第23回ESRI経済政策フォーラム
「市場化テストによる公共サービス効率化」(概要)

経済社会総合研究所

平成17年9月

本フォーラムの概要について、事務局の責任により以下の通りとりまとめましたので、ご参照ください。また、議論の詳細については、議事録別ウィンドウで開きます。(PDF形式 111 KB) をご参照いただければ幸いです。

  • (開催日時)
    平成17年7月28日(木)13:30~16:00
  • (パネリスト)
    大江 桂子
    大阪府企画調整部企画室副理事
    河 幹夫
    内閣府市場化テスト推進室長
    神野 直彦
    東京大学大学院経済学研究科教授
    八代 尚宏
    国際基督教大学客員教授(規制改革・民間開放推進会議委員)
  • (モデレーター)
    太田 清
    内閣府経済社会総合研究所総括政策研究官

冒頭、八代尚宏氏より基調講演をいただき、その後、パネルディスカッションを行った。最後に会場参加者の方々との質疑応答があった。

基調講演「市場化テストを通じた公共サービスの効率化」(八代尚宏氏) (資料参照(PDF形式 110 KB別ウィンドウで開きます。))

  • 市場化テストの別の名称は「官民競争入札」。米国、イギリス、欧州では90年代から導入され、かなりの成果をおさめている行政改革、財政改革の一つの手段であり、日本でこれを導入するという考え方は、2年前の総合規制改革会議で最初に触れられた。その背景には、経済社会環境の大きな変化がある。
  • 90年以降、長期経済停滞という形で日本の成長率が落ち込み、国の税収の減少と歳出の拡大の両面から財政赤字が大きく拡大し、財政再建が一つの至上命令。単に現行の制度を維持したままの増税や歳出削減では、一層デフレが厳しくなるというジレンマがある。そこで、今持っている国の資産をより有効に活用することにより、売却や政府が独占している事業と一緒に民間に移すことで、政府の財政は改善すると同時にデフレも防ぐ。官製市場の民間開放ということが、行財政の効率化だけではなく、今の日本経済の長期停滞を打破するためにも非常に大きな意味をもってくる。
  • 市場化テストとは、官が独占している公共サービス事業を民間事業者との競争にさらすことにより、官と民のいずれが、市民、国民のためにより良質のサービスを、より安価なコストで提供できるかを決めるということである。
  • 官民競争入札の結果、民あるいは官が勝っても、競争にさらされることによって、公共サービスの効率化、品質の向上に大きな成果が出るというのが、市場化テストの大きなポイント。民でも官でも最もすぐれた事業者に委ねるが、サービスに対する責任は政府が全うするということが大事で、あくまでも制度運営の最終的な責任は政府が維持する。
  • また、民であっても官であってもきちっとした第三者評価によって、サービスの質の担保が必要。明確な事業の評価基準を設定し、徹底した情報開示と市場競争の規律を維持し、モニタリングの仕組みを作っていくのが大きな課題。
  • 市場化テストの適用対象は、原則として、国の現業部門あるいは特殊法人、独立行政法人等すべてを含む。既にハローワーク(公共職業安定所)がモデル事業でスタートし、また、刑務所等の行刑施設においても、刑務官の補完業務という形で民間参入が認められ、さらに、社会保険庁の業務でも、保険の適用、保険料の徴収、相談事業などが幅広く市場化テストの対象という形で検討されている。
  • 市場化テストについては多くの閣議決定がなされ、法的枠組みを含めた制度の検討も行われており、本年6月の骨太の方針2005で、市場化テスト法(仮称)を平成17年度中にすみやかに国会に提出することが決まった。
  • 市場化テストは、国だけではなく、むしろ地方自治体の方がその余地は大きい。現に先進的な自治体では既に進めている。その際、さらに様々な民間に事業を開放しようとするときに、それを妨げている国の法令というものがあり、それを改正することも市場化テスト法の一つの大きな意味である。

[パネルディスカッション]
「1.市場化テストの目的・方法」

(河)(資料参照(PDF形式 271 KB別ウィンドウで開きます。))

  • この6月に「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2005」が閣議決定され、政府としては市場化テスト推進に一体として臨むということを意思表示した。その中で、公共サービス効率化法案(市場化テスト法案)を「平成17年度中に国会に提出するべく、速やかに準備する」ことも決定された。
  • 当室が行っている作業は、法案を国会に提出するべく速やかに準備するということであり、規制改革・民間開放推進会議の先生たちの知恵を結集し、法案にどういうことを盛り込むべきか審議をお願いしていく。
  • 今まで、多くの者に公共サービスは役所が担うべきであるという考え方が広がっていた傾向がある。担い手を多元的・多様的にすることで、社会が豊かになり、効率性も増すのではというのが、現在の課題。今後、公共サービスの実施主体を競争の場で決めることにより、コストの削減と質の維持向上を組み合わせていく方式を定着させていく必要がある。

(大江)(資料参照 ([1]PDF形式 16 KB別ウィンドウで開きます。・[2]PDF形式 40 KB別ウィンドウで開きます。))

  • 大阪府では、今年度から企画室の中にPPP(Public Private Partnership)改革の専管チームが発足、市場化テストも念頭に、民間の知恵、ノウハウを行政に活かしていく取組みを進めている。NPO(民間非営利組織)や住民との協働、指定管理者制度、民間人の大阪府への登用も含め、広く民間と協働で公共サービスを進め、厳しい財政状況や多様化する行政ニーズへの対応をしていく。
  • 市場化テストについては1年弱をかけて検討し、6月24日にガイドラインを作成。誤解の多い制度であり、職員を辞めさせるための制度ではないか、間接コスト把握のための作業などで改革のコストが大きいのではないか、マーケットメカニズムによる弱者の切捨てではないかなど相当の議論があった。そのような中で、外部の学識経験者の意見、国の方針、民間開放推進会議の意見なども勉強し、とりまとめた。
  • 誤解を解消するため5つの基本原則を示した。住民利益の最大化、地域協働の原則、地方分権の推進、行政責任の堅持、雇用の確保である。
  • 民営化と民間化という議論の中では、行政が行う必要がないもの、あるいは事業を廃止した方がよいものとの混同がされやすい。市場化テストというのは、行政責任の堅持、行政として行うべき仕事の範ちゅうであり、民営化や事業廃止ということではなく、あくまで行政サービスの民間化であるということを明らかにした。
  • 新しい府独自の類型として、提案アウトソーシング型というものを創設。いきなり官民の競争入札という形はとらず、官のコストを明らかにして、それを比較材料として民間事業者からサービスの改善や業務の改革についても提案を求め、コスト・サービスの両面からアウトソーシングの判断をする形態であり、ある意味では提案コンペの行政事務版である。
  • 今後、ガイドラインに基づき、大阪府ならではの工夫をしながら、市場化テストの導入について、庁内で議論をして、進めていきたい。

(神野)(資料参照 ([[1]PDF形式 329 KB別ウィンドウで開きます。・[2]PDF形式 221 KB別ウィンドウで開きます。))

  • 財政学は、国民経済というものは市場経済と財政という二つの経済が車の両輪となって動かなければうまく発展しないという考え方に立っているので、財政学の立場から市場化テストを考えていきたい。
  • 財政が今赤字だと言ったときに、現在の赤字はシュンペーター的財政赤字というふうに理解できる。時代の転換期にはいつも経済的な危機が生じてくるが、同時に、社会的な危機が生じてくる。
  • 国民にアンケートをとると、日本は安全・安心な社会ではなくなったという答が半数以上。私の理解では、経済的な危機がついに社会の危機にまで飛び火し始めたというふうに思う。
  • 財政学の立場から言うと、市場経済を構成する経済主体は三つ、企業、家計、政府であり、それぞれが全く違った原理で動く。政府の任務は、統治であり、社会的な危機や経済的な危機を解消することで、安んじて社会を統合させること、このことが政府という経済主体に与えられた使命である。
  • 財政収支の再建は、簡単にいえば、一律に経費をカットして増税すればよいだけの話であるが、そのことによって、その原因をなしている社会的な危機や経済的な危機が深刻化すれば何も意味がない。逆に、社会的な危機や経済的な危機を解消すれば、普通の財政制度をとっている限り、自動的に財政というものは再建される。
  • 歴史の転換点である現在、財政がしなければならないことは何か。社会的な安全のネットを張ること、次の産業構造(知識や情報産業)の前提条件を整備すること、恐らく人的な投資が決定的な意味を持つだろうと思われる。
  • 三つの経済主体の一つである政府は、公共サービスを無償で提供。必要に応じてサービスを提供し、社会を統合し、統治をしていかなければならないからであり、予算原理に基づいて、租税を強制的に調達し、公共サービスを社会に供給する。
  • このときに重要なのは、この市場化テストの目的は、小さな政府の効率性ということで、小さな政府ということは、政府の機能が小さいということを意味する。財政の規模が大きいか小さいかというのは別問題。機能を小さくすれば安くなるという論理は働かない、機能が小さくても財政負担が大きいと幾らでも働く。機能を分けて考える必要がある。
  • 効率性という場合、政府の効率性には二つある。一つは、外部効率性で、市場機構を使わずに予算原理を使って、必要に応じてサービスを配る。国民が必要としているものを適切に判断して、配らざるを得ないわけであるから、ニーズに応じて必要な公共サービスが供給されているかどうかという効率性である。そこでは、民主主義がうまく機能していれば的確に決定できるはずの問題であり、この外部効率性が適切に供給されていないと、秩序が乱れて、現在の日本のように、子供が非行に走り、犯罪が多発するということになる。
  • もう一つの効率性は、物件費と人件費を支払って物と人とをうまく組み合わせて、公共サービスをいかに安く、経費をうまく削減して提供するかということで、内部効率性ということになる。
  • 市場化テストの意味は、内部効率性にかかわることだというふうに理解してよいのだと思う。出来合いのサービスを物件費として購入した方がよいのか、あるいは人件費、物件費を払って行う方がよいのかということが市場化テストの意味になる。そのとき、市場化した場合の手段が結果に含まれるので、十分にどういうものをするのか、どういうものを提供すれば最終的な目的である統治ができるかということを考える必要がある。
  • もう一つは、部分よりも全体を考える必要がある。公共サービスというのは、ある部分だけをすればよいという話ではなく、さまざまな公共サービスが相互に相乗効果を発揮するような形で提供しなければならない。
  • したがって、社会を統合するという大目的の次に中目的があって、こういうサービスを提供しようというのがある。そのサービスを提供するのにはこういう手段があるという小目的がある。市場化テストでできるのは恐らく小目的ぐらいだろうというのが私の理解である。

(八代)

  • 神野先生からは、政府の役割という非常に大きな観点からの話があった。政府の機能の中の内部効率性というところが市場化テストの一つの意味ではないかということは、全くそのとおりである。ただ、政府が何をすべきか、どの公共サービスを提供するべきかというのは、政府の守備範囲の問題で、これは市場化テストとは別の問題と考えている。
  • 大阪府についてコメントをすると、官民競争型と提案アウトソーシング型の2種類あると言われたが、後者の場合では、官のコストを所与として民間事業者の参入を求めて、どちらがよいかを比較する。これも広い意味の官民競争型である。民の提示したコストを見て、これではわざわざ競争するまでもないと、官が不戦敗になるというケースも当然あり得る。その意味で、官のコストや現在のパフォーマンスも含めて、情報公開することで、民間が参入するかどうかを決めるのは、広い意味での市場化テストであるわけで、より幅広くとらえる必要がある。

「2.市場化テスト導入の効果・課題」

(河)

  • 外国の事例としてアメリカ、イギリス、豪州について掲載。市場化テストについては、地方レベルから連邦レベル、あるいは自治体レベルから政府レベルという形で議論が発展する形態が一つ。また、もう一つの議論の発展形は、効率化というコスト至上主義の視点から、公共サービスの効率化とそれにプラス質の維持向上まで視野に入れようというもの。それぞれの国で議論されてきた流れが、日本でも同様になると思われる。
  • イギリスでは、1980年代のサッチャー政権の時に民間と競争し、価格について強制競争入札を行った。それが、1997年からのブレア政権の時代には、公共サービスの質ということもあわせて考えるべきだということで、質の高い公共サービスが安価に提供されることが重要となった。
  • アメリカでは、2001年の大統領マネジメント・アジェンダでブッシュ大統領が発表したプログラムによると、成果主義、住民主義、市場原理という、幾つかの命題をあわせて実現していくということである。
  • 自治体の例では、アメリカのインディアナポリスが、官と民がほぼ五分五分で落札している。インディアナポリス国際空港の運営ではイギリスの空港運営会社が落札し、その結果、効率化が進み、コストが安くなる一方、サービスの量・質が向上した例である。また、官が落札した事例としては、一定期間の猶予を公務員側に与えた結果、業務の効率化とコスト削減が進み、最終的に公務員側、官が落札した例もある。他の事業とも合わせ、こうしたコスト削減によって生み出された財源を新たなインフラ投資や都市問題に投入した結果、市の財政健全化と都市の活性化に大いに寄与したとのことである。

(大江)

  • 大阪府では、ようやくガイドラインにたどりついた状態で、実施はまだ先の話。ただ、地方自治法の改正があり、府では平成18年度から指定管理者制度が導入される。府立の公園、青少年センター、女性センターなどのいわゆる自治法上の公の施設は、従来、大阪府の出資法人が管理をしていたが、今後は基本的に公募の方式をとるので、民間事業者も入るし、既存の出資法人も参画をするというケースが出てくる。
  • 出資法人の職員と話をすると、民間と競っても絶対に負けないという声を聞いた。自分自身の仕事に対するプライド、自信、誇りというものが、むしろ再認識されているという面があるかもしれない。
  • 住民からは、公務員だったら丁寧に仕事をする、人権を尊重する、低所得者を大事にするという期待がある。役所というところはまがりなりにも、結構、信頼がある。その点、人権とか個人情報などを民間事業者がどこまで担っていけるのか、それを担保するにはどうすればよいか、あるいは、サービス評価をどうするかといった悩みがある。
  • よく言われるのは、公務員から民間へということは、民間の事業者側に必要以上の低賃金労働、必要以上の不安定就労を増やす形でサービスを代替させることになるのではということ。そうなると市場化テストのイメージ、せっかくの成果が非常にマイナスの面を持ってしまうのではないかと思う。

(神野)

  • 最近、ニュー・パブリック・マネジメントとよく言われるが、これは公共部門が企業で行っている経営方式を学ぶということで、アングロ・アメリカン型とスカンジナビアン型の2つのタイプがあり、日本はアングロ・アメリカン型しか想定していない。
  • アングロ・アメリカン型とスカンジナビアン型とではどこが違うか。第一に、スカンジナビアン型では、政府という経済主体と企業という経済主体は全く違う、そのことを前提にして企業でやっていることで学べることを取り入れようという考え方である。第二は、それぞれで企業がやっていることが違うということである。
  • アングロ・アメリカン型とスカンジナビアン型との企業経営の基本的な違いは、アングロ・アメリカン型ではネオ・テイラー主義であり、職務分析をして、時間研究と動作研究でもってその職務を設定し、設定とおりにきちんとやっているかどうかを評価して仕事をさせるという方法である。それに対して、スカンジナビアン型ではそんな方法では働かなくなってしまうというノン・テイラー主義である。ノン・テイラー主義では、目標による管理が行われる。自分で目標を設定しているかどうか、これがモラール(志気)を高めていく重要な要因である。ネオ・テイラー主義かノン・テイラー主義に立って企業経営が行われているかどうか、企業に学ぶといっても違うわけである。
  • スウェーデンの場合には、ノン・テイラー主義に立って民間企業経営が行われているので、量と質を決めて、国民が共同で意思決定したことに対するオリエンテーションとガイドラインをしたうえで、下から決めさせていくというボトム・アップでやる。逆にアングロ・アメリカン型はトップ・ダウンである。
  • 市場化テストについて私が言いたかったことは二つ。一つは、主体は企業だけではなくて市民組織もあるし、そこには利用者協同組合もあれば生産者協同組合もある。それから、もう一つ重要なのは、請け負わせるときには極めて厳しい条件をつける。そして責任も明確にさせていく必要があるだろうという2点で、これがスウェーデンから学べることではないかと思う。

(八代)

  • スウェーデンの例は、今後日本の市場化テストを行う面でも参考になろうかと思う。ただ、スウェーデンと日本の基本的な違いというのは、ヨーロッパは職種別労働市場であって、同一労働、同一賃金というのが確立している。日本はそれに対して企業別労働市場で、年功賃金というのがむしろ主体である。年功賃金というのは、大企業、官庁と中小企業とでは大きな差があるわけで、その意味では、官業の民間開放の効果は、スウェーデンよりはるかに大きな意味を持っている。
  • 年功賃金が必要な部分というのはあるが、一方、民間と全く同じような仕事をしているのに、官業の方が著しく賃金が高いという現状がある。これが、納税者、利用者の立場からどこまで正当化されるのか、市場化テストにかけた場合、その年功賃金に値するほどの質の格差があれば維持されていいが、そうでなければ、改革が公の分野、官の分野で進まざるを得ない。そういう競争を促進するというインセンティブを高めるというのも大きな役割である。
  • 日本では、外郭団体、官製のNPO、あるいは特殊法人、公益法人、それから社会福祉法人、学校法人等、外国であれば純粋のNPOに相当するものが限りなく官に近い、あるいは官と同じような規制のもとでやっている。市場開放は、そういう官に限りなく近い事業者が独占している市場にも競争を促進するという意味があると思う。
  • 指定管理者制度での実際の運営の体験というのは非常に貴重なものであり、大阪府が管理している出資法人と民間との競争というのも、まさに市場化テストそのものである。民間には負けないという自負は、非常に大事であり、すべての官業が民間には負けないことを証明する義務がある。そうでなければ納税者の税金を使ってやる価値はない。
  • 市場化テストの結果、民間事業者の参入が増えると、公務員の専門性がどんどん失われて、民間の事業者を監督する公務員の人材が不足するのではないかという指摘があったが、仮に不足したら、監督業務を行う人材を民間から採用すればよいのではないか。欧米と同じように、まさに本当の意味の官民交流というのを進めたらよいのではないか。
  • 官に対する漠然とした信頼性については現にあるが、どう考えるかである。これは民間の企業でも、コーポレートブランドというのが今非常に重要であり、短期の利益を上げるよりも、市民、消費者に信頼されるということが非常に大きな企業価値を生んでいる。それを損なった企業は、非常なペナルティーを受ける。
  • 民営化すると不安定就労者が増えるのではということであるが、官の中でも不安定就労者は大勢いる。民間のパートタイムの活用は官でも現に行っており、こういう人たちはある意味で民間と同じような低賃金である。パートタイム雇用の低賃金の問題は、官が雇っても民が雇っても同じことであり、これは労働市場をむしろできるだけ同一労働、同一賃金にしていく方向で、労働政策として考えなければいけないことではないか。
  • 市場化テストを行おうとすると山のような問題が起こるわけだが、それは市場化テスト以前に存在している問題である。そういう問題をどんどん明らかにしていくというのも、市場化テストの隠れた効用であり、これまで全く存在していなかった官の分野での競争を促進することとなる。
  • これまでのように、公共サービスであれば一律に安い価格でサービスを提供するのではなくて、きちんとコストに見合う価格で提供し、貧しい人に対しては直接補償するような別個の対応をとるということをしなければ、今後の財政はやっていけないのではないか。そうであれば、ますます官と民とのサービスの差というのはなくなってくる。まさに新しい財政のあり方を再設計するということを市場化テストと同時にやらなければいけないのではないか。

「3.整備すべき法的枠組みのあり方、今後必要な取り組み」

(河)

  • 市場化テストの実施に向けた全体の輪郭については、まず国の事業について先行実施するが、ただ先進的な自治体が自発的に行なう場合の阻害要因、例えばこのような法律があるから難しいというような場合には、政府が手当てする責任を負うべきではないかというのが1番目。
  • 2番目は、なるべく可能な限り幅広い事業を対象として考えていくべきであるということ。
  • 3番目は、何よりもやはり法的枠組みを含めた政府における検討。これは、来年に向けて法律の具体的な案を策定して国会に提出することである。
  • その際、情報の開示、競争条件の均一化、あるいは監視機能の整備といった問題も準備していく必要がある。

(大江)

  • 大阪府では、ガイドラインを作ったので、それを具体化していかなければならない。まずはモデル的な事業を考えて実施する中で、市場化テストなる手法をいろいろな観点から検証していくことが、ぜひとも必要。
  • 現在、府では施策評価というものを実施しており、1,800の事業について毎年評価をし、コスト情報、人件費などを開示している。個人的には、この施策評価のシステムを発展させて、市場化テストなる視点によっての検討をしていくことも、考えている。現にこの施策評価の内容を見て、企業の方からも意見が寄せられている。もう一つは民間の企業の方とも話をして、本当に民間でできるのかというようなことも含めて議論をしていきたい。
  • 国の法律によって自治体の仕事が縛られており、公務員でなければいけないという吏員規制があったり、自治体でなければできないと法律で決められているものが相当数占めており、場合によっては、規制緩和というか、国の法制度を見直すよう要望する場面もあるかもしれない。ただ、安易に解除することは、住民から見れば無責任なことになりかねないので、その点は時間をかけて精査をしていきたい。
  • 自治体の側とすれば、できれば自治体の側の裁量を出していただく形での法改正、自治体みずからが考えていく際の方向性というものを総論として示していただけると、民間とともに担っていく公共サービスというものが本当の意味で具体化、実現していくと感じている。

(神野)

  • 制度の仕組みとして提案したいのは、国民に決定させることである。政策の失敗で被害を受けるのは国民であり、国民が結果責任を負うのだから、国民が決定する。第三者機関というのは限定して、国民に参加をさせてもらいたい。
  • 方法としては、二つのことをすべき。一つはレミス制度である。パブリックコメントとは別に、直接に関係者、団体等の声を聴く必要がある。もう一つは、決定はできるだけ国民の手に届く身近なところで、つまり分権化して小さな単位で決定をさせてほしい。
  • 民主主義を明確に機能させて、どこを市場化テストで入れるのかということに、国民が参加できるような仕組みをつくってほしいということであり、そのことによって公共部門が有効に機能しなければ、市場経済は安心とチャレンジができなくなる。今、私たちは新しい社会構造、産業構造を目指してチャレンジすべきときである
  • 雇用と社会福祉を重視したヨーロッパ社会経済モデルは、このままではもたないため、変えなければならないが、アメリカモデルをそのまま導入するのではなくて、ヨーロッパ社会経済モデルのよいところを生かしながら新しい状況に対応しようということで苦労している。日本の市場化テストも、広くヨーロッパ社会経済モデルなどを見渡した上で仕組みをつくってほしい。

(八代)

  • 我々もアメリカが唯一のモデルであるということは考えていない。ヨーロッパのよい点は当然取り入れるべきであると思う。ただ、神野先生の例はスェーデンのコミューンの話であって、日本のように自治体が大規模な国の補助金をもらって、いわばニーズが膨れ上がってしまっている状況とは違うのではないのか。やはりそういう意味で、地方分権が非常に大事だというのは、そのとおりだと思う。
  • 公共部門が有効に機能しなければ市場経済が成り立たないのは、全くそのとおりだと思う。今の日本の厳しい事前規制をもっと緩和して、逆に事後規制を強化しなければいけない。
  • 民にできるものは民にという言葉がよく言われるが、むしろ、民にできないものを官にすべきと言うべき。
  • また、すでに行政サービスのアウトソーシングをかなりやっているので、(市場化テストで)あと何をすればよいかわからないという話があったが、これは民間業者に聞いてみれば一番よいと思う。

「質疑応答」

(聴衆A)

  • 民の人はよいことができないと首になり、官の人は悪いことをしないと首にならないということを聞く。公務員は失業保険・雇用保険に入っていないという心配、不安があるのだと思うが、よいことができなかったら首になってしまうということを保障するためにも、当然、公務員に雇用保険というのを適用させていくことが必要。

(八代)

  • 当然、公務員も雇用保険に加入すべきである。それに反対しているのは、公務員だけではなくて、公務員を雇っている国や自治体であり、公務員は絶対失業しないから保険料が無駄だという議論である。失業のリスクがない人たちが、自分たちは要らないからと雇用保険に入らなければ、ますます雇用保険の財政が悪化するわけで、当然必要な経費として公私に関わらず労働者全体が入るべき。

(聴衆B)

  • 市場化テストで民間企業が参入してくるが、民間企業が信頼できるのかという問題がある。官であれば信頼できるのではないかというところが一番基礎にあると思う。本日のパネリストは全員が推進されている方のようだが、失敗例とかを教えていただきたい。

(八代)

  • 民間であろうが官であろうが、独占であれば、どちらも信頼できない。信頼しているのはむしろ市場での競争である。
  • イギリスにおいて、最初、コストだけを重視した市場化テストを行って失敗した。公共サービスが非常に悪くなったという反省から、その後、より質を重視したものに変わった。これは市場化テストの方法が失敗したのであって、決して本質的な問題ではない。
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