経済における女性の活躍に関する共同セミナー
- 内閣府経済社会総合研究所、独立行政法人労働政策研究・研修機構、独立行政法人経済産業研究所 -
概要

1.開催概要

日時:平成26年3月5日(水)

場所:JA共済ビルカンファレンスホール(東京都千代田区平河町2-7-9 JA共済ビル1F)

一般参加者数:170名程度

プログラム

報告:
周 燕飛  独立行政法人労働政策研究・研修機構副主任研究員
児玉 直美 独立行政法人経済産業研究所コンサルティングフェロー、一橋大学経済研究所准教授
麻田 千穂子 内閣府経済社会総合研究所総括政策研究官

パネルディスカッション

テーマ1「経営と女性」

発表:
樋口 美雄  独立行政法人経済産業研究所ファカルティフェロー、慶應義塾大学商学部教授
コメント:
武石 恵美子 法政大学キャリアデザイン学部教授

テーマ2「出産育児期の就業」

発表:
武石 恵美子 (前述)
コメント:
岩澤 美帆  厚生労働省国立社会保障・人口問題研究所人口動向研究部第一室長

テーマ3「男性を含めた働き方の見直し」

発表:
濱口 桂一郎 独立行政法人労働政策研究・研修機構統括研究員
コメント:
樋口 美雄  (前述)
総括コメント:
清家 篤   内閣府経済社会総合研究所名誉所長、慶應義塾長

2.議事概要

平成26年3月5日(木)、内閣府経済社会総合研究所(Economic and Social Research Institute。以下「ESRI」という。)、独立行政法人労働政策研究・研修機構(The Japan Institute for Labour Policy and Training。以下「JILPT」という。)、独立行政法人経済産業研究所(Research Institute of Economy, Trade and Industry。以下「RIETI」という。)の共同により、「経済における女性の活躍に関する共同セミナー」が開催された。本共同セミナーでは、多くの一般参加者の下、経済における女性の活躍推進に向け、関係研究所における最近の研究成果について報告がなされるとともに、外部有識者を交えてのパネルディスカッションが行われた。

前半では、関係研究所における最近の研究成果について報告が行われた。

JILPTの周 副主任研究員による報告「育児期女性の職業中断-JILPT子育て世帯全国調査2012の結果報告-」では、日本人女性の働き方について、育児期に職業が中断されることが一般的であり、その結果人的資本の浪費が著しく、仕事復帰後の賃金が大幅に低下するといった特徴があることが紹介された。また、日本では男は仕事、女は家庭という役割分業意識が依然として強いことと、男性に対し、終身雇用・年功賃金を提供する見返りとして長時間労働を強いる日本的雇用環境により、仕事と家庭の両立が困難になっていることが指摘された。その上で、女性が仕事と家庭を両立するための条件として、学校の教育段階から女性の専門性・職業技能を高めること、労働時間の融通がきく仕事を選ぶこと、職業中断とその影響を最小限にすることについて提言があった。

RIETIの児玉コンサルティングフェロー・一橋大学経済研究所准教授による報告「RIETIプロジェクト『ダイバーシティとワークライフバランスの効果研究プロジェクト』結果報告」では、既に就業者数が減少し始め、男性の片働きでは家計が維持できなくなっている日本の現実を見据えると、女性の活用を含む人材の多様化が社会的に要請されていることが指摘された。その上で、関連研究の結果を総合すると、女性の活用や人材の多様化は、一定の条件の下で企業のROA、研究開発能力等を高める可能性があることが紹介された。また、女性を活用している企業には、労働時間が短い、雇用の流動性が高い、賃金カーブが緩い等の特性が見られ、こうした企業は一般的にワークライフバランスにも積極的である傾向が強いことが紹介された。

ESRIの麻田総括政策研究官による報告「夫婦の出生力の低下要因に関する分析~『少子化と夫婦の生活環境に関する意識調査』の個票を用いて~」では、夫の育児参加、夫婦の情緒的サポート、伴侶性(夫婦間での共通行動が多い等の仲の良さ)が出生意欲を高めており、これらを可能とする男女双方のワークライフバランスの重要性を分析結果は示唆していることが紹介された。また、親世代との同居・近居や親世代からの経済的援助が出生意欲を高めており、このことは親世代との関係が期待できない夫婦に対する社会的支援の重要性を示唆していることが紹介された。その上で、ワークライフバランスや子育てへの社会的支援は女性活躍の前提でもあり、少子化克服と女性の活躍の同時達成のため、これらの実現が求められているとの指摘があった。

後半では、「経営と女性」、「出産育児期の就業」、「男性を含めた働き方の見直し」の3つのテーマについて、パネルディスカッションが行われた。

「経営と女性」のテーマでは、まず樋口RIETIファカルティフェロー・慶應義塾大学商学部教授より発表が行われた。発表では、RIETIでの研究結果に基づき、女性活用だけでは企業パフォーマンスの向上にはつながらず、働き方や人材活用の変革を伴ってはじめて効果が表れることが報告された。その上で、女性活用とワークライフバランスの推進のため、個別企業における現状や阻害要因の把握、数値目標を設定した取組、有価証券報告書における女性管理職割合等の開示などの「見える化」や女性活躍企業に対する優遇措置等が提言された。これに対する武石 法政大学キャリアデザイン学部教授のコメントでは、RIETIの研究結果について、ワークライフバランス施策が男性を含めた従業員全体に望ましい影響を与えていると解釈できるのではないか、日本的雇用慣行が女性の活躍と本当に非整合的なのかどうか丁寧な議論が必要ではないか、女性活躍の数値目標が数値ありきの議論にならないよう育成のプロセスが重要との指摘があった。

「出産育児期の就業」のテーマでは、まず武石教授より発表が行われた。発表では、出産育児期の就業の課題として、両立支援策の利用に規模間格差、就業形態間の格差が残っていること、両立支援策の利用増によりキャリア形成面でのマイナスの影響や仕事に対するモチベーションの低下が生じていることが指摘された。こうした問題が生じないよう、両立支援策に過度に依存しない働き方改革の推進や、制度利用者に責任ある仕事を任せ活躍を期待すること、個々人で異なるバランスを調整する制度利用者と上司のコミュニケーションの重要性が指摘された。これに対する岩澤 国立社会保障・人口問題研究所人口動向研究部第一室長のコメントでは、今後の人口減少下で現在と同程度の労働力を確保するには女性の就業率が相当上昇しなければならないこと、両立をマクロ的にみると、武石報告の対象となった出産後の就業継続に加え、仕事をもつ女性が出産に踏み切れるか、出産離職した女性が再就職できるか、家族同僚など周囲との調整の4段階で困難があり全体への目配りを要すること、武石報告で提起された多様なワークライフバランスの実効性確保に、外国の経験として制度(ヨーロッパ)型、交渉(アメリカ)型の仕組みや女性の活躍を支える女性(子育てを仕事とする女性等)の存在が着目されることが指摘された。

「男性を含めた働き方の見直し」のテーマでは、まず濱口JILPT統括研究員より発表が行われた。発表では、日本的な雇用システムにおいては正社員は雇用の安定とひきかえにワーク無限定がデフォルトルールになっており、この中でワークライフバランスがなかなか進まず、家庭責任を負う女性が働くのが難しくなっていること、現在の社会の文脈では、「女性の活躍」は伝統的な男性並みのスーパーウーマンといった含意があるが、ほどほどに働く「活躍」というモデル(限定正社員)も必要との指摘があった。また、労働基準法による労働時間規制が第一次的なワークライフバランス、育児休業や短時間勤務が第二次的なワークライフバランスと位置付けられ、前者が確保されたうえでの後者の柔軟性はワークライフバランスに資するが、前者の柔軟性はワークライフバランスにつながらないこと、前者と後者を区別せず柔軟にすればワークライフバランスが実現できるとの議論には問題があったとの指摘があった。また、これに対する樋口教授のコメントでは、濱口提案は総合職を減らして一般職を増やすのとどこが違うのか、働き方をコースで分割するのではなく、ライフステージに応じて変化する個人の必要とする時間や所得に応じ、働く場所や時間を柔軟に選択できるようにすることにより、ワークライフバランスを確保していくべきとの指摘があった。

パネルディスカッションの後は、共同セミナー全体について、清家ESRI名誉所長より総括コメントがなされた。コメントでは、出産・育児における女性の機会費用(仕事を辞めることによる生涯賃金の減少)が出生率低下の原因となっており、この機会費用を低下させるため、強力な子ども・子育て支援や、ライフステージに応じた柔軟な働き方などワークライフバランスの実現が求められているとの指摘があった。また、今後世帯単位で高い生活水準を維持していくには夫婦共働きモデルの実現が求められていること、一人当たりの生産性を高めていくためには、女性も男性も共に安定した雇用の中で能力を形成し、発揮できるような環境が必要であるとの指摘があった。

前半の報告及び後半のパネルディスカッションの後に行われた一般参加者からの質疑応答では、女性の活躍と労働時間や労働環境との関係をどのように考えていくべきか、学校教育等における女性人材の育成が重要ではないか、地域の実情や職場の実態に根差した施策が求められるのではないか等の質問があった。

以上

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