第19回ESRI経済政策フォーラム
「若年の雇用を巡る問題について」(概要)

経済社会総合研究所

平成16年6月28日

本フォーラムの概要について、事務局の責任により以下の通りとりまとめましたので、ご参照ください。また、議事録についても、近日中にホームページ上において公表する予定ですので、議論の詳細についてはそちらをご参照いただければ幸いです。

  • (開催日時)
    平成16年6月28日(月)14:00~16:30
  • (パネリスト)
    • 伊藤 正史
      厚生労働省職業安定局若年者雇用対策室長
    • 玄田 有史
      東京大学社会科学研究所助教授
    • 重松 司郎
      兵庫県教育委員会事務局義務教育課長
    • 三谷 直紀
      神戸大学大学院経済学研究科教授
    • 村田 弘美
      株式会社 リクルートワークス研究所主任研究員
  • (モデレーター)
    • 菅原 英夫
      内閣府経済社会総合研究所総括政策研究官

冒頭、玄田 有史、三谷 直紀両氏の基調講演をいただき(ホームページ掲載の基調講演資料をご参照下さい)、その後、パネルディスカッションを行った(パネルディスカッションの後半は、パネリスト以外の参加者の方々からの質問、ご意見にパネリストが回答しつつ議論を行った)。

1.基調講演: 若年就業対策としての「14歳の就業体験」支援(玄田 有史  東京大学社会科学研究所助教授)([資料参照](EXCEL形式 27 KB))

  • 「ニート(NEET; Not in Education, Employment, or Training)」と呼ばれる、就職も進学もせず、職業訓練も受けていない若者が増加している。マクロの労働需給が改善し若年の雇用が改善しても、取り残された若者の問題が深刻になる。
  • ニートは職探しさえもできない。これに対しては、義務教育段階で、働いていくことができるという気持ちを持たせること、社会とコミュニケートしていけるようにすることが重要である。しかし、このような施策が行われているのは兵庫県と富山県のみである。

2.基調講演: 欧米の若年雇用対策について(三谷 直紀 神戸大学大学院経済学研究科教授)([資料参照](PPT形式 354 KBEXCEL形式 22 KB))

  • 欧米の若年雇用政策は、労働供給面における若年の就業能力を高める政策、失業者及び失業の危険性の高い若年への政策、労働需要面における高齢者の早期引退制度、若年への労働需要を拡大する政策に分類される。
  • しかし、ドイツのデュアルシステム(学校教育と職場訓練の組み合せ)等の例外を除き、概して評価は低い。ドイツのデュアルシステムの評価が高いのは、労使関係に基づき、修了資格等が地域で評価されているためである。
  • 日本への教訓としては、就職困難な若年(中途退学者等)に対する対策に資源を集中させること、早期の持続的な対策が有効なこと、労働市場の構造や制度・労使関係の違い・特色を踏まえること(日本の「学校による職業紹介」等)、労働市場全体のあり方(中高年者や女性等)を考慮した政策が必要なことがあげられる。

3.パネルディスカッション

(伊藤)([資料参照](PDF形式 334 KB別ウィンドウで開きます。PDF形式 493 KB別ウィンドウで開きます。PDF形式 353 KB別ウィンドウで開きます。PDF形式 436 KB別ウィンドウで開きます。))

  • 求人の大幅減少、企業の求める職業能力の高度化による採用厳選等を要因に、若年失業、不安定就労の増大等が生じている。若者の能力蓄積、キャリア形成等の観点からも重大な課題である。
  • 「若者自立・挑戦プラン」の推進により、卒業後フリーター・無業者となることを抑制するとともに、フリーター・無業者の安定的な就業への移行を促進し、若年者の職業的自立を推進している。

(重松)

  • 兵庫県で実施しているトライやる・ウィークは、すべての公立中学校の2年生で5日間行う。生徒の意欲を大切にしながら、生徒本人に体験希望先を考えさせる仕組みであり、福祉活動や文化活動もあるが、70%以上が職場体験である。推進体制については、学校、教育委員会だけではなく当初から全県庁で取り組み、地域とのマッチングでは企業等も入った推進体制をつくり、県民運動として取組を進めている。
  • 成果としては、生徒が挨拶するようになったこと、生徒と地域のつながりができたこと、生徒の視野が広がったこと、生徒が将来の進路を見通せるようになったこと等があげられる。
  • また、職場体験3日目から生徒が自分でやり始め、5日間あると何をやったか生徒がつかめる。このため、職場体験は5日間必要である。

(村田)([資料参照]([1]PDF形式 336 KB別ウィンドウで開きます。・[2]PDF形式 432 KB別ウィンドウで開きます。・[3]PDF形式 427 KB別ウィンドウで開きます。・[4]PDF形式 467 KB別ウィンドウで開きます。・[5]PDF形式 349 KB別ウィンドウで開きます。・[6]PDF形式 552 KB別ウィンドウで開きます。・[7]PDF形式 223 KB別ウィンドウで開きます。・[8]PDF形式 559 KB別ウィンドウで開きます。・[9]PDF形式 280 KB別ウィンドウで開きます。))

  • 個人の労働観が多様化し、個人に合った施策で対応しないと上手く就職できなくなっている。イギリスのニューディールでは、カウンセラーに予算執行の裁量があり、マンツーマン・システムで一人一人に合った対応をしている。アメリカのキャリアセンターは、若者に近い年齢のカウンセラーを配置している。フランスの職安は、全国商工業雇用連合の資本が入り、民間と契約して、求職者の市場価値を査定し訓練を行っている。
  • キャリア教育では、欧米の長時間のインターンシップ、アメリカでは興味のある職業に就いている人に密着してその仕事ぶりを観察するジョブシャドウイング等がある。州の将来の産業構造を想定し医療系人材の養成に力をいれている。
  • 若年雇用対策としては、学生に派遣等の非典型を含めた雇用形態とその社会制度の違いを教えること、若者がキャリア形成にとらわれて就職できないことがないようにRole Playing型のキャリア形成を教えることをあげたい。

(三谷)

  • 若い人に出来るだけ早期に対応することが大事であり、マンツーマンの対策が効果的である。

(玄田)

  • 若年雇用のキーワードは次の3つである。
  • 第1に、個への対応が重要である。一人一人を大切に支援し、自分のためにやってもらっていると思われることが大事である。トライやる・ウィークでも個別対応が必要であり、企業と学校をつなぐ大人が必要である。
  • 第2に、自治体が主体となるべきである。ニートはリアルな情報に欠けるため、地域に足を運ぶことが必要である。
  • 第3に、NPOと行政、労働行政と教育行政等の連携が重要である。兵庫、富山の方式を全国に広げるべきであり、国の予算援助が必要である。
  • また、なぜ若い人が働いた方がよいか考えるべきである。

(伊藤)

  • ジョブ・カフェについて、都道府県を設置主体に位置づけているのは、地域の実情、課題を反映するためである。
  • NPOの活用等により、若者が若者に対応するといった、若者をひきつける支援方法を工夫している。
  • ジョブ・カフェでは、個への対応が重要な視点である。

(重松)

  • トライやる・ウィークは、3人で1班程度の少人数単位での受入れである。
  • トライやる・ウィークでは、子供の動機付け等で家庭との連携、受け入れ先の開拓等で企業との連携が重要である。

(村田)

  • 企業の採用厳選については、フランスで即戦力しか採用しない企業に訓練税を課す例がある。

4.フロアー・オープン・ディスカッション

(フロアー1)

  • ニートには、労働需給が悪くて就業意欲がなくなるという要因もあるのではないか。

(フロアー2)

  • パラサイト・シングルもニートの原因ではないか。
  • 高度な職業能力の開発が必要ではないか。
  • 社会保障負担が企業の安上がり労働需要を生んでいるのではないか。

(フロアー3)

  • 学校による職業紹介を先生はやりたくてしているのか。

(玄田)

  • ニートには不況の影響もあるが、教育、家庭環境の問題が重要である。
  • パラサイト・シングルはニートの原因ではなく、結果である。
  • 高度な職業能力がなくても働けると若い人にわかってもらったほうが、就業意欲がなくならない。
  • 社会保障負担が労働需要に影響する問題は大きい。
  • 学校による職業紹介で先生の負担は大きく、要員確保が必要である。やる気の問題ではない。
  • 不登校の生徒でトライやる・ウィークに5日全日参加した 生徒の登校率が上昇する事実がある。中学不登校の生徒に対し、明確な処方策がないなかで、部分的ではあるにせよ、居場所を探すやり直しのきっかけとしての14歳の就業体験事業の意義は小さくない。

(三谷)

  • 学校による職業紹介という日本の特色あるシステムも一層充実させるべきである。労働行政との連携も必要である。

(伊藤)

  • ジョブ・カフェでも先生や保護者を対象としたセミナーを行っている。
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