになる。そういう良循環が起こるようにしなければならない。
  • そのためには、情報公開により個人の負担と受益が明確になりやすい地方に分権して、民主導で改革を進めるべきである。そして、100、200の積み上げがあって、あるときパラダイムシフトが起こるという仕掛けが必要だ。

4.フロアー・オープン・ディスカッション

(フロアー1)
  • 末吉市長から外国人の作業員が認められなかったというお話が合ったが、海外のログハウスを輸入して、たとえばカナダ人が日本で組み立てるというようなことは当たり前のようにやられている。
  • そういう困った事例はホームページなどに書いて公開し、類似の例を照会したらよい。
  • 福井さんの農地のお話については、荒廃地の状況が実際にひどいので自治体でも考えているが、規制に引っかかってあきらめムードになっている。それを打破する良い知恵はないか。
(福井)
  • 現場の要望、ニーズが中央官庁も含めた公の場で明らかになるよう、ご尽力いただきたい。
(末吉)
  • ご指摘のログハウスのような例は私の街にもあるが、先ほどお話したのは特殊な大型の仕組みということだろう。
(フロアー2)
  • 地域の活性化を横に広げていくためにはトータル・マネージメントが重要だと思うが、そこで行政が手を貸すのは逆効果ということも考えられる。それよりも、地域金融機関をトータル・マネージメントの中心に組み込めばよいのではないか。
(北川)
  • 三重県では四日市の関係で産官学民のコンソーシアムが生まれ、金融機関も地方銀行3行が低利融資をしようと参加してきた。古いタイプの行政が手を貸してブレーキを踏むのでなく、アクセルに換えていくべきだろう。
  • 三重県の特区構想がうまくいった理由は、産廃税のときに激論を交わす過程で民と官が率直に対話できる対等な関係を築いたからである。情報公開で議論をオープンにすることによって互いに責任のある議論を展開することが重要で、これからの行政体はそうあるべきだと思う。
  • 民も中央集権で、工場長では判断できないことが多い。そのため、私は何度も社長に会いに行った。民にも中央集権の弊害があることを認識させて、パラダイムシフトを起こす必要がある。
(末吉)
  • 北九州市の特区は市全体が対象になっており、条例で事業実施区域を定めているが、その範囲は広い。特区では、港湾管理者である市長は、埋め立て目的以外の土地利用でも決められるようになっているので、結局、どのような街づくりをするかということに市長が関与することになる。
  • 民間に要望を出されても、行政側ではどんな規制がかかっているかわからない場合が多く、一つずつ緊密に打ち合わせて調べなければならない。その際にはお互いの信頼関係が必要で、北九州の場合は、公害克服の過程でネットワークがある程度できていた。
  • 問題は、北川さんが言われたように、会社の出先では交渉権限がなくて、東京に足を運ぶ必要があることだ。会社も地域に権限を下ろすようにしてもらいたい。
(フロアー3)
  • 中国と香港の一国二制度と同じような特区として、沖縄では金融改革特区をやっているが、沖縄や佐渡のような離れたところであらゆる構造改革特区の特例措置を適用してみるというやり方の方が、散発的にあちこちでやるよりも大胆な実験ができるのではないか。
(八代)
  • 中国やアイルランドの方式が間違っているとは言わないが、沖縄の金融特区は成功しないと思う。なぜ沖縄で金融業を発展させるのかという必然性がなく、単に沖縄は遅れているから政府主導で振興しようという、これまで全て失敗してきたモデル事業の発想で行われているからだ。金融特区を作るなら、金融ビジネスが一番発達している東京でやらないと意味がないのではないかと、個人的には思う。
  • 構造改革特区の考え方は正反対である。地域がばらばらにやるので集積効果は小さいかもしれないが、全国展開の出発点と位置づけられる。
(北川)
  • 三重県でも名古屋に近い地域と紀伊半島の突端の方では全く違う。私は一国二制度論者だが、地方分権を前提として考えている。それぞれの地域が自己決定、自己責任で競争するという方向がよい。
(フロアー4)
  • 日本の将来の担い手をどう育成すればよいかが大きな問題である。構造改革特区ではどう考えているのか。
  • 特区は若者の間ではあまり知られていないと思う。関心のない人たちにどう広報していくかが重要だ。新聞などの広報だけで十分か。
(フロアー5)
  • 個別の地域でなく、連携してまとまった地域で提案したらもっと効果があるのではないか。
(北川)
  • 特区構想は、権限と責任を明確にし、地域と人材の自立を促すものである。
  • 若者に限らず地域の方に、行政は頼りになるという成功例を示すことにより、自分たちが立ち上がれば世の中が変わるという考え方の習慣づけをすることが大事だ。そうしないと民主主義が育っていかない。
  • 自治体の境界をまたいだ連携は起こってきていると思う。
(末吉)
  • 広域の申請については、たとえばロボットは福岡県と福岡市、北九州市というように、既に行われている。
  • ご質問の趣旨は、もっと広域的にやったらどうだということだろうが、まさに現在3000以上ある自治体がいくつになるのが一番いいのかという話と裏腹のことで、特区がその1つのきっかけになる可能性はあると思う。
(八代)
  • 特区の提案の主体は小さいが、だれでもまねをすることができる。だから、最初から無理に提携しなくても後で自然に提携が起こるということもありうるし、もちろん意識的にやってもよい。
  • 内閣府もネットでいろいろ発信しているが、やはり各県・市のNPOが自治体に圧力をかけ、特区室でも各県の取り組みの差がわかるような比較をすることが望ましい。遅れていることがわかれば圧力になる。あるシンクタンクの報告によると、公共投資の依存度が高い県ほど特区の申請が少ないという関係があったということである。
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