第17回ESRI経済政策フォーラム
「日本政府のガバナンス -予算の構造改革-」(概要)

経済社会総合研究所
平成16年3月19日

本フォーラムの概要について、事務局の責任により以下の通りとりまとめましたので、ご参照ください。また、議事録についても、近日中にホームページ上において公表する予定ですので、議論の詳細についてはそちらをご参照いただければ幸いです。

  • (開催日時)
    平成16年3月10日(水)15時30分~17時30分
  • (基調講演)
    田中 直毅 21世紀政策研究所理事長
  • (パネリスト)
    大住 莊四郎 新潟大学教授
    樫谷 隆夫 日本公認会計士協会理事
    田中 秀明 オーストラリア国立大学客員研究員
    村尾 信尚 関西学院大学教授
    矢野 康治 財務省主計企画官
    山本 清国 立学校財務センター教授

冒頭、田中 直毅氏の基調講演をいただき、その後、パネルディスカッションを行った。

1.基調講演:「日本政府のガバナンス -予算の構造改革-」(田中 直毅 21世紀政策研究所理事長)

  • 中央政府、地方政府ともに債務残高が積み上がっている現在の財政状況を踏まえれば、21世紀の予算制度について考えるべき。今まで放っておいた問題(年金問題を含む)について、ゼロベースでの見直しを行う必要がある。
  • ガバナンスの問題を考えるときには、委託者に対する受託者責任という観点が重要である。
  • 日本政府が国民の信託に答えるには、専門性を組織化して問題に取り組む必要があるが、現在の霞ヶ関にそのような仕組みはない。
  • 日本政府の現状は分掌管理であり、この仕組みを維持する限り、専門性の組織化を前提とした受託者責任の遂行体制は生まれない。
  • 予算制度については、カナダがやったように、3年連続の予算を作って削減目標を明示することが予算のゼロベースでの見直しにつながる。

2.パネルディスカッション

冒頭報告(1):「モデル事業について」
( [資料参照 1](PDF形式 7 KB)別ウィンドウで開きます。, [資料参照 2](PDF形式 281 KB)別ウィンドウで開きます。, [資料参照 3](PDF形式 16 KB)別ウィンドウで開きます。 )
(内閣府参事官(予算編成の基本方針担当) 藤田 利彦)
  • 平成16年度予算案に盛り込まれたモデル事業は、新しい予算編成プロセスの確立に向けた第一歩。
  • 「モデル事業」のポイントは、(1)政策目標を極力アウトカム指標で事前に明示したこと(2)効率的・弾力的な予算執行を認めたこと(3)厳格な事後評価を実施して次の予算編成へ反映させていくことの3点である。
冒頭報告(2):「政策群について」
( [資料参照 4](PDF形式 374 KB)別ウィンドウで開きます。, [資料参照 5](PDF形式 401 KB)別ウィンドウで開きます。, [資料参照 6](PDF形式 442 KB)別ウィンドウで開きます。,
[資料参照 7](PDF形式 418 KB)別ウィンドウで開きます。, [資料参照 8](PDF形式 421 KB)別ウィンドウで開きます。, [資料参照 9](PDF形式 287 KB)別ウィンドウで開きます。 )
(内閣府参事官(財政運営の基本担当) 百嶋 計)
  • 「政策群」もモデル事業と同様に、平成16年度予算案からの新しい試み。
  • 「政策群」のポイントは、(1)政策目標の達成に向け規制改革等と予算等を組み合わせたこと(2)複数の府省にまたがる政策について府省横断的に対応して予算の重複の排除を図ったこと(3)民間活力を同時に最大限に引き出す取組みを行ったことの3点である。

 そのほか、「諸外国の業績評価制度と予算制度比較」( [資料参照10](PDF形式 28 KB)別ウィンドウで開きます。 )の資料を配付。

(村尾)
  • 予算の質的改善も重要ではあるが、量的削減が真っ先に取り組むべき課題。しっかりと数字を示した財政の中期計画を作って内閣として出していくべき。

  • 予算編成の責任者が納税者に対してわかりやすいような予算編成のあり方を考えるべき。

(山本)
  • 議会が行う項単位の予算統制、財務省が行う査定統制及び各府省における目単位の統制の関係を明確にすべき。

(田中秀)
  • 予算案は希少資源の配分を巡る政治的な闘争であり、放っておけば赤字がふくれあがるものである。

  • 連立政権においては、その傾向は一層顕著になるが、オランダでは連立政権合意の中で向こう4年間の歳出総額の内訳を先に決め、その中で単年度予算の編成をした。このような取組が必要ではないか。

(大住)
  • 総枠を決めて厳しい歳出の削減を進めるには、形式的な一律カットでは限界があり、質的な改革が必要。

  • 政策目標を立てて成果主義に移行していく必要があるが、スローガンにとどまっており、政策目標となっていない。

(樫谷)
  • 政策に対するコストを明らかにし、日本政府の現状と将来の姿を国民にわかりやすく示していくには、公会計システムに発生主義を取り入れていくことが一番有効。

(矢野)
  • 欧米諸国のNPMは、厳しい歳出削減が行われる中で、少しでも行政サービスの低下を緩和するために現場に自由度を与えるというコンセプトである。

  • 我が国のNPM論議において事後チェックの重要性が強調されているが、事後評価の難しさ、評価結果を次の予算に反映させていく難しさも念頭に置いておくべき。

(村尾)
  • 危機的な財政状況にもかかわらず、国民には危機感がない。もっとも危機感を感じるべき若い世代は政治に関心がない。

  • 財政再建に取り組むには、情報公開が最も重要であり、納税者に対して説明責任を全うできるかという観点に尽きる。

(山本)
  • 諸外国の学ぶべき点を吸収して日本でも取組を進めていくべき。例えばニュージーランドには、政権が変わっても財政規律を担保するための仕組みとして財政責任法がある。

  • NPMの効果は必ずしも1%や2%の効率化にとどまるものではなく、2割3割の削減効果も挙げうる手法である。

(田中秀)
  • 諸外国の取組は経済危機、政権交代又は外圧により改革をやらざるを得ない状況があって生まれたものである。日本ではそのようなきっかけがない中で取り組まなければならないので漸進的にならざるを得ない。

  • 中期財政フレームに基づいた予算編成ができている国は、予算が終わってから中期推計を出すのではなく、中期推計の枠組みの中で次の予算を考えており、両者のリンケージが強い。

(樫谷)
  • 歳出削減は一般会計だけを対象に進めるのではなく、特別会計も含めた改善の努力をすべき。

  • 透明性の高い公会計制度はしっかりした財政運営の基本であり、本当にやる気があれば十分に実現可能。

(大住)
  • 日本経済が比較的まだ安定している中では漸進的な改革しかできないかもしれないが、その場合においても情報の開示を進めること、抜本的な歳出削減に取り組めるツールとして成果主義の導入を進めることの2点は最低限必要。

(矢野)
  • 中期的な財政計画については、どのような形式で定めるかよりも中身とそれを実行するリーダーシップが重要である。

  • アウトカムベースの政策評価は外部要因をどう評価するかが難しく、各国とも次年度以降の予算への反映の方法に悩んでいる状況である。

(山本)
  • アウトカム目標での評価は基本的に困難であり、次の予算への反映やインセンティブ措置を考える場合にはアウトプット目標での評価が重要である。

(樫谷)
  • 予算への反映よりも、むしろ人の評価や組織の評価に結びつけたり、仕事が良くできる組織にどんどん仕事を投げていくような仕組みを考えていくべき。

(村尾)
  • 余らせた予算の半分を、翌年度その担当が自由に使えるという制度を導入した自治体で、経費節減の取組が大きく進んだ例がある。

(矢野)
  • 目標を達成してお金が余ったという場合において、担当行政官がうまくやったから余ったのか、元々余るべくして余ったのかをきちんと峻別していくことが必要。

  • 血税である予算は各省の可処分所得ではないので、自由に使えるお金として各省に裁量を与えることには問題がある。

(山本)
  • 弾力的な執行を認めてやる場合には、事前の査定において効率性を見込んだ査定を行うことが前提で、その上で余らせた場合にインセンティブを付与する仕組みにしなければならない。

  • モデル事業の取組についても、従来のやり方でやった場合に比べ、どれくらい効率性が上がったのかをきちんと検証していくことが必要。

(田中秀)
  • 次年度の予算確保のための評価をしたい要求省庁と、歳出の削減のための評価をしたい財政当局との間には利害の対立があり、双方の間で信頼の置ける評価の仕組みが必要。

(村尾)
  • 政策評価が単なるペーパーワークと化している国もあり、政策評価によって納税者に対する説明責任を果たす、という骨太の信念が必要。

(山本)
  • 受益と負担とコストの3つの情報を政策ごとにきちんと開示し、議会でオーソライズしていくことが必要。

(田中秀)
  • 財政規律の確立に成功した各国においても、財政状況が好転すると改革のコンセンサスが薄れ、財政規律を維持していくのに非常に苦労している。

  • 日本に財政規律を維持し、改革を進める合理性について、いかに国民的なコンセンサスにしていくかが重要である。

(大住)
  • 各国のNPMの取組にも問題点はあったが、少なくとも改革をしないよりは良かった。各国の問題点を指摘して改革をストップするのではなく、まず第一歩を踏み出すべき。

(樫谷)
  • 国民に対するサービスの提供について、受益と負担の関係の中で、きちんと負担についても国民の負担能力との関係を見ていく必要がある。

(矢野)
  • 現在財務省でも予算執行調査や公会計制度の見直しを進めているところであるが、情報公開を進めていくこと、うまくいっていない予算について査定当局が調査を行うことがポイントである。

(村尾)
  • 予算編成の過程における要求部局と査定部局のやりとりを徹底的に公開していくことで透明性が高まる。

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