ESRI-経済政策フォ-ラム:
日本21世紀ビジョンシリーズ「効果的な少子化対策のあり方を求めて」(概要)

経済社会総合研究所
平成16年11月30日

本フォーラムの概要について、事務局の責任により以下の通りとりまとめましたので、ご参照ください。また、議事録についても、近日中にホームページ上において公表する予定ですので、議論の詳細についてはそちらをご参照いただければ幸いです。

なお、現在、経済財政諮問会議において2030年の日本の経済社会の姿を見据えた「日本21世紀ビジョン別ウィンドウで開きます。」を検討しており、本フォーラムは同ビジョンの策定作業の一環として開催されたものです。

  • (開催日時)
    11月9日(火)10:00-12:30
  • (パネリスト)
    池本 美香
    株式会社日本総合研究所調査部主任研究員
    大石亜希子
    国立社会保障・人口問題研究所第2室長
     
    [日本21世紀ビジョン経済財政展望WG委員]
    樋口 美雄
    慶応義塾大学商学部教授
    増田 雅暢
    内閣府共生社会政策統括官付参事官(少子・高齢化対策第1担当)
    山田 昌弘
    東京学芸大学教育学部教授
     
    [日本21世紀ビジョン生活・地域WG委員]
  • (モデレーター)
    林 伴子
    内閣府経済社会総合研究所主任研究官
     
    [日本21世紀ビジョン経済財政展望WG委員]

冒頭、林伴子氏のイントロダクションの後、樋口美雄氏より基調講演をいただき(ホームページ掲載の基調講演資料をご参照下さい)、その後、パネルディスカッションを行った。最後に会場参加者の方々との質疑応答があった。

1.イントロダクション (林伴子氏)([資料参照 1](PDF形式 41 KB別ウィンドウで開きます。), [資料参照 2](PDF形式 28 KB別ウィンドウで開きます。))

  • 第2次ベビーブーム世代が現在30-33歳になっているにもかかわらず、第3次ベビーブームが生じていない。

  • 少子化は重要な課題であり、現在策定作業中の日本21世紀ビジョンの議論においても大きなテーマとなっている。少子化の議論には、いかに少子化に歯止めをかけるかという少子化抑制戦略と、人口減少に対して経済社会の仕組みがいかに適応するかの2点があるが、今回は前者の少子化抑制戦略について議論する。

  • 理想子ども数は2.56、実際に持ちたい子どもの数は2.03にもかかわらず出生率は低下傾向にあり、現在1.29と低水準にあるが、いかにこれを反転させるかが重要。

  • 家族政策への財政支出が日本は多くなく、家族政策財政支出/GDP比をOECD間で国際比較すると日本は低い。

  • 家族政策に係る財政支出と出生率の間には緩やかながら正の相関がみられる。無論、単に家族政策支出を増やせばいいというものではなく、効果的な施策を実施する必要がある。

2.基調講演「女性の就業と少子化対策」 (樋口美雄氏)([資料参照](PDF形式 117 KB別ウィンドウで開きます。))

  • バブル後、企業と働く人との関係が変わった。社員の自己責任の追求の流れが強まった。給与体系が変更され、家族手当などが廃止された。企業が社員の生活を保障するというパターナリズムが変化してきた。

  • 80年代、所得が伸び、パラサイトシングルなどが生まれ、豊かさが結婚を遅らせた。90年代は晩婚化に加え、子どもを持つことのへの制約が厳しくなった。

  • 1975-2003年のOECD諸国の女性労働力率と合計特殊出生率の関係を単純にみると、女性就業率が上昇するにつれ、少子化が進むという、トレードオフ関係がみられる(図1)。

  • 女性にとって仕事と子育てはトレードオフにあり、また現在女性が多く働くと将来人口が減るというトレードオフ関係もある。さらには、現在の財政収入増と将来の担い手減少というトレードオフ関係もある。女性が家に戻るということではなく、選択肢を広めていく必要がある。海外では仕事と子育ての両立は無理ではなくなっており、グッドプラクティスがある。

  • 80年の女性労働力率と出生率の関係を国際比較すると(図2)、右下がりだが、90年では右上がりとなっている(図3)。国によっては、女性労働力率上昇が出生率低下となっておらず、トレードオフが90年代はゆるくなってきている。その変化のウラには施策があった。

  • 先進国の出生率の推移をみると、イタリア、スペインなど地中海諸国は少子化が進んでいる(図4)が、フランス、スウェーデンを見ると、出生率は変動しうるものと言える。スウェーデンは、補助金など家族政策により80年代上昇したが、90年代景気が低迷し、失業が上昇し、出生率は低下した。90年代後半再び上昇基調に転じた。

  • 日本は出生率が低下傾向にあるが、反転のためには、文化的背景もあるものの、家族政策も重要なテーマではないか。

  • 女性の就業と子育ての両立支援策には限界がある。キャリア女性よりもフリーター女性の方が結婚しておらず、90年代の労働市場では不安感が大きな影響を与えている。

  • 育児休業ではその範囲、正社員のみが対象か問題がある。

  • 子育ての時間的コストは女性が負担している。夫の働き方にも問題がある。企業では育児休業中の業務分担、次世代育成支援をどう求めていくかという課題がある。コミュニティがきちんとしているところでは少子化の進行が遅く、コミュニティへの支援も必要。行政としての保育サービス充実も必要。企業と行政による女性の両立支援策や、夫の役割と男女共同参画をともに進める必要がある。

  • 男女雇用機会均等法はできたが、女性の継続就業が容易になったとはいえない。景気要因が影響を与えており、バブル後は継続就業が減少している。(表1)

  • 経済的コストをみると、女性の過半が非正規社員であり、パートと正規社員との格差が非常に大きく、平均賃金でみるとバブル後格差は35%から43%へ拡大した。家族は教育費などの負担があるのに加え、再就職による賃金の大幅低下という機会費用がある。保育所や教育機関への補助により保育料などを低下させているが限界があり、所得税の実額控除制度の導入など、今後はサービスを享受する個人へ直接補助する仕組みに変えるべき。

  • 出生率は与件ではなく、変動するものである。少子化は自己選択の結果として少子化を前提にする議論があるが、選択をする上での制約をゆるめ、選択肢を増やすことが重要。

  • 所得が上昇すると、仕事と育児はトレードオフにあり、出生率は下がる。また、所得の上昇により子どもの量から質に転換すると、子育てコストが増大し、出生率が下がる。他方、所得が下がると理想の子ども数を達成できなくなり、出生率が下がる。この点が特に重要である。

  • 労働市場では、正規社員は長時間労働が進む一方、労働時間の短い非正規社員が増加するという二重構造が生じている。90年代に男性の週60時間以上労働している雇用者比率は2割近くまで上昇した(図5)。これは一日4時間残業していることになる。リストラされなかった人は多く残業し、自分の時間を失っている。一方でフリーターやニートが増加している。女性は、キャリア志向が晩婚化をもたらしたといわれてきたが、家計経済研究所のパネルデータをみると、必ずしもそうはいえない。むしろ、雇用不安が結婚を遅らせているといえる。

  • 慶応大学のパネルデータを使って分析したところ、フリーターの方が結婚していない。結婚したいが、経済的基盤がないので、結婚できていない。以前は、フリーターは意識の問題、若者の問題とされてきたが、最近は30代のフリーターも急増しており、若いから正社員にならないという問題ではなくなってきた。

  • したがって、長時間労働で高所得、時間的余裕はあるが低所得という二極化がすすんでいる。また、両立支援の対象にならない人も増加しており、雇用不安、所得不安、将来不安といった不安が拡大している。

  • 制約付の選択の結果が少子化であり、いかに制約を緩和するかが重要。特定の対象に対して特定の施策というふうにきめ細かく対策をし、個々に選択してもらうことが重要。

(池本)([資料参照]([1]PDF形式 295 KB別ウィンドウで開きます。・[2]PDF形式 445 KB別ウィンドウで開きます。))
  • 子育てに関わる時間をいかに考えるかが重要。これまで女性の働く権利に配慮してきたが、出生率が低下した今、より広い対策が必要。出産世代の感覚を大切にした対策をすべき。これまで働く女性だけがもてはやされ、専業主婦バッシングの動きもあった。また、仕事も子育てもということで女性は忙しくなった。少子化について、出産世代の悩みが注目されず、年金対策や労働者数のこととして捉えられていることは問題。

  • 少子化の背景として、男女雇用機会均等法試行後、女性の時間の価値が高まり、子育ては損・産み損という意識がみられるようになった。昔は農業を誰も負担と思っていなかったのに、時間感覚が変化したことにより農業に対する見方が変わったことと同様である。また、親になることについて選択の自由と自己責任が強調され、親になることの責任が重くなっている。自由な選択の結果、子を産むが、これは一見自己責任のようにみえるが、実際は限られた選択肢の中から選択させられている。また、出産世代は協力して社会を変えていく経験が乏しく、個人個人間の競争の時代に育ち、社会にかかわらない世代である。

  • 「社会力」が低下している背景には、きょうだい数の減少、家電製品の普及、都市化などで人とかかわる機会が減っていることがあり、そのことが未婚率の上昇、高い離婚率、母子世帯の増加にもつながっている。

  • 子育て負担を軽減する政策がとられた一方、子育てに関わりたい人も時間をもてなくなっている。子育ての効率化も重要だが、子育ての時間を親に保障することも大切。

  • 仕事のために自分の生活を犠牲にしてもいいと考える男性は減っているなど、生活を大切にしたいという意識が高まっている。小さな子のいる父親の帰宅時間をみると、南関東では2割もの父親が23時以降に帰宅している。また、女性は近所付き合いもなく、孤独な子育てをしている。

  • 育児休業、正社員でかつ時間短縮労働など、子育ての時間や、子育てをする権利を保障する政策が必要。

(大石)([資料参照](PDF形式 57 KB別ウィンドウで開きます。))
  • 1.57ショック以降、少子化が注目されてきたが、出生率は70年代からすでに人口を維持可能な2.08を割り込んでいた。80年代には晩婚化が進んだが、結婚した人は子どもを2人以上産んでいた。ところが90年代に入ると晩婚化に加えて未婚化がすすみ、50歳時点で未婚の人は男性で12.8%、女性で5.6%と、80年代よりはるかに上昇している。また、結婚しても生む子供の数が減少した。その一方で、できちゃった婚が増加し、今や第1子の25%ができちゃった婚によるものである。

  • 若年層の就業環境の悪化が晩婚化・未婚化に影響を与えている。また、子育て世帯の経済状況の悪化が夫婦出生力の低下に影響を与えている。

  • 男女とも学卒直後の正規就業率が低下している。また非正規雇用・無職が増加、正規雇用が減少している。親と同居している未婚男性が増加しており、女性は引き続き高い水準で同居している。

  • 学卒時の正規就業が狭き門となったことで、非正規就業・無職が増加、親元から独立できず、晩婚化・未婚化が進んでおり、若年層の就業環境の悪化が晩婚化・未婚化をもたらしている。

  • 今の子どもの数は、87年と2002年を比べると、平均理想子ども数、平均予定子ども数、平均出生子ども数も低下している。理想の子ども数と予定子ども数の差も拡大した。

  • この10年で子育て世帯の実質所得が低下した一方、高齢者世帯の実質所得は増加している。実質所得の低下、非正規雇用化と失業リスクの上昇、仕事と育児の両立困難の3点が夫婦出生力の低下をもたらした。

  • 政策的インプリケーションとしては、適切なマクロ経済運営が重要なこと、家族政策は労働政策とのリンケージを図ること、高齢者と子育て世帯の配分問題を考えるべきことなどがあげられる。

(山田)([資料参照](PDF形式 15 KB別ウィンドウで開きます。))
  • お金とセックスは、人間が子どもを生み育てるために最も必要とされるものであるが、今の日本では政策課題として論じることはタブーで、ほとんど無視されてきた問題である。また、これまでは論じなくてもよかったのが実態である。90年代に未婚化だけでなく、また夫婦出世力が低下している状況では、タブーを論ぜずに少子化問題を議論することはできなくなった。近年婚前妊娠が増える一方で、セックスレスが増えている。第1子を産んだあとセックスレスになるという事例も多い。以前のような結婚前にはセックスをせず、結婚して必ずセックスするという関係ではなくなっている。

  • 若年男性の職業が不安定になっており、そういった男性は結婚相手として選ばれにくい。調査を行った青森では、未婚男性の大部分が年収400万円以下であるが、未婚女性の男性への期待年収400万円以上が過半いる。これは収入が高い人は既に結婚してしまっており、収入の低い未婚男性しか残っていないともいえる。東京でも、未婚男性の年収が600万円以上は3.5%しかいないが、約4割の女性が600万円以上を期待している(表1)。

  • 既婚者の将来の自分の生活に対する見通しと、追加予定子ども数をみると、豊かでなくなっていると感じている者では予定子ども数は少ない。

  • 日本社会では出生対策は難しい。雇用の二極化が進み、育児休業、保育対策が進んだ。今は男性もフリーター化し、女性の正社員も多くない中で、育児休業、保育サービスを利用できない人が増えている。

  • 政策的なインプリケーションとしては、働く女性の対策だけではなく、女性をきちんとした立場で働かせた上で、保育園なり育児休業なりを整えなくてはいけない。つまり、困難だが、両方しなければいけない。

  • 女性は子どもにお稽古ごと、男性は子どもに個室を与えたいという意識が強く、個室が用意できる数しか子どもを生まないことになってしまっている。

  • 1990年ぐらいまでの少子化の原因は、パラサイトシングルの増大による晩婚化、未婚化で、1990年代からは若者の生活の不安定化による少子化がさらに加わったのではないか。

  • 所得再配分も検討する必要がある。中高年の所得が高くなると出生率にマイナスで、若い人の所得が高くなるとプラスになると考える。

(増田)([資料参照](PDF形式 67 KB別ウィンドウで開きます。))
  • 現在、第1回目の少子化社会白書を作成している。少子化対策の経緯としては、90年に1.57ショックで少子化が認識され始め、94年に旧厚生省を中心にエンゼルプランが策定され、保育サービスの充実が図られることとなった。99年には新エンゼルプランが策定され、子育てと仕事との両立支援に焦点があてられ、2003年には次世代育成支援に関する当面の基本方針がだされ、本年は少子化社会対策基本大綱を制定、現在、新新エンゼルプランの策定作業中である。

  • 出生数をみると、90年代までは横ばいで推移していたが、これは第2次ベビーブーム世代が出産期を迎えていたことから維持されていた。そのため、少子化に対する危機感が90年代は弱かった。

  • 99年の新エンゼルプランでは、保育サービスなど子育て支援サービスの充実や仕事と子育ての両立のための雇用環境の整備について数値目標を立てた。今年がその5年目に当たり、新新エンゼルプランを年内に作ることとなっている。総務省が行った新エンゼルプランの政策評価では、仕事と子育ての両立による負担感は十分とはいえないが、緩和されてきているが、子育てそのものの負担感は必ずしも緩和されているとはいえず、出生率は低下の一途であると評価された。

  • 次世代育成支援法が制定され、自治体や大企業は本年中に行動計画を策定することになっているが、両立支援など幅広い内容の計画となっている。

  • 少子化社会対策大綱では、重点課題としてまず、フリーター増加などをうけ、若者の自立とたくましい子供の育ちを上げている。また、生命の大切さと家庭の役割等についての理解も盛り込んでいる。

  • 本年9月の内閣府の世論調査では、少子化対策で特に期待する政策として、仕事と家庭の両立支援と働き方の見直しの促進、子育てにおける経済的負担の軽減に対して50%以上の回答があった。

  • 25-34歳の女性の人口は2010年頃に800万人を切り、その後減少していくことを考えると、現在が少子化対策の好機で、少子化対策は待ったなしであるといえる。

  • 社会保障給付費における児童関係給付をみると、3.2兆円、3.8%に過ぎず、高齢者関係給付などと比べて極めて少ない。今後、少子化対策に重点をおくためには、社会保障給付のなかの配分を議論していく必要があるのではないか。

(樋口)
  • 賃金カーブのフラット化と出生率の関係については、高齢化の進展で企業の給与総額を引き下げようということから年功賃金制度が崩れてきているなか、フラット化が少子化への歯止めになるかは疑問。すなわち、35歳くらいで第1子を持った場合など、子どもが大学を卒業する前に定年を迎えるのではないかと心配している。そうした場合、中高年で賃金が下がってほしくないと感じるので、少子化を抑制することにつながるかは疑問。

  • むしろ政策面で、社会保障費を高齢者に使うのかどうかなど世代間の対立が現れてくることの方が問題。公共事業費なども含めて経済財政諮問会議等で検討していくべき。諸外国と比べ日本は公共事業費がGDP比6%と多いが、フランス、ドイツなどでは公共事業費は雇用政策費と同じくらいで、GDP比3%程度である。日本の雇用政策費はGDP比0.6%ということで、公共事業の1割に過ぎず、家族政策費も同様に低い。こうした費用を増やす必要があると同時に、欧米と異なり若年雇用対策にもほとんど経費が使われてこなかったが、力を入れていく必要がある。

(池本)
  • 長く働く人でも、本当はそれほど長く働きたいと思っておらず、子育ての時間を取りたいと思っているのはないか。それを進めれば、自然と雇用が増え、一部の正社員に雇用が独占されなくてすむのではないか。男女ともに子育ての時間を確保できる働き方をまず整えることで、労働をできるだけ分配していくことが必要ではないか。また、男女ともに子育ての時間も確保しながら働けるか、若い人を積極的に採用しているかなどを企業の社会的責任としてチェックできるような仕組みを整えてはどうか。

  • 日本での育児休業取得はキャリア形成にマイナスとの考えがあるが、スウェーデンやデンマークなどではしっかりと取得し、若い人の雇用機会を創出している。育児休業をしっかりとる方が、これまでにない経験をすることで、企業の生産性向上につながるという考えも必要ではないか。

(大石)
  • 労働時間について、現場では裁量労働制や、成果賃金が普及し、労働時間管理が難しくなっている。長時間働いて成果を出すことにつながりやすく、労働時間短縮が難しい。評価の仕方や、裁量労働制のなかでの適切な労働時間管理について検討すべき。

  • パートや請負など非典型就業者と正社員との間の、社会保障上の地位をはじめとした処遇の差をなくすべき。現状では労働時間によって雇用保険や社会保険の適用範囲が異なるが、非正規社員もリスクを抱えて働いている以上、社会保障の対象の範囲を広げるなどすべき。

(樋口)
  • 労働市場が流動化すれば、子育てで一旦やめたあと再就職しやすくなるので、両立支援などはいらなくなるとの考えがあるが、これは難しい。これまでは雇用継続を軽視しすぎてきた。転職コストの引き下げも重要だが、雇用継続をさせるために、育児休業期間を延ばすなど充実させていく考えもありうる。離職期間が長いとキャッチアップも難しいので、短時間勤務制度を導入するべきではないか。

  • 企業の中で、ライフステージにあった働き方が選べるよう、転換制度を促進すべき。そのためには、パートと正社員との格差を是正すべき。同一企業内は、同一職務は同じ給与の決め方をすべき。

  • 社会保障の適用拡大はまさに重要である。正社員を減らしてパートを増やしている背景には、人件費の固定化の回避という側面もあるが、それ以外にも、テンポラリーワーカーについての規制緩和を進めた一方、正社員の雇用保障を強めるという法体系のゆがみが生じており、このため労働市場の二重構造化しているのではないか。

  • OECDによると、規制緩和による雇用創出は重要だが、その進め方が重要である。日本は正社員と非正社員との格差が大きいが、テンポラリーワーカーばかり規制緩和を進めれば、企業は調整しやすいそういった労働者を雇うのは合理的である。雇用の法体系、指針を考えていく必要があるのではないか。

  • 労働時間について、日本においては女性だけではなく、男性も含めた働き方が少子化対策では問われている。経済が成長している間は問題とならなかったが、低成長となって問題が顕在化してきた。これまでは、企業の福祉政策や生活給的な給与支払い、昇進によって顕在化しなかったが、今、こうした歪みが顕在化している。

(山田)
  • 労働の二極化に関し、不安定化は不可避である。中小企業では正社員として雇っていく余裕はもはやない。若者のすべてが処遇格差肯正や高い賃金を求めているわけではない。むしろ、将来の収入見通しを求めている。5年、10年後も働いていられるか不安を感じることが、絶望感を与えている。欧州のように法的規制で働き続けることができるようにするにせよ、米国のように実力さえあれば働けることを市場が保障するにせよ、日本でも見通しがたてられるような方向を目指すべき。

  • チャレンジ支援というが、見合った努力をしても働ける保障はない。教育訓練を受けると、確実に働けるという保障がつく制度が必要。医者や看護士のように、出れば9割が職につけるといったことが求められている。

(増田)
  • フリーターの増大に対しては「若者自立挑戦プラン」をつくり、取り組んでいる。また、少子化対策では、育児休業、勤務時間短縮、労働時間短縮などメニューは出そろってきているが、実際にはさほど使われていないという問題がある。

  • 経済界では人口が減ると外国人労働者を入れればいいと考えている人も多いが、失業者やフリーターも多いので、まずは若者をどうするのか社会で真剣に考えていくべき。

(池本)
  • 労働時間の短縮を選択肢として保障することが非常に重要。また、育児休業を分割して取れるようにするなど柔軟にとれるようにすることも重要。

  • 保育サービスについては、量の確保のみならず、質の問題についても考えていく必要がある。保育所の量を充実させ子どもを預けることが親や地域にどう影響を与えるか、すなわち子供の教育が親を成長させることや、地域を作っていくことなどについても考えるべき。

(大石)
  • 支援策の分配的帰着を考えるべき。現状では、育児休業や育児休業給付金は雇用保険に入っている恵まれた立場にある女性に対して40%の所得保障を行う制度であるが、非正規就業や派遣社員などは使う機会がない。格差を考えるべき。

  • 保育サービスについても、保育所を利用しているのは低所得層と高所得層に二極化している。保育所という機関へ補助をすることは補助金を所得階層にかかわらず一律に出すことになる。また、母子世帯が増えているが、貧困の再生産防止といった観点からそれらの世帯への支援を考える必要がある。

(樋口)
  • どこの国でも、男女の役割分担を前提とした封建主義的な企業経営や政策が変わりつつあるなどといったトランジションの時代には少子化は起こりやすい。

  • 今までの問題は、労働市場の入り口で正社員と非正規社員などとスクリーニングをしてきたが、トライアル雇用の結果、正社員にするかどうか決めるなど、正社員にする機会を設け、入り口を広げることも重要。さもないと、階層化が進展し、活力が失われ、更に少子化が進むことになる。

  • 助成金についても、認可保育所や公的保育所には助成金を出すといった方法も問題であり、利用者が自由に選択できる制度にすべき。そのためには、機関にお金を出すのではなく、実額控除のような、何にお金を使うかは個人が選択する、国民のプライオリティを優先する制度にすべき。

(山田)
  • 若者たちにとって、10年、20年先、仕事や生活の心配をしなくてすむような施策が必要。

  • 政府の政策の基本的方向は間違っていないが、ガダルカナルでの日本の戦いのような戦力の逐次投入ではなく、米軍のように、重点を決め、あっと言わせるような政策をスピードと規模を大規模にして行わないと、若者はついていかないのではないか。例えば、子ども一人産めば100万円わたす、若者仕事公社を作りそこに行けば必ず仕事が紹介されるなどである。スピードと規模が重要。

(増田)
  • 子育てへの精神的な負担感は大きい。地方でも都市でも子育てへの孤立感がある。高齢者福祉は長い時間をかけて、介護保険の導入などで社会的に支援する形となったが、子育ては未だに家族や親だけの問題と捉えられている。子育ての社会化を図るべき。

  • 個人的な見解だが、三位一体が議論となっているが、地方自治体が子育てをもっとフォローアップするといいのではないか。例えば、健診に来ない人への対策、地域社会での子育てなど、自治体で若い夫婦を育てていくといいのではないか。

  • 質疑応答

(Q1)
  • 高齢者に偏っている給付を少子化対策にあてるという議論はよくきくが、高齢者の方が政治参加意識が強い一方、若年層は政治への関心が薄い。こうしたなか、家族政策に力を入れるよう変えていくことは出来るのか。

(樋口)
  • 投票率が年代によって大きく違うため、政治家の合理的な行動として、当選するために投票率の高い人たちを支援するメカニズムに働いているだろう。政治に若者が期待しておらず、政治への閉塞感があることが問題ある。若者への支援や少子化対策を重点的に主張する候補者を支援するかどうかは、結局は国民の選択である。

(Q2)
  • 長く同じ会社に働くことが忠誠心とみなされ、出世などで評価される文化的土壌が日本にはあるが、それが男性の育児を阻害しているのではないか。

(池本)
  • 長く同じ会社で働くことへの安心感は非常に重要。仕事を育児で辞めたあとの再就職支援は重要だが、築き上げてきた職場のネットワークなどを生かす働き方も保障すべき。育児休業後も長く働く、あるいは働くことを期待されるという選択肢を整えることは重要である。

(樋口)
  • 今までの日本企業では、社員と会社の間では生活を保障する代わりに拘束するという関係があった。その背景には長く働くことが業績につながっていたことがある。一方、最近は、時間というインプットに比例してアウトプットが出るわけではなくなっている。そこで、フレックスタイム制の導入など、柔軟な働き方を認めるよう企業も変わってきており、それらをサポートする政策が重要である。

(Q3)
  • 育児休業をあえてとらない働き方があってもいいのではないか。一方、育児休業をとるとつぶれてしまう中小企業もある。育児休業をとらない、あるいは取れない人への企業や自治体からの支援があってもいいのではないか。

(池本)
  • 育児休業をとりたくてもとれない人への支援は必要。経済的の余裕のない人へは賃金の保障率を高める、非正規雇用の人へも一定の保障をするという考え方は必要ではないか。育児休業をとりたくない人へは、その分保育サービスへの手当にするなど、公平性を保つことが重要。ゼロ歳児保育はお金がかかるが、保育所には補助金がでる一方、仕事を辞めた人へは全く補助がでない。今の状況は、保育サービスを使う働く女性に有利なシステムになっており、子育てに自分で関わりたい人への支援が今の少子化対策では欠けているのではないか。

(山田)
  • 育児休業取得者が少ない会社と多い会社との間の負担の公平性は重要。雇用保険などからペナルティーをとる、あるいはインセンティブを与えるなどで調整できる問題である。男性の育児休業や母子家庭の育児休業がとれないことは、稼ぎ手を失うという生活の問題と直結している。そこで、何らかの形で生活が成り立つよう保障が必要ではないか。

(以上)

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