第15回ESRI経済政策フォーラム
「FTAの推進を巡って」(概要)

経済社会総合研究所
平成15年10月14日

本フォーラムの概要について、事務局の責任により以下の通りとりまとめましたので、ご参照ください。また、議事録についても、近日中にホームページ上において公表する予定ですので、議論の詳細についてはそちらをご参照いただければ幸いです。

  • (開催日時)
    10月6日(月) 14時~16時30分
  • (パネリスト)
    木村 福成
    慶応義塾大学教授
    鈴木 宣弘
    九州大学助教授
    畠山 襄
    国際経済交流財団会長
    本間 正義
    東京大学教授
  • (モデレーター)
    香西 泰
    経済社会総合研究所所長

冒頭、木村福成、鈴木宣弘両氏の基調講演をいただき(ホームページ掲載の基調講演資料をご参照下さい)、その後、パネルディスカッションを行った(パネルディスカッションの後半は、パネリスト以外の参加者の方々からの質問、ご意見にパネリストが回答しつつ議論を行った)。

1.基調講演:FTAの推進を巡って(木村福成 慶応義塾大学教授)([資料参照](PDF形式 42 KB)別ウィンドウで開きます。)

  • 東アジアの国際的生産・流通ネットワークは、各国経済における重要性、多国にわたる展開、企業内のみならず企業間(同一企業国籍間、異なる企業国籍間)のネットワークという点で、アメリカやヨーロッパよりも進んでいる。

  • こうしたネットワーク形成の背景には、輸入代替から輸出産業に対する外資容認への東アジア諸国の政策転換(80年代後半から90年代前半)、機械製造における東アジア諸国の国際競争力の高さがある。

  • 東アジア経済統合のためには、製造業の二重構造に対応するための輸入代替型産業の効率的再編、サービス・リンク・コスト(輸送費、電気通信費、コーディネーション費用、経済制度・法制)の軽減、集積の形成(経済インフラ、人的資本形成)、モノの貿易の自由化を超えた統合の推進が必要である。

  • 現時点の東アジアにおける日本の地位からみて、東アジア経済統合に果たしうる日本の役割は大きいことから、東アジア経済の特質を生かした経済統合のデザインを行っていくことか必要である。

2.基調講演:農業はFTA推進の障害か(鈴木 宣弘 九州大学助教授)([資料参照](PDF形式 230 KB)別ウィンドウで開きます。)

  • ブロック化の長期的な帰結に不安はあるが、当面、(1)FTAの「ハブ」になった国(シンガポール、メキシコ)とFTAを結んでいない不利益の大きさ、(2)欧州圏や米州圏に対するカウンタベイリング・パワー(アジア経済圏の構築)の必要性は否定し得ない。FTAの是非の判断基準として、世界全体の経済厚生より、日本の「国益」を追求せざるを得ない。

  • ただし、農業セクターをできるかぎりFTAに含めない方が日本の「国益」に合致する可能性がある。それは、保護によって歪曲されていた国際価格が上昇するため、輸入国は、保護削減による「関税収入の減少額」が、「消費者便益の増加額」より大きくなってしまう場合があるからである。

  • しかし、相手国が農産物に関心が高い以上、日本にとって農業を含めないFTAは不可能である。農産物について、最もセンシティブな品目群を除外にすることができれば、かなり多くの品目を関税撤廃対象に含めた形にすることは、不可能ではない。

  • 農業分野は、FTA推進の障害ではない。本当の障害は別にある。例えば、韓国にとっては、関税よりむしろ、検疫、規格、原産国表示、不明瞭な商慣行等の非関税障壁や、様々な制限が設けられているサービス分野等を含む、できるかぎり包括的な両国間の規制緩和を実現することが、日韓FTA成立の不可欠の条件となっている。

  • 関税を削減した場合には、直接補償が必要である。原論的には、国境措置を行わず、市場価格を下げて、農家に何らかの名目で不足分を直接支払いする方が経済厚生のロスは小さい。しかし、財政負担を許容するか否かを合わせて検討する必要がある。

3.パネルディスカッション

(畠山)
  • (木村氏に対して)サービス・リンク・コストをFTAでどうやって引き下げるのか。

  • (鈴木氏に対して)アジアだけ自由貿易圏がない。まず東アジア自由貿易圏から作っていくべきだ。FTAを作るのは、国内の産業改革につながるからである。

(本間)
  • (木村氏に対して)FTAは、政治的なプレゼンスの点でも効果がある。アジアの中で中国も含めたFTAを考えていくことが重要である。

  • (鈴木氏に対して)世界的な利益からみて、WTOとFTAの関係をどう考えればよいか。FTAに農業を含まない方が厚生が高まるのは、最適関税の理論からそのとおりだが、世界全体の厚生は農業も自由化したほうが高まる。補償は専業農家等にターゲットを絞るのがよい。

(鈴木)
  • 世界の経済厚生を高めるようなFTAにすべきである。日本の国益と世界の厚生をどう考えるかだが、米州、EUの自由貿易圏が大きくなっている状況では、アジアのFTAを広げるしかない。

  • ターゲットを絞って補償するのは重要である。

(木村)
  • サービス・リンクは離れたところの生産を結ぶもので、サービスだけではない。FTAには、関税引下げだけでなく貿易・投資の円滑化、基準・認証、知的所有権、紛争解決を組み込んでいくことが必要である。こういう細かい問題に対してはWTOよりFTAの方が効果的である。

(畠山)
  • FTAは、WTOのようにどの国にも一律に自由化しなくてよい。「実質上すべての貿易」を対象とするという原則の範囲で、相手国別にこの国なら競争上大丈夫と思った品目を対象にすることにしてFTAができる。

  • FTAの中に、輸出国が不作等でも輸出制限をしてはいけないということを入れるべきだ。

(本間)
  • 農業活性化のためには、高齢者のリタイア促進の調整コストとして、時限を区切った補償がよい。

  • FTAでは紛争処理が必要だから、経済的だけでなく、社会的、文化的に共通項があることが必要で、ある種の地域主義もあってしかるべきだ。

(畠山)
  • 米国とのFTAについては、日米ともFTAに積極的でなく、また、1,2位の経済大国がFTAをやってはWTOを損なうのではないか。

  • FTAはセクターを丸ごと除いてはいけないというWTOのルールがある。

(香西)
  • FTAは、長期的にどういう理想に近づけるかという視点がないと高いものにつく。

  • 経済統合を考える場合も、米国や中国との関係を長期的に考えていくべきだ。

4.フロアー・オープン・ディスカッション

(フロアー1)
  • 1、FTAの経過措置の間にメキシコ、チリ等で生産性向上につながる措置が取られてきたか。

  • 2、FTAの運用が、原産地規則等で実務的に困難となるのではないか。どう対応すべきか。

  • 3、中国、ベトナムのように政治体制の違う国とのFTAは可能か。

  • 4、食糧安保について、国内農業の維持と購入先の多角化の意見があるがどうか。

(畠山)
  • 1、については、メキシコ、チリではまだ実績が出ていないが、カナダのワイン産業のように改革できるのではないか。また、米国等の投資により国内産業が育つということもある。

  • 2、については、原産地規則のハーモナイズが必要である。

(本間)
  • 3、については、紛争処理のルールを作っていくことが必要だ。国際的な約束をどう守っていくかだから、政治体制が違っても対応可能である。

(木村)
  • 2、については、原産地規則をシンプルにするとともに、関税率を下げていくことが必要である。

  • 3、については、まず韓国、アセアンとFTAをやり、それを中国とのFTAの模範にすべきである。

(鈴木)
  • 4、については、今のまま保護ということでなく、農村をどう守るかについて考えるべきだ。

(フロアー2)
  • USTRのような組織が必要ではないか。

(畠山)
  • USTRのようなものをつくると協議先が増えるので反対である。

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