第16回ESRI経済政策フォーラム
「医療への市場メカニズム導入を巡って」(概要)

経済社会総合研究所

平成15年11月19日

本フォーラムの概要について、事務局の責任により以下の通りとりまとめましたので、ご参照ください。また、議事録についても、近日中にホームページ上において公表する予定ですので、議論の詳細についてはそちらをご参照いただければ幸いです。

  • (開催日時)
    平成15年11月6日(木)14時~16時30分
  • (パネリスト)
    • 青柳 俊
      日本医師会副会長 (基調講演)
    • 川渕 孝一
      東京医科歯科大学大学院教授
    • 福井 秀夫
      政策研究大学院大学教授 (基調講演)
    • 槙 孝悦
      槙コンサルタントオフィス代表取締役社長
  • (モデレーター)
    • 牛嶋 俊一郎
      経済社会総合研究所次長

冒頭、青柳 俊、福井 秀夫両氏の基調講演をいただき(ホームページ掲載の基調講演資料をご参照下さい)、その後、パネルディスカッションを行った(パネルディスカッションの後半は、パネリスト以外の参加者の方々からの質問、ご意見にパネリストが回答しつつ議論を行った)。

1.基調講演:社会保障に市場メカニズムは必要か?(青柳俊 日本医師会副会長)([資料参照](PDF形式 102 KB)別ウィンドウで開きます。)

  • 医療は、社会的共通資本であり、生存の安全保障であるから、その整備には国が責任を負う。
  • 市場原理を貫いている米国は、医療費が高く、医療の質が高くない。
  • 「市場原理」とは、自分でサービスの価値を判断することであるが、「人の命に値段をつける」ことは受け入れがたいから、サービスの価値は望み得る最大値となり、「市場原理」が働きにくい。
  • 必要な医療は、混合診療でなく保険給付の対象にすべきである。特定療養費の対象は過渡的なものであり、最終的には保険給付でまかなうべきである。

2.基調講演:医療と市場メカニズム(福井秀夫 政策研究大学院大学教授)([資料参照](PDF形式 12 KB)別ウィンドウで開きます。)

  • 株式会社は,利益を株主に還元することが本質であり、剰余金が医療外に流出するとの批判があるが、個人開業医は利潤最大化しないのか、金融機関への利子支払いで医療外に流出しないのか。
  • 特区での自由診療についての株式会社参入は、社会実験である。
  • 医療法人の「公益性」があるのか。配当ができないが、資産の売買・相続ができ、企業並み課税である。
  • 医療における情報の非対称に対する本来の対策は、カルテ・経営情報・専門家情報などを含むすべての情報開示、第三者評価の促進である。
  • 混合診療は医療の公平に反しない。保険診療の基準は普及度であり、個人の必要度と無縁である。

3.パネルディスカッション

(川渕)

  • 医療機関は真の「非営利組織」になるべきである。そのためには、NPO法人をもっとつくりやすくなるように特定非営利活動法人制度のあり方を見直すこと、医療法人の持分を放棄する際のみなし譲渡所得税を免除すること等が必要である。
  • 株式による調達コストは銀行借入より安く済むのか。
  • 特定療養費を拡大すべきではないか。
  • 取り組むべきは、まず医師数規制の撤廃と医師免許更新制の導入、次に地域医療計画の撤廃とDRG/PPS(診断群別包括支払方式)の導入であり、株式会社参入はあまり重要ではない。
  • 医師よりも外国人看護師の受け入れを考えるべきではないか。

(槙)

  • 市場のメカニズムでは、小児科の減りすぎ等の行き過ぎが起きるので、ある程度の規制が必要である。
  • 同質性、情報の完全性に問題があるので、直ちに株式会社参入とはいかない。株式会社の病院の医療法人化が起きている。株式会社が入って利益が上げられるのは都心ぐらいではないか。混合診療については、食事等保険からはずされるものが出てきたことが懸念される。
  • 医療機関は真の非営利組織になるべきであるという意見には賛成である。
  • 外国人看護師の受け入れは、看護師を出した外国が困るのではないか。

(青柳)

  • 今の株式会社の病院は赤字である。
  • 医師の資格更新がないことの問題については、医師会で生涯教育をしており、へき地等にもインターネットによる生涯教育をしていく予定である。
  • 直接金融で資金調達している株式会社は10数%である。
  • 混合診療については、特定療養費は後で普遍的に国民が使えるようにするレールに乗せるものであり、普遍性なく自分だけ満足したいということでは社会保険の仕組みは崩壊する。

(福井)

  • 間接金融でも、株式会社化すれば、資産の相続等ができる医療法人より担保価値が大きいので、資金調達がしやすいのではないか。
  • 日本が範とする外国人医師については、招聘して日本の医師が学ぶようにすべきである。

(川渕)

  • 米国やフランスでも非営利病院が多い。しかし、マネジメントは必要である。地域に根ざした非営利病院があって、病院債で資金調達している。非営利組織のあり方を議論すべきである。

(青柳)

  • 米国の非営利は、寄付文化と税控除で成り立っている。日本に当てはめることはできない。医療法人の改革は検討すべきであるが。

(福井)

  • 株式会社は、監査等が入りアカウンタビリティーがある。また、市場動向に対応できる。

(川渕)

  • 現物支給より現金支給がよく、特定療養費の拡大が必要である。これは、株式会社参入よりずっと大事である。

(青柳)

  • 混合診療と医療の周辺部分(アメニティ)について自己負担するのとは別である。

(福井)

  • 特定療養費は枠組みが限定的である。自由診療が許されているのだから、混合診療は認められるべきである。

(青柳)

  • 医師数、ベッド数は競争の元なので、規制改革で議論してほしい。

4.フロアー・オープン・ディスカッション

(フロアー1)

  • 自立投資と混合診療の違いは何か。

(青柳)

  • 自立投資(個々人の備蓄あるいは保険を財源とし、個人の選択と責任において、健康保険で給付されない先端的な医療を受けられる仕組み)は個人ですべてをまかなうものであり、一部公的という混合診療とは違う。

(フロアー2)

  • 地域の経済活性化の起動力として病院を考えることについてどうか。

(槙)

  • 成功するかどうかは難しい。
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